第2話「破壊的天然娘と元気爆発少年」
前回のあらすじ……。
担当:アーク・シュナイザー
リードが就活の為に用意しためんどくさい演習を俺がすっぽかし、当然ぶちキレたリードはなんと俺を絞め落とした。
そこまでするかっ!
怒り狂った俺は、リードに決闘を申し込むのだった――。
――――
「ねえアーク」
模擬刀を構え、真剣な表情で俺に何かを聞いてくるリード。
「なんだリード?」
「……あらすじ、微妙に、いやかなり改竄してるよね……」
真剣な顔が一転、一瞬で呆れ顔に変貌した。
「ははは、まあ気にするなよ」
そんな俺達は、村の広場へ集まっていた。
広場というからには広いので、剣術の対戦とかはここでやるのが相場なのだ。
っていうか、対戦なんてやるのは俺らぐらいなんだけど。
ここ、城下町外れは皆勝手に“村”と呼んでいる。
それもそのはず、開発が進む帝都中心部に置いてかれ、ここだけ発展途上の小さな地区になってしまったのだ。
草木生い茂り、木造住宅と畑が土地のほとんどを占め、じいさんばーさんがのほほーんと暮らす、それが我らが故郷、“村”なのだ!
……背景が工業区の煙突だったり貴族街の多層住宅だったりちょっとブチ壊しの面もあるが。
であるからして、同年代は数人しかいなかったりする。
その中で、俺とリードはよくこの広場を対戦に使うのだ。
「それより――」
俺は腰からダガーと同程度の長さの鉄の棒を握り、
「――やるぞ」
右手を順手、左手を逆手持ちに構えてそう言った。
「……相変わらず、舐められてるよね、僕……」
リードが目線を反らす。
「仕方ないだろ。訓練用の模擬ダガーなんて売ってないんだからよ」
村の武器屋には、模擬ダガーが置いていないのだ。
それどころか、商業区の武器屋にも。
「じゃあ、行くよっ!」
リードは俺に向かって一直線に走ってくる。
俺は動かずその場で迎え撃つ事にした。
「――はぁッ!」
左側から水平に流れる剣が俺の胴体を狙って迫る。
「よっと!」
俺は右方にジャンプで飛んで斬撃をかわすと同時に軽いステップで背後へ回る。
リードもそう予想していたらしく、ありえない反応速度で俺の顔面を狙い模擬刀を突く!
「っぶねぇ!」
頭を右にずらしてなんとか避ける。
続けて左の棒をリードの頭に向けて薙ぐ!
「甘いよ!」
頭を下げてかわされたが、それこそが狙いだ。
「どうだかな!!」
順手持ちの右手の棒で腹を突き刺すように振る!
「だから甘いって!」
――ちっ、避けられた!?
リードは後ろに飛んで攻撃をかわした後突撃してきた。
「決めるッ!」
右下に向かって斬り下げる!
せっかくなので利用してやる!
俺は左上から迫る剣を身を引いてかわした直後、剣の背を鉄棒で思い切り後押し、地面に叩きつけた。
「な――」
剣は深く地面に突き刺さり、俺はその剣に左足をのせ、順手持ちの右鉄棒でリードの首筋で寸止めした。
「うッ……」
「はい、終了ぉ~」
――――
「やっぱり、君は強いね」
ため息とともに、リードは呟いた。
俺達は花壇の縁に座り、休憩していた。
「まあ、ガキの頃、親父に叩きこまれたからな……あ~、疲れた……」
そう、二刀流のダガーという俺独特の戦闘スタイルは、親父から受け継いだものだ。
あれっ、さっきも言ったっけ?
思いつつ、俺は消費した体力を回復するため寝転がった。
「ちょっと、今のでもう疲れるレベルなのかい?」
呆れて溜息を吐きながら見下ろすリード。
これじゃあまるで俺が敗者みたいじゃないか。
「うるせぇ……訓練してない騎士様と違って一般国民の体力はこんなもんだ……」
肺を動かして、必死に酸素を取り込む。
「いやただアークの運動不足が祟ってるだけだと思うよ」
むぅ、言い返せん。
「まったく……センスだけは抜群なのに、騎士団にもギルドにも入らない。まったく……もったいないよ君は……」
また、ため息とともに片手で顔を覆うリード。
「まあそう落ち込むなよ。毎日鍛錬してるんだから、お前もいつかは俺に勝てる日が――」
「あのなあ君は馬鹿か? 馬鹿だよな? 今はそういう話をしてるんじゃないだろ。僕は君の将来が心配でだなぁ……」
まずい、このままじゃリードのお説教タイムが始まってしまう。
「はいはい。その話はまた今度な」
とりあえず適当に流しとくか……と思って振り返ったら、目の前に見知った顔が2名。
「あっ、アーク! また指南サボったでしょー!」
そう言って、腰に両手をあて「プンプン」という効果音が出てきそうな勢いで怒るこの女は、お馴染みエルアス・ミルードという女。
俺らはもっぱら「エル」と呼んでいるが。
「お前が勝手に予約なんて取るからだろうが! だいたいだからって絞め殺す勢いで来ていいのか!?」
俺は負けじと反論してやる。
予約の実行犯はこいつだからだ。
「君はこうでもしないと行かないだろ? っていうか、そこまでしても結局来なかったけど」
うぉい、さっきまでの罪悪感はどうしたとつっこもうとしたら、
「こらー!! 目の前でケンカしないのっ」
「そーだそーだっ! エルねーちゃん困らすんじゃないよっ!!」
エルと一緒に来たガキがそう言った。
このガキはダイチ・ジュドウ。
14歳で、落ち着いた銀髪の髪とは正反対に活発で元気なクソガキだ。
エルは子供に好かれる特性があるようで、『エルの自称子分』を名乗っているうちの1人だ。
そんなやりとりばっかしてると、リードがあきれ顔で見ているのに気付いた。
「お前はまったく関係ないだろダイチ。外野はすっ込んでろってお母さんに教わらなかったか?」
「そんな事お母さんに教わるのはアークにーちゃんだけだよ……」
いや俺もそんな事は教わらなかったが。
「駄目だ、全然ダメだぞダイチ。ツッコミはもっとズバっとバシっと!! そんなナヨナヨしたツッコミで旅芸人に成れると思ってんのかー!?」
「だ、誰が全然ダメだぁー!!」
いやつっこむ所ちげぇ!!
と思う間もなく、ダイチの右ストレートが俺の腹筋を貫いた。
「ぐへぅ……おい……色々間違ってる……」
そんな息絶え絶えの俺を見てエルは、
「こらー! またダイチ君に変な事教えてるでしょ! どうりで最近アークに似てきたと思ったよー」
ジト目で俺を睨むばっかりだ。
むう、これが俺なりの子供とのコミュニケーションなんだがなんか間違ってるのか?
いやダイチ側は色々と間違ってたけど。
「そう言えばエル。騎士団の課題は終わらせてきたのかい?」
サラっと流された!
そんなリードはエルに問う。
「うんうん、始末書10枚分、とっても大変で疲れちゃったー」
「じゅ、10枚分!? 今度は一体何やらかしたんだ!?」
俺は回復した腹をさすりながら驚いた。
先日は確か落し物を探そうとして他人の家に無断侵入(しかも土足)して5枚分だったな。
「バルードの討伐を頼まれたんだけど……」
そこから先はリードが代弁した。
「村の外の畑に侵入した2匹の『バルード』を討伐するために、魔法を使って畑3つ分を滅ぼしたんだ……」
「……まじかい」
『バルード』とは魔物の1種で、狼のようなものだ。
「いや、あはは、あんまり逃げ回るもんだからつい連発しちゃって、気がつたら畑が無くなってたんだよっ!」
「はぁ……」
「はぁ……」
俺はリードと目を合わせ、同時にため息をつくのだった。
だめだコイツ……早くなんとかしないと……。
ダイチ初登場!
彼は出番が少ないかも……。
んで初の戦闘シーン。
鉄の棒で戦って勝つアークの強さを分かっていただければと。
あ、ちなみにコレは結構主人公無双物になる可能性が高いです。
今はまだ体力の無さとかの問題がありますけどね。