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永遠の時の中で  作者: スピオトフォズ
第三章 無人島サバイバル
26/110

第26話「謎の殺害現場と、強敵の影」

前回のあらすじ……。


担当:ジャミル・ハワード

今回は俺、ジャミル・ハワードがあらすじを担当するぜェ。

まず、俺らは意外とウマかったグロ魚を食い尽くし、ダリィ片付けを終わらせる。

翌日、アークから周囲を探検しようという案が出た。

面白ェ。

しかし、ルネがいつの間に作ったかくじ引きの結果で、エルとリードと俺というメンバーになりやがった。

アイツと一緒かよっ!

絶対杖でボコられるっつーの!

……まあそりゃァいいとして、

道中エルが建物を発見しやがったァ。

なンてバケモノ見たいな視力の持ち主だよオイ……。

近づいてみると、……まァ、建物だった。

中に入り、なンもないと思ったらエルの野郎が隠し通路を発見。

なンだなンだァ?

大活躍じゃねェかコイツ!

で、俺達は隠し通路へと進むのだったが……。



――謎の建物:リード視点――



 僕達は階段を下り、地下室に入る。

 そこにあった部屋は――赤く染まっていた。


「――なッ!」

 いたるところに赤い液体が飛び散っていた。

 血だ。

 それは狭い部屋の中に充満している鉄臭い独特の臭いが証明していた。


「な……なに……これ……?」

「ひっでェな……」

 エルとジャミルは目を見開いてその場に立ち尽くしている。

 地下室は広くはない。


 無機質な壁と、オフィスギルドで使いそうなデスク、その上に散らばる本。

 天井には小さなランプがいくつか灯されていて、テーブルの上には食べかけの食事が残されていて、一部はそのまま床に散乱している。


 つい先刻まで「日常」が存在していたようだった。

 それじゃあ、この血の主は……。


「ん……、オイ! 誰かいンぞ! あそこだ!」

 ジャミルは部屋の奥の方に誰かが横たわってるのを発見し、駆け寄る。

 僕もその後を追う。


「ッ……この傷ァ……」

 そこにいたのは、初老の男。

 だが、仰向けに壁にもたれ掛り、全身をズタズタに斬り裂かれていた。


「どいて! ……だめだ、もう、死んでるよ」

 僕は首に手を当てて血管が動いているか確かめたが、もう駄目のようだった。

 いや、出血の量からして助からない。


 だがそれでも、微かな希望にかけて確かめたかった。

 ……無駄だったけどね。


「チクショウ、こりゃひでェ殺し方だぜ……」

 ジャミルも悔しそうに言う。


「血痕が生乾きだ……まだ殺されてから、半日も経ってないだろう……」

 騎士団は、街の治安を護る。

 その際こう言った知識も必要になってくる。

 なので、見習いとはいえそういう予備知識も僕達は備えている。


「魔物にやられたのか……? 『領域』も無い、こンなとこに住んでっからだ……。そういや、入り口が破壊されてたっけなァ。それもコイツを殺ったのと同じヤツって訳か……」

 見た感じ、ここには生活出来そうな物が一式揃っていて、広さもある。

 ここで暮らしていたというのはほぼ間違いないだろう。

 何故こんな辺境の島で暮らしていたのかは謎だけど。


「違うよ。……彼から……高濃度の魔素を感じる……」

 エルは目を閉じて”彼”に手をかざしている。

 エルは昔から魔素を感じやすいめずらしい体質で、こうして手をかざすことでより感じ取れるのだそうだ。


「あァ? それと殺ったのが魔物じゃないってのと何が関係あンだァ?」

 そうか、ジャミルは騎士団関係者じゃないし、知らないのも無理は無いな。


「魔法で攻撃すると、被攻撃対象……つまり”彼”にも、微量の付加属性に応じた魔素が残る」

 仕方ないので僕が説明しよう。


「へェ。そうなのか……」

 この辺のことは、学校でも習わないから知らないのも無理は無い。

 もっとも、彼は学校へは通わなかったようだけど。


「魔素っていうのは、エネルギーのちっちゃい粒の事ねー。それ自体に属性は無いけど、元素を合体させる事で属性が生まれるんだよー」

 エルも解説に参加する。

 頭の悪い彼には、エルみたいな砕いた表現の方が分りやすいかもしれない。


「理解は出来るけどよォ、なンかめんどくせェ話だなァ……」

 まずい、集中力を切らしそうだ。


「話を戻すけど、強力な魔法ほど、より高濃度の魔素が残りやすいんだ」

 強力な魔法……。


 僕は疾風の翼船で出会った敵『盗賊殺し』のエイリアス・ラクシリアの放った氷の魔法『ブリザードレイン』を思い出す。

 あの複雑な詠唱と魔方陣はかなり上級の魔法だと思う。


「なるほどォ、つまりコイツは、強力な魔法で殺られたってワケだァ」

「その通り。次に、魔法は古代文明(ラスタード)によって作られた兵器の一種である事は知っているね?」

 それは一般常識なので、ジャミルでも知ってるだろう。


「あァ。分類上は確か……魔法詠唱兵器(ファストレイズ)ってンだろ?」

「そう。術式を詠唱呪文の元に組み上げ、魔方陣を構成し、体内の魔素と生み出した元素を組み合わせて自然法則を無視した現象を引き起こす兵器だね。そう考えると、魔物が放ってくる炎や氷は、魔法には該当しないんだ」


「そォなのか……ってことは!」

 ジャミルでもここまで言えば分かったらしい。


「コイツに魔素が残ってるってことは……殺ったのは、人間ってことかァ!」

「しかも……相当な使い手だよ。属性は雷、使ったのは中級魔法だけど、的確に急所以外を狙ったあとで殺されてる」

 エルは死体を調べ終わりそう言った。


「すげェ。見ただけでそんなに分かンのかよ……」

 ジャミルは素直に感心していた。


「私だって帝国騎士団の1員なんだからね! ……見習いだけど」

 と前半は威張っておきながら後半で沈むエル。


「とにかく、重要な事は、まだその犯人がこの近くに潜んでる可能性があるって事だ!」

 これは……もしかしたらまた厄介な事に足をつっこんだのかも知れない、と僕は思っていた。


「ケッ! ンな奴、このジジイの代わりにに俺がぶっ殺してやるぜ!」

 ジャミルはやる気……いや、殺る気満々で二挺のダブルバレットを構える。


「無理だよジャミル。犯人……この前のエイリアスと同等……うんん、それ以上かもしれない」

 エルは考えながら言う。


「ッ! あの野郎以上かよォ。そりゃァまた楽しめそうじゃねェか!」

 そう言って彼は獰猛な肉食獣のような笑みを浮かべた。


「……なんで戦う気満々なんだよ君は……」

 はぁ、と思わずため息を吐く。

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