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永遠の時の中で  作者: スピオトフォズ
第三章 無人島サバイバル
23/110

第23話「緊急の時ほど冷静に」

前回のあらすじ……。


担当:エルアス・ミルード。

私達は山へ芝刈りに……じゃない、食料を探しに行ったんだけど、そこで見つけた魔物は魔獣級のドラゴンウルフという魔物だったの!

アークが言うとおりバーベキューにぴったりの魔物なんだけど、なんだか様子がおかしいみたい。

私はとりあえずホーリーブラストで撹乱しつつ援護するんだけど、アークが急所を狙っても全然効いてない!

しかも……眼の色が黄金色どころか真っ赤だし……。

その上火球を飛ばして木々が燃え始めてる!

これって……もしかして大変な事になるかも!?

アーク、気をつけて!!



――――



「クロスエッジッ!!」

 ジャンプからの飛びかかり爪攻撃を華麗にかわした後、エルのホーリーブラストが直撃し、同時に俺のクロスエッジが決まりようやくドラゴンウルフは倒れた。


 戦闘開始からかなり時間が立ち、あたりの木々は火球によって轟々と燃え上っていた。

 既に日は落ちかけていたが、燃え盛る炎のお陰であたりは明るい。


 って、んな悠長に解説してる場合じゃねぇ!

 あっちぃ焼ける!!


「エル!? 大丈夫か!? くっそ、煙が……!!」

 俺達は林の中で軽く炎に巻かれていた。

 まあ油断したら、熱と煙で下手すると死ぬぜこりゃ。

 俺は煙と炎をよけながらエルを探す。


 くっそぉ……肺が痛ぇ……。

 思いながら岩影を除くと、ちょうどエルを発見した。


「エル! 大丈――てエルッ!?」

 ドサッ、という音がしてエルが突然倒れた!


「おい! 大丈夫かよ!」

 俺はそばに駆け寄って、抱きかかえながら声をかけた。


「大丈夫……かな? ハハ、ちょっと魔法使いすぎちゃったみたい……ごめん」

 弱々しすぎる笑顔で俺に言った。


「ったく……だから使いすぎるなって言ったのによ」

 こいつはホンット自分のこと考えないもんなぁ……。


「……ごめん、迷惑、だよね」

 何を勘違いしたのか、こんなこと言ってくるし。


「馬鹿野郎、心配掛けんなって言ってんだ。とりあえずここは火がヤバイ。逃げねぇと! 立てるか?」

「うん…………大丈夫だよ」

 だからそんな弱々しい笑顔で答えるなっつーの。

 無理してんのバレバレだろーが。

 ……だがそろそろマジで炎が迫ってるのでどのみち行くしかねぇ!


「悪いがちょっと無理してもらうぜ! このままじゃ焼け死ぬ!!」

 俺はエルの手を引いて走り出した。

 燃えて倒れる木を飛び越し、飛び散る火の粉を振り払い、時には炎に突入しながら俺はテレスを取り出す。

 長四角の小さい箱を取り出し真ん中のダイヤルをひねり、番号を合わせる。


「おい! リー――」

『――アークッ!!』

「うわっ、びっくりした」

 俺は思わず耳元からテレスを離す。

 声でかすぎ!


『君は何をしているんだい!?』

「お、やっぱ火事になってんの見える?」

 チッ、こっちは火の勢いが強すぎて通れねー!

 あそこを潜っていくしかねぇか……。


『当たり前だ! まさか君は放火――』

「するかっつーの!! とにかく――うおっ」

 岩下を通ろうとしたら突然木が倒れてきて危うくぶつかるところだった。


『大丈夫か!?』

「俺は大丈夫……ってエル! おい!!」

 エルが倒れた!

 ……ってオイ、気絶してるよ!

 顔色も悪いしちょっとヤバすぎる。


『エルがどうしたんだ!?』

 リードの声が焦る。


「エルが気絶した! 魔法の使い過ぎで落ちた体力に、この煙と炎じゃあな……」

 くそ、仕方ねぇおぶっていくか!


『とにかく僕達もすぐにそっちへ行く! 君はエルを頼む!』

「分かった! 頼むぜ!」

 そう言って、俺はエルをおぶって炎の中を駆けた。

 炎の中……を?


「って、もう抜けてんじゃん」

 俺の周囲に炎は既に無かった。

 走るのに夢中で気付かなかったぜ。

 後ろを振り返ると、炎は案外大したことないように見えた。


「なんだよ……マジビビったんですけど……」

 冷静になってあたりを見渡す。

 ここら辺はちょうどごつごつした岩場になっていて、燃え広がる心配はなさそうだった。


「てことは……俺が焦ってただけかよ!」

 さっきまでの妙なテンションが急に恥ずかしくなった。

 つーかむしろリード達が来る前に鎮火しそうな勢いですけど?


「うぅ……」

 そんな時、エルが意識を復活させた。

 もうおぶる必要はないので、そこら辺の平たい岩に座らせた。


「よう。気分はどうだ?」

「うー、まだましかも。っていうか火事は!?」

 エルはまだ若干辛そうにしながらも現状を尋ねる。


「なんか思ったよりひどくねーみてーだ。鎮火しそうな勢いだし」

 リードに心配ご無用の連絡を入れねば。


「あ、ホントだ。でも煙すごかったねー。あっ! 運んでくれてありがとう

やっぱ……迷惑かけちゃったね」

 うつむいてあからさまにしょんぼりしながら呟くエル。


「そんな気にしなくてもいいって……だいたいエルが魔法使ったのは俺が喰らったからだし、お互い様だって。まあお前にはもうちょっと自分の限界を考えて欲しいけどな」

 エルはいつもいつも自分を顧みな過ぎるからな。


「とりあえず、もっと自分大事にしろって事」

「あはは、そうだねー」

 ふむ、まだ弱々しいがある程度の元気は回復してきてるようだ。


「あっ、やべ、リードに連絡しねぇと」

 俺は再び懐からテレスを取り出してIDを合わせて通話する。


「あー……リード?」

『アーク!! エルは無事かい!?』

 声でけぇよ。


「おおぉ、無事無事。つーか火事収まってきたわ」

『そうか……燃え広がる心配は?』

 まだリードの声は真剣だ。


「たまたま周りが岩場だったから無さそう。超焦って連絡したのになんかスマン」

 俺は火事の方を見る。

 火は殆ど無かったがやはり焼け焦げた木々の匂いがひでぇ。


『いや実際、大規模な森林火災に発展してもおかしくないから、その位の心構えの方がちょうどいいと思うよ君は。まあ事態を正確に判断する能力には乏しいようだけどね』

「おいてめぇ馬鹿にしてんだろ。サラっと馬鹿にしたろ今!!」

 俺はテレスに噛みつく勢いで反論!


『知らないね。それより原因は?』

 話題変えんな!

 と言いつつ乗ってしまう自分が憎い。


「あー……ドラゴンウルフの火球だよ」

 立ってるのが疲れたのでとりあえず岩肌に座る。

 ケツが痛ぇ。


『ドラゴンウルフって……荒野に生息してるアレだろ? こんな所にいるはず……』

「それがいたんだって。ありゃ見間違いじゃねぇよ。倒したし」

 俺は再び火事の方を見る。

 倒したまま放置してきたがまさか逃げたりしてねぇよな?


『倒したってことは、一応食料は確保したのかい?』

「多分な。もしかしたら火事で焼けてるかもしれんが。っていうかお前はどうだったんだ? 食料」

 俺は海へ魚釣りに行ったリード達の成果を聞く。


『まあ……一応大漁かな。……深海魚が』

 声が異様に暗かったのでよく聞こえない。


「進化……何? まあいいや。詳しい事は後で話すか。取り合えすこっち来てくれ~」

 と言い、俺は通話状態を解除してテレスをしまった。


「エル、調子はどうだ?」

 俺は岩肌で休んでるエルに声をかける。


「うん、だいぶ良くなったよ! ……あれ? アーク、そんな腕輪付けてたっけ?」

 エルが俺の右腕の腕輪に気付いた。

 ずいぶん唐突だな。


「ああ、これ、元俺ん家で拾ったんだ。なんとなく付けてる」

 ちなみに、俺の家で起こった出来事はみんなには話してない。

 なんだか余計な事に巻き込んでしまいそうだったからだ。


「…………」

 エルはなぜか黙って腕輪に手をかざしている。


「エル……?」

「腕輪から、少しだけど魔力を感じる……これって……レイズ? じゃ、ないよね?」

 レイズとは、古代兵器の事。

 前にも言ったようにエルの杖やリードの籠手を指すのだが、これは……違うだろう。

 そんなものが廃屋に転がってる訳が無い。


「いや、違うとおも――いや、待てよ?」

 確か……そうだ、この腕輪をつけてからだ。

 体が妙に軽く感じたり、動きが良くなったり、体力が増えたり……そうだよ! なんで気付かなかったんだ!?

 でも、そんなにいくつもの効果を得られるレイズなんて実際あるのか?


「アーク?」

 急に黙ったのでエルが聞き返してくる。


「いや、なんでもない。これは廃屋に落ちてたんだ。それに、そんな簡単にレイズが手に入る訳ないだろ?」

「そう……だね。気にする事ないか」

 そうだな。

 きっと、俺の気のせいだろ……。



 でも――。


 さっきの、突然弾けて消えた火球は……あれはなんだったんだ?

 俺は思わずダガーを見る。

 常識的に考えて火の球をダガーで切ってもスカすだけだ。


 だが、火の球は見事に真っ二つになった。

 このダガーで斬ったから……だよな。


 これは、俺にとっては親父の形見でもある。

 くそ、違和感と言い腕輪と言いダガーと言いさっきの魔物と言い、意味分らんものが多すぎるぜ。


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