第29話「腕輪の真実、仇の正体」
前回のあらすじ……
担当:アーク・シュナイザー
今回はいつも通り俺、アーク・シュナイザーがあらすじを担当するぜ。
ルネの音痴に嫌になりつつ、何かのイベント発生を望んでいると、バッドエンド確定のイベントが発生して俺がヤバイ。
謎のイカレ金髪の攻撃に押されながらも抵抗していると、なんか上級魔法っぽいのを使われた。
ルネがやべぇ! と思って飛び込んだが今度は俺がやばいっつーの!
――――
「――裁きの雷ッ!!」
俺の頭上から極太の雷光が襲ってくる!
ああもう、こうなったらやるしかねぇ!!
俺はドラゴンウルフと戦ったとき、火球を“斬った”時の事を思い出す。
一か八か、雷光を斬るッ!!
「うおおおぉぉぉッ!!」
俺は眩しさに耐えながら雷光の直撃寸前にダガーを振る!!
次の瞬間、確かな手応えと同時に雷光が瞬く間に四散していった。
「うっそ……」
「な……んだ、と?」
ルネとイカレ金髪は、今の状況を正確に認識できていなかった。
だが、するべき事はわかった!
「ルネっ! 行って来い!!」
「あ……オッケー分かった!」
ルネは仲間を呼ぶ為一瞬で飛んで行った。
イカレ金髪は唖然としてる!
そして、あの時のように、刀身が今度は金色に光っていた。
雷の魔素が刀身に帯びている……状態だと思う。
とりあえずやるしかねぇ!
「うおおおおクロスエッジッ!!」
「ぐああぁぁぁぁぁッ!!」
やった! 決まった!
ダガーがあたった瞬間、俺も目を瞑ってしまうような激しい電撃が巻き散った。
あっぶねぇぇ巻き込まれそうになったぞ……なんて威力だ……。
「クッ……ふざけやがって……、ッ! うるせぇッ! オマエはッ……」
イカレ金髪はふらふらとそこら辺にある木に背中を預け、片手で頭を抱えていた。
「おい……何言ってんだ?」
俺は真っ先に思い浮かぶ疑問を口にする。
電撃で頭がおかしくなったのだろうか。
まあどの道この様子じゃあもう戦えないだろうな。
あっ、倒れた。
……ここでトドメを刺す事も可能なのかもしれないが、俺は人殺しにはなりたくない。
それより、マジでこのダガーなんなんだ……。
親父を小一時間問い詰めたいが、その親父はもうこの世にはいない。
いやっ、それよりこの腕輪だよ。
イカレ金髪はこの腕輪を欲しがっている。
その理由を聞かねば。
「おい、お前、この腕輪が何だか知ってんだよな?」
俺は右腕に付けていた腕輪をかざして言った。
腕輪は、うっすらと青白く光っているような気がした。
男は顔を上げないまま言う。
「……馬鹿な野郎だ。やはり知らずにいたって訳か……」
焦らすなよ!
その後、顔を上げて話す。
「悪ィ事は言わねぇ。そのダガーも腕輪も、ここで捨てていった方がいいぜ。後々身を滅ぼすかもしれねぇ」
金髪イカレ男は少し落ち着いた声で俯いたまま話す。
「お前……このダガーと腕輪についてなんか知ってるのか!?」
俺は食いついた。
この二つは謎が多すぎる。
「ダガーはしらねぇ。だが“普通の物”じゃねぇよ」
“普通の物”ねぇ……。
これは親父のなんだが……親父はそれを知ってたのか?
「まぁいいさ……腕輪ぐれぇは教えてやるよ――魔核大戦……2千年以上前に世界全土を覆った最悪の戦争だ。その戦争を終結に導いたのが……最終兵器『リーヴァスレイズ』」
リーヴァスレイズ……?
はじめて聞いたな。
っていうかいきなりコイツは何を言ってるんだ?
「なぜ戦争は終わったのか。それは、『リーヴァスレイズ』によって世界は灰と塵の世界に変ったからだ。世界に残った7人の有権者、『賢者』。奴らは最も恐ろしい兵器『リーヴァスレイズ』を7つに分解し、7人の家系でそれぞれのパーツを守った」
なんか……すげぇ話だな……。
「7つの破片の呼称。それが『ブラストレイズ』。そしてその内1つが、今オマエが今腕につけてる奴だ」
な、なんだってぇぇーー!?
マジでか!?
「待て待て待て!! これは元俺の家で見つけたんだ! そんな重要なモンがその辺に転がってるわけ――」
いや……待てよ?
俺の親父が、これを持っていたとしたら?
(アーク……“ブラストレイズ”を、頼む……)
――あの時、親父が託したものが、この腕輪だったとしたら!?
「俺の親父が……賢者……!?」
…………ありえない。
現実味が無さ過ぎる。
俺の親父は、サバイバル好きで、スパルタで、剣技が上手くて、ちょっと意地悪で、でも優しくて、誰よりも俺のことを考えてくれた、普通の、普通の親父なのに!
「ふん……なんだ、やっぱ知らなかったってのかぁ?」
だが、金髪は「何当然のことに驚いてるんだ」といった声で言う。
嘘だろ。
信じられるわけがない。
でも、もしそうだとするなら。
……8年前の事件……殺されたのは、賢者だったから?
この腕輪を守る為に、親父は死んだ……?
いや、待て。
背筋が燃えるように熱い。
金髪の顔を見て、俺は信じられないことに気付く。
「あの時親父を殺したのは……まさか……」
俺は八年前の記憶を探る。
覚えている。
親父が死ぬ前の夜。
家を訪ねてきた金髪の男。
八年も前だが、しっかり覚えている。
「まさか……お前が……」
心臓が、早鐘のようになる。
全身の血液が、全神経が沸騰直前まで上がってゆく。
頭が揺らぎ、めまいが襲った。
「はっ、ようやく気付きやがったかぁ! 8年前、お前の親父、ライン・シュナイザーを殺したのはこのオレ様、ザイル・サファールだァァ!!」
その声を聞いたとき、ついに血管が沸騰した。
全神経が爆発した。
「お前……お前がぁぁぁぁッ!!」
俺は湧き上がる怒りを押さえることができず、ダガーで金髪の顔面に斬りかかる。
だが、そのダガーは目前で簡単に防がれた。
例のバリアみたいな壁だ!
「バァカ!」
金髪は再び立ち上がった。
その目は、先ほどと同じく紅蓮のように赤かった。
「チッ……“あの野郎”……まぁいい。オマエをここで殺せば済む事だ!」
金髪はそう言った。
だが、俺はもう既に、ヤツに対して恐怖など微塵も感じていなかった。
この男を殺す。
……それだけを、考えていた。
「お前だけは……お前だけは絶対に許さないッ!!」
――それ故に、俺はこの男……ザイルが漏らした不可解な言動に気付かなかった。