表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
永遠の時の中で  作者: スピオトフォズ
第三章 無人島サバイバル
21/110

第21話「さあ、食料調達だ~!」



前回のあらすじ……。


担当:ジャミル・ハワード。

謎のオッサンの所為で俺達ァ無人島に取り残されちまったァ。

最初から怪しげで薄情な雰囲気はしたが……そのまンまかよッ!?

クソッ……ボートに一人で乗った時からなンか怪しいと思ってたんだが……迂闊だったぜェ。

ンでそれはともかく、流れ的になンかアークが仕切る事になったよォだがァ。

ヤツァ無人島漂流の経験があるみてェでこりゃァちょっと心強いぜェ。

寝床を決め、無難な感じで俺らは初日を終えたのであったとさァ。



――――



「さて……とりあえず腹が減ったな」

 俺は腹をさすりながら呟いた。

 しかし、腹をさするのは別の理由があった。


 俺がぬくぬく安眠していると、ルネが無防備な睡眠中の人間に突然ボディーブローをカマしてきやがった!

 俺が悶絶していると、何をやっても起きないからだ、と満場一致の返答が返ってきた。

 ルネに鏡を貸してもらうと、マジックで落書きが縦横無尽に走っていた。


 お前ら殺す!!

 暴れる俺を取り押さえるのに10分。


 気がつくと、太陽は真上より少し西へ傾いている。

 時刻で言うと、14時ちょっとすぎくらい?

 うんまあ……、さすがにちょっと寝過ぎたかな?


 そんな感じで、納得せざるを得なかったので、この安眠中落書き傷害事件は一応の収束を迎えた。 

 そんなわけで、全員が程よい空腹を感じているのであった。


「空駆船でたくさん食べたから、死ぬほど減ってるって訳じゃないけどねー」

 とエル。

 皮肉にも、昨日の夜に船内で食ったアレが生命線となっていた。


「まあそうだけど、とりあえず食料を探すぞ。そこでだ。今回は5人もいることだし、2つに分かれて行動しよう」

 俺の時は1人だったから大変だったが……。

 それでも、手の付けられていない大自然の中では、なにかしら見つけることはできたんだけどね。


「なるほど。誰かさんのお陰で日も十分に昇ったし、問題は無いだろうね。さしずめ海班と山班ってところかい?」

 誰かさんの、のフレーズに明らかに視線と悪意を感じたが、俺は華麗にスルーしとく。


「さすがリード。呑みこみが早いな。んで、人選をどうするか、だが……」

 正直、これといって誰が向いているってのはないよな。


「俺ァ海へ行くぜェ。親が漁師なんだ。魚に関しちゃその辺の奴よりは知ってるハズだ」

 おお! ジャミルか! 頼もしいな!

 こういうとき使える知識を持っているのは役に立つ!


「へ~! 釣りとかも出来んの!?」

 ルネが興味津々という感じで聞く。


「当然だァ! 海の漢なめンなァ」

 胸をはって肯定するジャミル。 


「じゃああたしも海行く~! 釣りの仕方教えてよ!」

 ってことは、ジャミルとルネは海で決まりか……。


「じゃ、山班は俺、リード、エルの3人でいいか?」

 俺は確認する。


「いや、待って。ジャミルとルネじゃ性格的に不安だから、僕も海へ行くよ」

 そのリードの発言に2人は猛反発。


「オイッ! 性格的にってどういう意味だゴルァ!」

「そうよっ! ジャミルはともかく、なんてあたしまで不安なのよっ!」

「テメェ! 俺はともかくってどういう意味だァ! このコソドロ女の方がよっぽど問題だろォ!」

「なにを~っ! この人間の不良品よりはマシよ!」

「誰が人間の不良品だァァ! 窃盗犯予備軍に言われたくねェんだよ!」

 おいリード……なんて火種撒いてんだよお前……。

 お前の一言でかなりヒートアップしたぞ……。


「はぁ……どっちもどっちだよ……そう言えば、連絡手段はどうするんだい?」

 リードが結構重要な事を言った。


「あっ……確かにな~、『テレス』の類なんて持ってるやついないだろうし……どうすっかな~……」

 『テレス』とは、遠く離れた場所でも声を伝えることができる古代文明(ラスタード)の1つだ。

 手のひらに収まるコンパクトなものから、大型の据え付け型のものまで数種類ある。


 一般ギルド同士の連絡や、騎士団の部隊同士の連絡に用いられる。

 だが個人ではとても手が出せる代物ではなく、持ってるのはそこらの大富豪くらいだろうしなぁ……。


「ふっ……こんなこともあろうかと……じゃーーん!」

 まじかっ!?

 ルネは、懐から掌より少し小さめの長方形の物体を取り出した!

 それはまさしくテレス!


「おおお! お前やるなぁ!」

 この状況でこれはありがたいぞ!


「っていうか、よくこんなことがあろうとか思ったなァ……」

 確かに……。

 ジャミルに激しく同意。


「この前、『雷光の巨龍』からかっぱらって来たんだけどね~、いや~、売っ払うの忘れてたみた~い!」

 雷光の巨龍!?

 セトラエスト王国の方で幅を利かせている盗賊団だな確か。

 紅蓮の覇王の次に巨大な盗賊団勢力だ。


 技術的な強さはセトラエスト王国最精鋭部隊に匹敵するとかしないとか。

 ドンだけすごいとこから盗んでんだコイツ……。

 っていうかもう黙って盗賊団の仲間入りした方いいんじゃないか?


「なんでもさ~、最新型はピアスみたいに耳に直接付ける超小型なタイプがあるみたいなんだって! これは旧型だから、あんまし高く売れないんだよね~」

 へぇ……買うのは高くつきそうだがそういうものなのか。

 いや、コイツの金銭感覚が狂ってるって可能性もあるけど……。


「そうだねー、確か正規の騎士の隊長クラスは、ピアス型のテレスとか使ってたよね?」

 エルが騎士団のことを思い出しながら言った。


「ああ。その他にも本部には各駐留軍基地を結ぶ据付型のテレスとかがあるって話だよ。僕は見たことないけど…………って、まさか君は騎士団に手を出す気かい?」

 リードがテレスの話をしていると、ルネが目を爛々と輝かせながら聞いていた。


「ん~冗談冗談! さすがのあたしも、あの警備体制を突破するのは不可能だし」

「そういう問題じゃない!」

「そういう問題じゃねーよ!」

 俺とリードのダブルツッコミが炸裂!


「ひっどぉ~! じゃあどういう問題なのよ~!」

 ああ、やばい。

 こいつ腕さえあれば騎士団に潜入してテレス売りさばく気だ……。

 とりあえず、これ以上この会話に関わったらなんか重大犯罪の片鱗に触れてしまいそうなのでやめた。


「えっとー、とりあえずこれで、海班山班の連絡手段はOKなのよね?」

 エルがいい感じに話題を変えた。


「おし、じゃあ確保でき次第、この拠点に集まろう! それじゃ、解散!!」

 かくして、ルネ、ジャミル、リードは海へ、俺とエルは山へ向かった。



――海側(視点:リード・フェンネス)――



 僕はジャミル、ルネと一緒に、海への道を歩いていた。

 今は森だが、微かに聞こえる波の音が海が近い事を分からせていた。


 あぁ……それにしても僕、こんな所で何をやっているんだろう……。

 帝都を出て今日で一日。

 しばらく戻れそうには無かった。

 ふと前方を見る。


「ん……あそこで森が終わってるね」

 僕はひらけた空間を発見して言った。


「潮の香りが強ェ。俺のカンが正しけりゃァこの先は海になってるハズだぜェ」

「そうだね。歩いて約20分か……島の構造は良く掴めないけど、それ程広大な島じゃなさそうだ」

 僕は太陽の位置で時間を計っていた。

 騎士団で教わるサバイバル術の一つだ。


 こんなものが何の役に立つのか……そう思っていたが、役に立つのは案外早かった。

 そうして森を抜けると、海風に乗って一気に潮の香りがした。


「うわ~……海だ~!! 見て見て~! あそこの高台、眺め良さそう!!」

 ルネが言ってはしゃぎながら走り出した。

 ジャミルもその後に続く。

 君たちは子供かまったく……。


「うっひょォ! すっげー眺めだぜ! 岩場もあるし、こっからならいい魚が狙えそうだぜ!」

 ジャミルは断崖絶壁に立ってそう両手を広げてそう言っていた。

 どれ……僕ものぞいてみるかな。


「へぇ……確かにいい眺めだ。なんだかこれだけでもここに来た甲斐があった気がするよ」

 崖の先に見えたのは、どこまでも続く大海原だった。

 天気もいいし、うん……これが絶景っていうものなのかな。


「でも予想してたより高さは無いんだね」

 前言撤回、そこそこの高さはあったが、断崖絶壁というには少々低すぎた。


「あったり前だろォ! そんなに高かったら釣り糸が届かねえ」

 確かに……そう言えば、竿も何もないのだが、一体どうする気だ?


「さてと、じゃあ始めるかァ。まず竿を作りに行くぞ」

「へぇー、竿って自分で作れるんだ~」

 ルネはちょっと驚いている。


「普通は買うんだがな。ガキの頃は小遣いが少なかったから、オヤジに教わって枝とかで自作してたンだよ。まァ見てな」

 ジャミルは森の中に入っていき、ちょうどいい感じの大きさの木の枝3本と、細いツタを持ってきた。


「コイツはシシゲって木の枝、こっちはハチスって木のツタ。どっちも何処にでも生えてるモンだから簡単に手に入ンだァ。いいか? こいつをこう組み合わせてだな……」

 ジャミルの釣り講座が始まった。

 彼の目つきは、なんだか職人に近かった。


 これなら、僕はあっちについてても安心だったかな。

 そう考えると……逆にエルとアークが心配になってきた。

 天然とのんびりお調子者。


 あれ? 本当に心配になってきた……。



――森側(視点:アーク・シュナイザー)――



「これこれ!! これはどう!?」

 エルが元気よく、キノコを拾って持ってくる。


「駄目だ駄目駄目! 思いっきりアウトだっ!」

「なんでよー、なんでなんでなんでー?」

 だだをこねる子供のように聞いてくる。

 うるせぇ!


「こんな毒々しい色のキノコ食えるかぁ! なんでお前はさっきから謎のグロテスク生物しか持ってこないんだ!!」

 毒キノコはもう3つ目だ。

 さっきは赤と黒の縞々のトカゲ(牙が猛毒)を持ってきたし、その前は透明でブヨブヨでアメーバみたいにゆっくりうごめく謎の生物を持ってきた。


 っていうかあれは生物だったのか?

 謎だ……。


「むーっ! 食べられるかもしれないでしょ! 食べてみないとわかんないじゃんそんなのーっ!」

 エルは何が気に入らないのか執拗にコレを夕食の皿に加えたがる。


「だったら1人で食ってろっ! 俺はそんな下んない事に命をかけたくない!」

 その前にまず生理的嫌悪があるけど!


「いいもん! 後でこっそりアークの皿に……」

「やめろ馬鹿野郎! 毒殺する気かお前は!」

「なんで死ぬって決まってるの? 半分半分の可能性じゃんそれはー!」

「だからなんで半分の可能性に命を掛ける方向で話が進んでんだよ! 確実な可能性じゃだめなのか!?」

「確実に……死ぬ?」

「逆だ逆!! なんだ!? お前はそんなに俺を殺したいのかっ!」

「えっへへー、まさかそんなー」

「はぁーっ……人選ミスったな……」

 さっきからこんな問答が続いている……。

 なんていうか……選ぶセンスがない……。


 以前無人島で死にかけた結果、どういうのが毒キノコか気になって親父に教えてもらったのだが、そのおかげで大体は把握した。

 よって俺は食えそうなものをとって進むのだが……エルは相当毒キノコにハマってしまったらしい。

 場合によっては1人くらい死者が出るかもな……。


 むしろ、こいつと組んだのがルネとかだったら恐ろしい。

 あいつは何にも考えてない感じだから、きっと毒キノコを山ほど抱えて帰ってくるはずだ。

 まあそもそも、そんなキケンMAXなメンバーをリードが許すはずがないが。


「――ッ! アーク! 魔物ッ!」 

 エルの声が真剣になった。


「マジかッ! ってコイツは……」

 俺は即座にダガーを抜き構え、魔物と相対する。

 その魔物は……。


「ドラゴンウルフゥゥ!? 魔獣級じゃねぇか、うわ~めんどくせぇ!」

 目の前にいるのは小さいドラゴンを4足歩行にしたような奴だ。

 翼はあるが飛行能力は無い……はず。


 とはいえ火球を放って攻撃とか普通にしてくる癖に、動きも素早いし爪での攻撃もなかなか強い。

 普段相手にする雑魔級のワンランク上の魔獣級に分類されている。

 普段群れで行動することは少ないが、たった2人で相手をするには少々やっかいだ。


 だが……俺は笑っていた。


「こいつは焼けば旨いって話を聞いたことがある。エル! 今日は焼き肉だ! 頑張れ!」

 俺はドラゴンウルフにダガーを向ける。



――――



「ガハッ……まさか……お主、何故それ、を……」

 老人が1人、血を吐いて倒れた。


「何故? 決まってんだろうが。他の賢者様もオレが殺っちまったからなァ……」

 老人に攻撃をしたのは、30代くらいの男。


 迷彩柄の丈の長いコートを着込み、いくつもの腕輪を手からジャラジャラと垂らしている。

 髪は金の短髪で、紅蓮のような瞳の目は凶気に満ちていた。


 そして、最も注目すべきは両手首から伸びる3本のクロー。

 クローは若干電気を帯電していて、刃と刃の間でパチパチと電流が流れていた。

 そして、その長いクローは、血で濡れていた。

 感電することを考えず、クローから滴る血を下品に舐めながら口を開く。


「最初に殺ったのは……8年前か。あんときはビビったぜ。まさか死の間際に魔鎖の呪縛を使われるとはな。おかげで最近まで封印が解けなくって困ったモンだぜ」

 老人の反応を愉しむかのように、金髪の男は凶気に満ちた笑みを浮かべる。


「お主まさかッ……リーヴァスレイズを、再び……!?」

 老人は、何かに気づいたように、傷口を押さえることも諦めた手で必死に起き上がろうとする。


「それ以外に何があんだよ?」

「馬鹿な……あれを使えば、お主とてその身は……持たんぞッ……!」

 その老人は、『リーヴァスレイズ』という物についてなにかを知っているらしい。

 そうして、会話に夢中にさせる傍らの手を、必死に伸ばす。


 左手の先には、旧式の拳銃が転がっている。

 記憶を辿る。

 弾丸は、あと1発は残っていたはずだ。


「あぁ? 知ってるよんな事。オレはなァ。ただ壊せりゃいんだよ、何もかもな……ククク……」

 金髪の男は気付いていない。

 気付いていない。


 手を伸ばす。

 拳銃まであと、8センチ……4センチ……1センチ……。


「お……お主の好きには……させんぞッ!!」

 拳銃に指がかかる!

 そのまま、流れるような、けが人とは思えない動作で狙いを定め引き金を引く。

 鼓膜を破くような破裂音とともに、鋼鉄の弾丸が発射された。


 腕は反動で脱臼し、拳銃は遠くへ跳ね飛んだ。

 両手で構えて撃つものを、血まみれの利き手じゃない方の片腕だけで撃った結果だ。

 弾丸は恐ろしく精度の悪い方へ飛んでいったが、それでもこの距離なら外さない、外せない。


 ――そう、確かに当たったのだ。


 こんな距離で外せるわけがない。

 目の前の男は生身の人間だ。

 弾丸を食らって無傷で済むはずがないし、魔法を使える隙も与えなかった。



 ならば何故、目の前の男は凶気に満ちた顔で、口元を歪ませて笑っているのだろうか。


「なにこの世の終わりみてぇな顔してんだぁ? そんなに驚くことじゃねぇだろ。これも『ブラストレイズ』の持ってる力の1つなんだからよぉ」

 平気な顔をして何をいっているのだ、と老人は思う。

 金髪の男は、弾丸を片手1つで弾いていた。


 ブラストレイズは、自然の摂理のあらゆる決まり事を、こうも簡単に破壊してしまうのか。

 1つ1つが災害級の破壊力。

 それら全てを手にしたとき、文字通りこの男は、

 『魔神』に、なる。


「いい加減誰相手にしてんの分かれやァ、さて、長話も終わりにすっかァ、賢者、アスロック・タリスマン様よォ」

 それが、老人……タリスマンが聞いた最後の言葉となった

 小さい部屋は、血で染まった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ