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永遠の時の中で  作者: スピオトフォズ
第一章 平穏な日々
3/110

第3話「商業区にて」

前回のあらすじ……。


前回のあらすじ……。


担当:リード・フェンネス

なんとなくアークに勝負を持ちかけたが、やはり彼は強い。

彼の剣術の腕前は天性のものであると同時に、昔父親に教わったものらしい。

とにかく、それだけ素晴らしい才能を持っておきながら未だふらふらしてるアークはどうかしてるよ……。

そんな事を考えていたら、エルとダイチ君がやってきた。

どうやら先ほどアークを追っている所を見られたらしい。

彼女は平和主義者だから、止めに来るのは分るんだけどさ……。

せめてもう少し、騎士団の任務を忠実にこなしてくれよ……。



――翌日――



 俺は“村の大工職人”の二つ名を持つロータスというおっちゃんからあるミッションを依頼されて、今は商業区に足を運んでいる。

 

 とある家の塀を直す作業の為、レンガを50個ほど買ってきて欲しいそうだ。

 このミッションの要点は只一つ。

 それは、「おつりが貰える」という事に他ならない!!

 働かない俺にとってその収入源は貴重だ。

 

 それなのに……。

 俺は横目でちらりと見る。


「なんでお前らまでついてくんだよっ!」

 俺が見ていたのはクソ真面目優等生リード、破壊的ドジ娘エル、元気爆発少年ダイチだ。


「君だけ利益を得ようなんて甘いんだよ。それに君ひとりじゃレンガ積む前にダウンしてたと思うけど?」

「う……」

 図星だった。

 確かに、50個というのは思いのほか大変だった。


 リードがいなければこのミッションは成功し得なかっただろう。

 お陰で収入は半分に減ったが。

 しかしこいつらは……。


「私だって2人じゃ大変だと思ってついて来たんだよ」

「オイラはエル姉ちゃんが行くならどこだっていくよっ!」

 元気よく主張する2人。


「つーかエルお前! 完全にレンガ積み終わった後に来てんじゃねぇか!! お前はホント何しにきたんだよ」

 そう、リードはちょうどレンガを積む前に辿り着いたのだが、こいつら2人は完全に出遅れていた。

 しかもダイチに至っては、今レンガを入れているリヤカーの上に乗っかって遊んでいる。


 頼む、死んでくれ。


「タイミングを間違えただけだもん!! 本当は手伝おうと思ったんだもん!!」

 ブンブンと杖を振り回す。


「分かった!! ごめん!! 分かったからやめてくれ!!」

 俺は不本意ながらリヤカーを引きつつ上半身のみで杖をかわすという凄技を披露。


「ったく……なんであんな大人しそうな親父さんからお前が生まれてきたんだよ……謎すぎるだろ」

「あはははは、私は母親似だったからね……」

 エルは暗そうな声で言った。


 ゲ、マズイ。

 エルの母親は幼い頃に失踪してしまったんだっけ!

 この話題はタブーだった!!


「…………アーク」

「…………アークにーちゃん」

 2人が睨んでる……。

 うんさすがにこれは俺が悪かったな。


「いや、エル悪いな。そんな気じゃあなかったんだけどさ」

「え!? いやいや別にいいよ~、今さら気にしてないし! あれから5年位たつけど、未だにどこに行ったのか分んないし」


 エルは全く気にしてないような素振りをしたが、うむぅ、気まずいぞ。

 確かエルも今言ったとおり失踪したのは5年前。


 その時のことは俺も覚えている。

 夫婦仲が特に悪かったわけじゃ無さそうだが、ファルトさんに聞いても“気にするな”の一点張りらしい。


 その様子だと、ファルトさんは何か知ってそうなんだがエルにすら教える気はないらしい。

 帝国騎士団に捜索願いを出そうとしても、ファルトさんが断ったらしいから、心配はないんだろうけど……エルにしてみればやっぱ気になるよな。




「そうだアーク。ちょっと模擬刀を見ていきたいんだけどいいかな?」

 リードは足を止めた。

 俺の目の前には『ギルド・ソーサリーファクトリー』と言う名の建物が建っている。


「ん? 別に良いけど」

 それより、ここで気まずい空気を変えなければ。


「うっわー、相変わらず、おっきな建物だよねー」

 エルがビルを見上げて呟く。

 その建物は、"コンクリート"という素材で出来た"ビル"というヤツだった。


「確かに、ここ数年で商業区も姿を変えたものだね」

 リードはそうつぶやく。


「3年前に遺跡が見つかったのよねー? 確か……ダコール遺跡だったかなー」

 エルは顎に手を当てて記憶をたどっていた。


「コダール遺跡だよエル……君あんなに真面目そうに座学受けてたのになんで覚えてないんだ……」

 片手で顔を覆うリード。


「確か古代遺跡(ベース)って、魔核大戦が起こる以前の軍事基地みたいなもんなんだっけ?」

 俺は学校で習った曖昧な事を優等生クンに聞く。


「そうだよ。まあ基地だけじゃないけど、今じゃそこが古代文明(ラスタード)の吸収目的で開拓されてるんだ。この帝都も、近所に古代遺跡(ベース)が見つかってから急激に変わったしね」

 リードは周囲を見渡す。


「この多層構造の建物だって、あっちの"コンクリート"だって、空を飛ぶ船"空駆船"だって、全部『古代文明(ラスタード)』の恩恵らしいよ」

 リードは辺りを見回しながら言った。


「なんつーか、古代のほうが進んでるってのもおかしな話だよな」

 最初に見たときは、なんだか未来の技術を取り入れているような錯覚を覚えたからだ。


「一度世界は滅んで、文明レベルが著しく低下してしまったんだよ」

 そう、世界は一回徹底的に滅んだらしい。

 

 二千年ぐらい前だったかな。

 世界をドーンと覆う戦争『魔核大戦』が起こったそうだ。

 それで文明が崩壊して多くの高度な技術が失われたらしい。

 んでその失われた技術ってのが、『古代文明ラスタード』とか呼ばれている。

 二千年も前の話なので、戦争の真相はホントのところはよく分かっていないらしいが、文献などで解明は進んでいるらしい。


「そうは言ってもよぉ、俺達の住む町外れにゃそれらしいモンひとつもねーけどな」

 現に、荷物の運搬方法はリヤカーというクソ不便なものを使わなくてはならない。

 建物だって、木造二階建て以上の建物はないし、コンクリートなんて訳の分からんもんじゃなく、石や木が主な建築材料だ。


「それは仕方ないよ。『古代文明(ラスタード)』は貴重だから、こうして町の中心部でしか使われてないんだ」

 俺の不満をなだめるようにして言った。


「にしても、なんつーチグハグな町だよホント。その『古代文明(ラスタード)』ってのが早く浸透すれば良いのにな」

 まるで現代と未来の技術を無理やりごっちゃ混ぜにしたような町だ。

 いや、本当は過去の技術だけども。


「それは多分、難しいね」

 リードは言った。


「なんでだよ」

古代文明(ラスタード)っていうのは、実は全然解明されていない。未知の技術なんだよ。学校で習っただろう?」

 俺は寝てたから知らん。

 クソ真面目優等生と一緒にするな!


「解明してないものを使えるって言うのもすごいよねー」

 エルがのんびりとした口調で言う。


「学者達の努力で、原理は分からなくても使い方は分かる。そんなものだろうさ」

「結構適当なのな」

 学者みたいに頭が良すぎると、案外単純な結論に達するもんなのか。

 

 まあそんな小難しい話はおいといて、俺達は階段を上り、3階の武器屋を目指す。

 ちなみに、俺のここでの目的は模擬刀ならぬ模擬ダガーが無いかチェックだ。


「むむむ……」

 しかし、ダガーなんて盗賊しか使わないような武器の訓練用の物なんてそう簡単にあるはずはない。


「はぁ、アーク、いい加減諦めなってー。鉄の棒でもリードに勝てるんだからいいじゃないのー」

 とエルは俺の肩に手を添える。

 この世界では二刀流ダガーを武器に戦うのは非常に珍しいらしく(いや、世界中を旅した訳ではないのでこの帝都だけという可能性もあるが)大抵護身用のナイフとかに間違えられるくらいだ。


「でもよぉ、鉄の棒ってすっげーやりづれぇんだよな~。できればちゃんとしたの欲しいんだけどな」

 それでも俺がダガーを使い続けているのは、これが親父直伝の戦闘スタイルだったからだ。

 それにこのダガーは、死ぬ前に親父から貰ったものだ。

 簡単には手放せない。


 ちなみに俺は、本当の父親のことを「親父」、リードの親父のことを「父さん」と一応使い分けていたりする。


 そんな俺を尻目に、リードはちゃっかり目的達成し、俺達は武器屋を出た。


「さて、それじゃあ帰るとするか」

 俺達は、踵を返して帰ろうとした。


「え? 私の用事がまだじゃないの」

 エルはキョトンとした様子で立ち尽くす。


「む~、エル姉ちゃんの用事忘れるなんてひどいや」

 ダイチはむくーっと頬を膨らます。


「いやいや、そもそもエル用事なんて無かっただろ!」

 無茶苦茶な冤罪だ。


「今出来たのよ。せっかく商業区まで来たのよ? 買い物しましょ! か・い・も・の!」

「「――ッ!!」」


 その瞬間、俺とリードは事の重大さを把握した。

 まずい――。

 エルが買い物……それはすなわち食料品。

 これはなんとしても阻止しなくてはならない!


「おっと済まないが用事を思い出してね! 後は2人で買い物を楽しんでくれたまえ!」

「僕はあのあれだ。騎士団の用事があるから、今日はこれで!」

 俺達2人はリヤカーを放棄して猛ダッシュで逃走を図る。

 そう!


 荷物持ちたる俺らがいなければ、最悪の自体は回避できるのさ!

 だが――


「ぐえ!」

「ぐえ!」


 ――希望は儚く散った。

 エルが左手でリード、右手で俺の後ろ首筋の服を引っ張り、逃走を阻止する。

 そしてグイっと引っ張って顔を近づけ、


「私達、『友達』だよね?」


 と恐ろしい笑顔で脅しつける。


「「は……はいぃ……」」


 結果、俺達は負けた。





 数時間後、リヤカーにはレンガの他に……。


 レタス、白菜、キャベツ、キュウリ、トマト、リンゴ、ミカン、バナナ、豚肉、鶏肉、魚、胡椒、生クリーム、フライパン、ナベ、窯、etc、etc、etc……………。


 一体何を作る気なんだよォォーー!

この辺でようやく世界観とかの説明が入りましたね。

アークの住んでいる『村』ではあまりというか殆ど古代文明の影はありませんが、ちょっと足を伸ばして商業区とかに行けば、ビルや街灯など文明的なものが見られます。


さて次回、エルは何を作る気なのでしょうか!


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