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永遠の時の中で  作者: スピオトフォズ
第2章 疾風の翼
18/110

第18話「ハッタリもほどほどに」

前回のあらすじ……


担当:アーク・シュナイザー

なんとかエイリアスを倒した俺達。

っていうか、倒したのはハリスだけど。

とても盗賊に見えない盗賊、リディに怪我を治して貰ってるとルネ&エルがやってきた。

そんでギャーワーやってたら、なんとハリスが「食事でもどうだ?」と誘って来た!

そういや腹減ったな……よしここは遠慮なしに頂いてしまおう!

んで部屋で待つ間、いろいろしゃべった。

赤髪不良の名が「ジャミル・ハワード」と判明したり、魔物討伐ギルド「紅の剣」メンバーだったり、「蒼き刃」がアーバントに負けたり色々情報を手に入れたのだった。



――――



「――ウィリアム・サーカス。マイケル・ノーム。ジェシカ・グラン。以上、合計16名が今回、エイリアスの襲撃で命を落とした」

 沈みゆく夕日の中。俺達は今、甲板に上がり疾風の翼の葬儀に参加していた。

 今空駆船は飛行を停止し、水上に浮かんでいる。


 その為、操縦士など全人員が甲板の上に出ていた。

 疾風の翼はこの船以外に5隻存在するみたいだが、この船だけでも意外と人数は居た。

 だがそれでも、16名という犠牲者は多い。

 

 甲板には木製の棺が並べられ、それぞれに翼の紋章が刻んである。

 団長のハリスは、その棺を見ながら団員に語る。


「だがそれでも、俺達は人を殺してはならない! エイリアスがどんなに憎かろうと、我々が“疾風の翼”である限り、そんな行為は断じて認めない! 俺に言われずとも、そんな行為で何も解決しない事は、皆それぞれがかつて自分の心に刻んだ筈だ」

 そうハリスが言うと、団員はそれぞれが頷いた。

 拳を握りしめている人、涙を流している人、唇を噛みしめている人。反応はそれぞれだけど、皆エイリアスを殺す気は無いらしい。


 ジャミルも言ってたな……、それを誓うだけのよっぽどの事があった筈だって。

 疾風の翼が殺人をしない盗賊団なのは、団長が決めた規則ってだけじゃなくて、もっと重い理由があるんだろうか……。


「だがそれと同時に、俺達は今回亡くなった彼らの事を絶対に忘れない! 彼らの肉体はここで無くなるが、俺達が覚えている限り、記憶の中に彼らは生きる。だから笑顔で、彼らを見送ってやろう」

 その言葉と同時に、二人ががりで持った棺が、甲板から次々と海へ投げ出されていく。

 俺達も、他の団員と一緒になってそれを見送った。


「ひっぐ……看守さん……目の前にいたのに、ごめんなさい……」

 エルは泣いていた。

 雰囲気にのまれたのかと思いきや、どうやら違うらしい。


「アイツら、勇敢だったよなァ。『盗賊殺し』がどんな奴か噂ぐらいは流れてたけどよォ。『あの女が狙ってるのは俺たちだけだ、巻き込まれたくなかったら先に行け』ってよォ。助けて貰ったっけなァ」

 ジャミルは泣いてこそ無かったが、夕日に目を細め、感慨深そうに小声で呟いていた。


「おいお前ら。何湿った顔してんだ! 最後ぐらい笑って送ってやれ!」

 そう言った近くにいた盗賊の一人は、笑ってはいたが目じりには既に涙が溜まっていた。


「バカが。テメェも泣いてンじゃねェかよォ」

 と言ってジャミルも笑った。


「ダハハハハ、そうその顔でいいんだよ。そっちの嬢ちゃんも笑え笑え」

 盗賊はエルの元へ行き、頭を乱暴に撫でた。


「うぐ……だって、看守さんが目の前で……」

 だがエルは泣きやむ気配は無かった。

 見た目通りというかなんというか、泣き虫だからな……エルは。

 ……俺の親父が死んだ時も、俺以上に泣いてたっけ。


「あそこの看守をしてた奴は、確かウィリアムだな。あいつ、言葉はちょっと乱暴だがビックリするぐらい優しくてよ。この前なんて補給に立ち寄った街から野良猫拾ってきたんだぜ? いくら盗賊でもそこまで盗るかってなぁ」

「確かに、捕まえた私達の心配までしてくれて、優しい人でしたよ。アッハハ、あっ」

 そこまで言って、ようやく自分が笑った事に気づいたらしい。


「……やっと笑ったな。俺はクルーズだ。またなんかあったら声掛けてくれよな」

 そう言って、クルーズという男は言ってしまった。


「……盗賊って言っても、やはり悪い人ばかりじゃ、ないんだね」

 リードはその様子を見て、自分の言葉を確かめるように言った。


「そうだな。……騎士団のお前にとっちゃ、見ない方がいい光景だったかもな」

 こいつは騎士団。

 盗賊団を捕まえる側だからだ。

 いや、捕まえるだけじゃなく、場合によっては手を掛けることもあるかもしれない。


「いや、見ないふりをしても意味がない。知ってしまった以上、僕はその上で騎士になるよ。人を殺す為なるんじゃない。人を正す為に騎士になるんだ」

 そう言ったリードの目に一切の迷いは無かった。

 まあ、正義感の強いこいつの事だし、この程度で決意が揺らぐ事は無い、か。


「そう言えば、なんだけど……」

「なんだよ」

 リードにしては歯切れが悪く言う。


「君は、父親を殺した人を、まだ怨んでいるのかい?」

「怨んでない。と言えばそういう訳でもねーけど、過ぎた事は過ぎた事だし、今更恨んでもしょうがない。それで親父が帰ってくる訳でもねーしな」

 嘘だ。


 俺の唯一の肉親を奪った謎の男を怨んでいる。

 そいつが誰かは分からないけど、もし探せるのなら探す。

 もし、見つかったなら、多分躊躇なく殺せると思う。


 でも、そんな事をコイツに言ったところで止められるのがオチだ。

 それが分かっていたので、俺はこの手の質問は必ず誤魔化していた。


「そうか……。済まないね、何度も同じような事を聞いてしまって」

 リードは少しうつむいて話す。

 確かに、リードが騎士を目指すようになってから、何回か似たような事を聞かれた。


「まあいいけどさ。そんなに俺って誰かを怨んでるように見える?」

 頭の後ろで腕を組んで、なるべく軽い口調で言う。

 我ながらとぼけるのは得意だ。


「別にそんな事は無いよ。ただ、親父さんとアーク、凄く仲が良かったからね……」

 ……今となっては、もう作りだす事の出来ない貴重な思い出となってしまった。


「……まあな。色々あったけど、あの頃は楽しかったよ」

 そんな話をしてるうちに、気がつけば太陽は沈みかけ、辺りは薄暗くなっていた。


「おいお前達、いつまでそこにいるんだ? もう日が沈む。中に戻るぜ」

 そうハリスに言われて、俺達は中へと入った。



――――



「そォ言えばよォ」

 ハリスと共に船内へ戻り、さっきまでいた部屋に戻る途中、ジャミルがハリスに声をかける。


「ここ海の上だろォ? どの辺なんだァ?」

 素朴な疑問だった。

 いや素朴っていうか、そう言えば今船はどこに向かってるんだ?

 というか、俺達はいつ帝都へ戻れるんだ?


「んーと、今はこの辺。だいたい、帝都から西へ400kmってところかな」

 ハリスは懐から使い込まれた地図を出し、指でさす。


「うわー、結構遠いんだねー。今はどこへ向かってるんですかー?」

 エルが気になる質問をする。


「今は近くの同盟ギルド『ガーレット』へ向かっているぜ」

 ハリスは指をつーっと移動させ、小島を指差した。

 結構近いな、この分だと明日には辿り着きそうだ。


「その同盟ギルドっていうのは何なんですか?」

 俺が言う。

 さっきも言っていたが、ギルドと盗賊が同盟結んでいるのは意外だ。


「出航する船があるなら、それを整備する港があるって事だよ。いわば整備基地みたいなモンだ。ギルドっつっても殆どが疾風の翼の空駆船整備に長けた連中や、団員の身内が集まって経営してる集団さ」

 確かに、船単体でやっていける訳じゃないよな、よく考えたら。


「ふ~ん。それで、結局アタシ達が帰れるのはいつになりそう? 別にアタシはいつでも良いんだけどさ」

 ルネが聞いた。

 確かにお前はいつどこで放り出されても生きてそうな気がするよ……。


「正直、すぐ返してやりたいのは山々なんだが、あいにくここから帝都に引き返したんじゃ燃料が足りない。ガーレットによってからだと、早くても三日後だな……」

 ハリスは地図を懐にしまい、苦笑いをしながら告げる。


「まあ、所詮僕らは見習いだし、多少遅れても怒られるだけだろうし……しょうがないか」

 リードは深いため息を吐きながら言う。


「見習い? 何のだ?」

 ゲェ! リードそれ言っちゃまずいだろ!!


「ぼ、僕の父上、鍛冶ギルドやってるんで僕も一応見習いで仕事をさせて貰ってるんですよ、アハハハ~」

 ……こいつ、嘘下手くそなんだよな……。


 目をそらし、冷や汗を掻き、手が踊り、噛みまくったセリフだったが、

「そうなのか。親孝行で何よりだ」

 なんとか誤魔化せたようだ。


 そんな訳で、俺達はまたしばらく疾風の翼船内で暮らすことになった。

 ……のだが……。



――とある廊下――



「なぁぁーーんじゃこりゃぁぁーー!!」

 アーク達が部屋に到着したころ、ハリスは驚愕していた。

 無理もない、壁には大穴が開いていたからだ。


「これ……一体何があったんだ!?」

 ハリスは部下に説明を求めた。


「へぇ、実はですね。あの4人のガキ共、壁面をブチ破って外から侵入してきやがったんですよ」

 その時、アークに蹴散らされた盗賊の一人がそう説明する。


「だってオイ……ここには確か、ガーレットの倉庫にある宝箱のカギがまとめられてあった筈じゃあ……」

「すみませんが、探しましたけど、おそらくはブチ破った拍子に外へ……」

 その言葉を聞いてハリスは抜け殻のように真っ白になってしまった。


「あっ、団長! ここにいたんでしたか!」

 そんなときに、廊下の向こうから別な団員が来た。


「壁の修理費計算しましたぜ。結構デカイ穴ですからねぇ……。しかもこのエリアの壁、中央艦橋からの通信回線がつながっていたそうでして……それも含めるとこんな感じだそうです」

 その用紙には、頭を覆いたくなるような額が書いてあった。

 

「………………そうだ死のう」

「団長ォォォ!?」

 ハリスは大穴から身を投げだろうと足を進め、用紙を持ってきた大柄な男がそれを必死に止める。


「うおおおお! あんのガキ共めぇぇぇぇぇッ! ハッ! そうだ!!」

 ハリスは最初大柄な部下を引き離そうとしていたが、ふっと何かを思いついたように止まる。


「…………ガイス」

「へ、へぇ……」

 静かに、しかし何か恐ろしい気を纏ってゆっくりと振り返るハリス。

 心なしか白いスーツが黒く見えたとか。


「この請求書をあんのクソガキ共に叩きつけろ!! 絶ぇー対! 何が何でも払わせろ!! 4人もいるんだから一人ぐらい大富豪の息子がい居ても良いだろう良いに決まってる!! 行けガイスッ!!」

「へ、へい!! 行ってまいりやすぅぅーー!」

 無茶苦茶な事を言うハリスに対し、風の如くスピードでガイスという男は走り去った。



――――



「……という訳で、オラ金出せやぁぁ!!」

 なぜか俺達は、大柄モヒカンな男にカツアゲされていた。


「請求額……50万J!?」

 リードが用紙を読み上げ絶句する。

 おいおい……壁のくせに高ぇなおい……。


「オイゴルァァァ! 俺から詐欺まがいの事して金取ろうたァいい度胸じゃねェか!」

 お! ジャミルが酔ってる事でガラの悪さ5割増しになってる!

 つーか超ケンカ腰なんですけど!


「ほぉ? 俺様がいつ詐欺まがいの事をしたって? そうそうテメーは暴れた時の流れ弾の修理費で2万Jの請求が」

「ンだァ? 俺をロクでもねェ部屋にブチ込んで監禁しやがったのはドコのドイツだァ!? 勝手に巻き込んどいてよくエラそうな口聞いてくれンじゃねェかあァ!?」

 などとジャミルとモヒカン大男が火花を散らしているうちに俺達は小声で話し合う。


「おいリード、どうするよコレ……」

「後者はともかく……前者は僕達に非がない事もないけどね……」

 と言い、リードは頭を抱える。


「そうだ、明案思いついた」

 俺は一つの作戦を提案する。


「なになにー?」

 エルがなんか楽しそうに耳を傾ける。


「壁ぶっ壊したのルネなんだからお前全部払え」

 スッパリと言ってやる。

 これで問題は解決……か?


「んがっ! ひどっ! ひどすぎる! 悪魔! 鬼! 変態!!」

「ちょ、変態は関係なくないか!?」

「変態並みに頭のおかしい考え方って意味よ!」

「あんま遠まわしにする意味なくねぇかそれ! お前頭悪いだろ!?」

「二人とも仲いいねー、私も混ぜてー」

「いや混ざらなくていいよエル!」

 アホな混ざり方をしようとするエルをリードは必死にひきとめる。


「……ちなみに今現在の所持金は?」

 リードが皆に聞いた。


「俺ミンおばさんからの皿洗い代の残りで2千J」

 あのハードな仕事にしては安かった。


「私はねー、お金はお父さんに預けてるんだよー?」

 エルん家は金持ちだからな~、必要な時に言えば金くれるんだよな。うらやましいぜ!


「あたし、この前売った武器の金で3万4千J」

 へ~、ルネ意外と金持ってんだ。

 まあ仮にもトレハン(笑)だからな。


「僕は今月の徴収税を騎士団に収めたから、残り4千Jだ」

 ちなみにJとはジュールと読む、この世界の共通通貨だ。


「全員合わせてちょうど4万Jか……うん、払えん」

 俺が最終的な結論をまとめる。


「で~、どうすんのこの状況? いっそジャミルに丸投げしちゃう?」

ルネの提案はある意味最も楽だが……。


「いや……あの調子だとそろそろ疾風の翼と戦う事になりそうだ、それだけは避けないと」

 と言いつつリードも頭を悩ます。


「ケンカは良くないもんねー」

「つーかそろそろ止めないとまずいぞアレ」

 俺はモヒカン大男に拳銃を突きつけているジャミルを見る。

 大男は「撃てるもんなら撃ってみろ」と言わんばかりに動じずひたすら金を要求しているが。


「じゃあここはじゃんけんで決めちゃおーよ」

「待てエルどうしてそうなる!?」

 リードはあわてて否定するが、


「賛成~! じゃあ負けた人が単騎突撃でモヒカンと交渉って事で!」

「もう時間ねぇし、いいんじゃね? それで」

 俺達は賛成した。

 もうめんどくせぇ、なるようになっちまえ!!



 ――結果。

「僕かよォォォォォ!!」

 珍しくキレ気味なリードに決定しました。


「よっしゃぁ! リード君、頑張ってくれたまえ」

「がんばってねー、私たちはジャミルさん止めてるからー」

「全てはあんたに託したよっ、じゃっ!」

 俺達は満面の笑みでそれぞれエール(?)を送る。


「ふっふっふ……分った、分ったよ! 僕がなんとかすればいいんだろう!」

 …………やばい、ちょっと変なスイッチ入っちゃったかもしれん。

 リードは静かな足取りでモヒカン大男の前に行く。


「……盗賊団如きが僕から金を巻き上げようなんて、いい度胸だね」

 おおっ!?

 リードが仁王立ちでモヒカンに立ち向かった!!


「なに言ってんだぁ? このクソガキは」

「私は、ギル・ラシアトス帝国政府直轄陸軍、帝国騎士団養成部隊の者だ!」

 バーーンっ! という効果音が聞こえてきそうなくらい、堂々と自己紹介するリード!

 ちなみに、養成部隊とはまあ騎士団見習いの事なのだが……盗賊団はそんなこと知らないだろうなぁ……。


「てっ、てめェら! 騎士団の連中だったのかっ!?」

 モヒカンは驚愕!


「数百件に及ぶ窃盗被害、傷害罪、監禁、誘拐罪、不法侵入罪、不当武装罪、その他帝国税および通行税の未払い、不法滞在、違法船舶改造、その他数十件の罪状および帝国憲法第11、23、24、25、46、71、72、114、118、119、125に違反している為貴方達盗賊団『疾風の翼』は帝国騎士団本部によりA級脅威的武装組織に分類されています」

 長々としたセリフをすらりと早口で話すリード。

 この様子じゃあ見習いだなんて気付かないだろうなぁ……。


「今から連絡して、騎士団本隊に応援を頼めば、この船ごと撃沈することだって可能です!ですが、僕達を見逃してくれれば、今回は見逃してあげます。どうしますか!?」

 リード……頑張ってんな。

 もちろん今俺らに連絡手段などあるはずもない。

 あったとしても、騎士団本隊に直ちに出撃を要請出来るほどの権限はさすがにリードでも、ない。


 言っちまえば、ただのハッタリな訳だが……通用するのかッ!?


「騎士団なんぞに……従う訳ねぇだろッ!! 騎士団と艦隊戦かぁ!? 面白れぇ……やってやろうじゃねぇかッ!!」

 うわあぁぁっ!?

 逆ギレれした!?

 っていうかリード! 状況悪化したぞッ! どうする気だよッ!!


「オイ団長!! こいつら騎士団の連中だったらしい! 騎士団の戦艦が向かってるッ!仲間を集めて艦隊戦の用意だッ!」

 無線でハリスに連絡してるしッ!


《なんだってッ!? 分かった! 総員第1種戦闘配備!! 騎士団の戦艦が向かってるらしい! 急げッ!》

 ハリスの緊迫した声が艦内に響きわたる!

 艦内にサイレンが鳴り響く!


 っていうかこの船どうなってんだ!

 完全に戦艦じゃねーか!


「ちょ! リードどうすんだッ!! なんか取り返しつかねーぞ!!」

「し……知るかっ! みんな! 何か手はないのかっ!?」

 責任丸投げしやがった!!


「しょうがないわねぇ~! ここはあたしにまかせなさ~い!」

 ルネがなんか言った!

 この期に及んでどうする気だ!?


「こういう時はねぇ……こうすんのよっ!!」

 上着の内側から取り出したのは……煙玉!?

 それをボフっとばらまくと、煙で何にも見えなくなった!


「エルッ、ジャミルッ! 壁ぶっ壊して!!」

 ルネの声に2人は瞬時に反応する!


「せ、聖なる力よ! ホーリーブラストッ!!」

「ファイアバレットォ!!」

 光球と炎弾が壁に大穴をあける!

 そこには大空が広がっていた。

 っていうか更に罪重ねやがったよ!


「ハイみんな捕まって! でやァッ!!」

 リードがルネの手に捕まり、俺はリードの手に捕まった!

 エルはルネのもう片方の手に捕まっていた。

 ルネは船の壁を飛び越え、そのまま空中を飛んだ!


「……一応、なんとかなったな……」

「ああ……」

 俺達は、なんとも言えない気分のまま空を飛んだ。


「あれ? ジャミルさんは?」

 とエルが呟く。

 そう言えば……いないっ!?


「いだだだだだだッ!! ちょっと馬鹿ぁ!! どこ掴んでんのよッ!!」

「しょうがねェだろッ!! いきなり掴めとか言うからだッ! っていうかなんで空飛んでんだァァッ!? 高ェしッ!!」

 ――いた……。

 ジャミルは……ルネの長い髪に捕まっていた……。


「痛いって! 離しなさいよぉぉぉーーー!!」

「馬鹿野郎ォォォ! 離したら真っ逆さまだろうがァァァ!! っていうか一旦降りろどっかにィィ!!」


「いたッやばいって! 抜けるって!! しかも4人は重い! あ、駄目、落ちるぅぅぅぅ!」

 突然、ルネのブーツの推力が無くなって、俺達は墜落したのだった……。





それから、疾風の翼は来ることのない敵を丸一日臨戦態勢で待ち続けていたらしい……。

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