第27話「イベントのオーダーミス」
前回のあらすじ……。
担当:ジャミル・ハワード
はいはい今回も俺、ジャミル・ハワードがあらすじを担当するぜィ。
廃屋の地下室を発見し、向かった俺ら。
そこで見た物は、ジジイの死体だった。
エルによれば、コイツを殺ったのは魔物じゃなく人間らしい。
それも相当の腕を持つヤローってワケだ。
なンか面白くなって来やがったぜェ!
――――
「せーんろはつづくーよーどーこまでもー」
俺とルネは現在町、村、または人を探して森の中を彷徨っていた。
「あーるーこーあーるーこー、わたしはーげんきー」
この島は中心部へ行くほど高地になっているのか、軽い斜面を登っていく。
探索から一時間ちょい。
まだ人気は確認できていない。
「せんのかーぜーにー、せんのかーぜになーーってーー」
「統一しろよっ!!!」
……今まで黙ってたがこれはスルー出来ない!
「なんで途中から歌詞バラバラなんだよ! 全部ミックスすんな! しかも最後の関係ないし!」
と俺は大声で歌う、ルネに向かって言う。
「だって途中までしか分かんないんだもーん!」
歌えて楽しいのか、満足げな表情で答える。
「だったら歌うな!」
速攻切り返す。
「なんでよ~! 別にアークには迷惑かけてないじゃん」
今度は不満げに返す。
「かかってんだよ! お前の歌聞いてると耳が腐る」
「なんですと~!」
そう……。
今発覚したがこいつ究極の音痴だった……。
こいつの歌には、もう音程という概念は存在しない。
大声で叫んでるだけだ。
「音痴過ぎるんだよっ!! お前、喉おかしいんじゃねぇのか!?」
「うわ~、ひっど! 最低!」
「最低なのはお前の歌だ!」
「あーるーこー、あーるーこー」
「言ってるそばから歌うな!」
「え~、ヤダ。つまんないじゃん」
「元々探索してるだけだろ!」
「それを面白くするのがあたしの仕事よ!」
「芸人か! それに面白いのお前だけじゃん!」
「文句ある?」
「あるよっ!」
「却下」
「なんでっ!」
「うるさいから」
「それはお前だろうがぁぁぁーーー!!」
「アッハッハッハッハ! なにそれ面白い!!」
「……はぁ~……なんか、倍疲れるんだが……」
俺とルネはこんな阿保なやりとりを繰り返して森を探索していた。
見える景色は木、木、木、木木木……木しかねぇぇよぉぉーーー!!!
うんそうだ。
はっきり言ってつまらん。
うむぅ。
何かビックイベントでも発生しないものか。
と思っていると、前方から草むらをかき分けて“何か”がやってきた。
お? さっそくイベントか?
俺達は魔物かと思い、咄嗟に無言で身構えた。
……今はまだ、草や木の陰になって分からない。
近づいてくるにつれ、それは1人の人間だと分かった。
でも、山賊とかの危険もあるので構えはとかない。
「……クク……奇遇だな」
男の声がした。
「……へぇ~。オマエこんなトコにいたのか」
この声には聞き覚えがあった。
その声と記憶が一致し、寒気がした。
こいつはもしや……。
「はっ……ご丁寧に“例の腕輪”までちゃんと装備してらァ」
いや、もしかしなくてもあいつだな……。
姿が完全に現れた。
真っ金金の短髪で、真っ赤な瞳に迷彩色のコート。
両手には3本のクロー、そして腕には大量の腕輪。
「でもザァンネン、ここで会ったが運のツキ。その地味な腕輪、渡して貰おうか」
この前、元俺の家で会った、俺を殺そうとしてきた奴じゃねぇか!!
「え……? アーク、誰? 知り合い?」
ルネもクナイを取り出して構えながら俺に尋ねる。
「知るか。前俺を殺そうとしたただの通り魔だよ。ホントついてねぇ……」
あんときはハリスがたまたまいて助かったけど、今は俺とルネしかいねぇ!!
もうさぁ、オーラからして俺の敵う相手じゃないって分かるよね?
俺はビックイベントを希望したが、バットイベントを望んだ覚えはない。
くそ、注文が違うぞ!
……じゃなくてマジメにやばい。
「という訳で逃げるぞルネうおおおおおぉぉぉ!!」
俺は踵を帰して一目散にダッシュ!
「ちょ、アーク!?」
正直、こんなアブナイ奴と関わってられるか!!
バットイベントどころかバットエンド確定だコノヤロー!!