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永遠の時の中で  作者: スピオトフォズ
第2章 疾風の翼
17/110

第17話「とりあえず生き残れた」


前回のあらすじ……


担当:アーク・シュナイザー

銀髪女に俺&赤髪不良&リードで戦いを挑む羽目になってしまう。

だが銀髪女は強すぎた。

なんだよこの達成不能なミッション。

さすがに誰か死んだらシャレになんないのでとりあえず頑張った。

俺のハッタリ&華麗な作戦で勝てるかと思いきやそれも残念な結果に。

しかも俺の態度が気に食わなかったらしく殺気を煽ってしまうが赤髪不良の攻撃で助かった。

劣勢は変わらず、相手がなんかヤバそうな魔法を放つ――瞬間に、別の男の衝撃波がエイリアスを襲った。

そいつの正体はなんと疾風の翼の団長の「ハリス・ローレンス」だった!

同時に銀髪の名が「エイリアス・ラクシリア」だと判明する。

結局、ハリスとエイリアスが一騎打ちし、ハリスが見事勝利を収めた!

が、最後の最後にハリスの「ポン」が俺を攻撃した……。



――――



「いやぁ悪かった悪かった! リディ、治してやってくれねぇか?」

 上から下まで真っ白なスーツのハリスは、はっはっはと笑いながら後ろにいた団員に声をかけた。

 コイツ全然悪いと思ってねーよ。


「あ、はい、今治します……、――天よ、我らに聖なる活性を、エイド!」

 そう言って俺と赤髪不良とリードに治癒魔法がかけられた。


 術師はちょっとオドオドした態度の、見た目14~15歳くらいの少女だった。

 薄茶色のショートで、てっぺんから少し右をちょこんと髪留めで縛っている。

 服装は一目で魔法師と分かってしまいそうな真っ白いローブで、黄緑のバンダナはさすがに頭ではなく右腕に巻きつけている。


 そのちっこい治癒魔法師の魔法『エイド』は、体中を優しい風が包んだと思うと、傷口が塞ぐ。


「あの……えと、治癒魔法で治せるのは、傷口だけで、血や体力は元には戻らないので……気をつけてください」

 うーむ、人見知りなのだろうか?

 すっごくか弱いというか……やはりオドオドとした口調だ。


「分ってますよ。仲間に治癒魔法師がいますから。わざわざありがとうございます」

 リードは深く頭を下げ丁寧にお礼を言い、


「怪我つっても大したことねェし、別に必要なかったンだがなァ」

 長赤髪不良青年はめんどくさそうに呟き、


「お~、わざわざありがとな。お前、名前は?」

 俺は年下だから敬語いらないんじゃね? と思いフランクに話す。


「リディ・クライトンといいます。よ、よろしくお願いします」

 やはりぎこちないな……もしかして嫌われてんのか?

 ていうかとても盗賊に見えんのだが。


「ハ、ハリスさん……まさかあの女の子、拉致って来たんじゃ……」

 俺は小声でこそこそっとハリスに話す。

 どう考えても盗賊に見えねぇもん。


「はぁ? お前さん人をなんつー目で見てんだ。リディは兄貴が同盟ギルドの一員でな、それで兄貴の役に立ちたいってココ入ったんだよ」

 同盟ギルド? ってなんだ?

 って聞こうとしたら、騒がしいのがやってきた。


「あっ! アーク、リード、ジャミルさーん!! 無事―!? 怪我してないー!?」

 わたわたとあわてて駆けつける天然少女エルと、


「うぃ~っす! 言われた通りエルの安全はばっちり保護しといたよ~! っていうかもしかして勝っちゃったの!?」

 笑顔から驚きの顔に変わるトレジャーハンター(笑)のルネの2人だ。


「エル! ……とルネ。よかった、とりあえず何ともなかったみてーだな」

「ちょっと! なんであたしの時だけテンション低いのよ!」

「うるせぇお前はオマケみたいなモンだろーが」

「なにを~!! あたしがいなかったらここに来られなかったのよ~!」

 と俺とルネでギャギャーやってるうちにリードは、


「あの、助けていただき、ありがとうございました!」

 と丁寧に頭を下げた。

 おっとそうだった!

 助けてくれたんだからお礼くらい言わなきゃな。


「まあ拉致の件は置いとくとして……助かりました、ありがとうございます」

 俺も一応敬語で頭を下げる。


「い、いきなりそんな頭下げられてもなぁ……」

 ハリスは俺達の(ていうか俺の)態度急変に戸惑っていた。

 そんな俺達を見て赤髪不良は不満そうに、


「ケッ! 元々俺ァ捕まったからこんな面倒な事に巻き込まれたんだっつーのォ! あァン? どう落とし前付けてくれんだよゴルァ!」

 と眉毛をハの字にして睨みつける。


 うわ、こいつ、やっぱガラ悪っ!

 そんな赤髪不良に後ろから迫る影……。


「駄目ですよっ!」

 オイ!

 と思わず言いそうになった。


 エルが杖で赤髪不良の後頭部をぶっ叩いたからだ!

 絶対痛いって!!

 ていうか容赦ねぇなオイ!


「痛ってェなっ! なにしやがん――」

「せっかく助けてもらったのに文句言っちゃダメっ!」

「いやだから――」

「もうちょっとで死にそうだったんだよっ! 命の恩人にはちゃんと『ありがとうございました』って言うのっ!」

「だァーかァーらッ――」

「人に感謝されるのは、まず人に感謝する事から始まって行くんだよっ!」

「だァァーー! もう、うぜェっつーのォ!! お前は俺のカーチャンかッ!」

「関係ないもん。返事は?」

「ハァ……ったく……あ、あざーっす……」

 と、説き伏せたっ!?

 赤髪不良はハリスに向き直り、ちょこんと頭を下げた。


 しかしエルのやつ……捕まってる間に随分赤髪不良と仲良く(?)なったもんだな……。

 コイツの名前は謎だけど。


「ていうか、君達はなんでここに来たんだい?」

 リードは若干呆れ気味に言った。


「ん~? いやさ~、逃げようとしたんだけどエルがやっぱ参戦するって言ってきかなくてね~」

「うん、なんとなく分かったよ」

 リードは苦笑いを浮かべ納得した。

 エルの性格からして絶対言いそうだしな。

 ったく、変なところでまっすぐだからな~、エルは。


「むーっ、せっかく助けに来たのになんかリードの苦笑いがひどーい」

 むす~っと膨れるエル。

 その仕草は普通に可愛いが残念ながらお前を恋愛対象として見ることはできんよエル。


 俺にはレベルが高すぎるぜ。

 主にドジっ娘レベル的な意味で。


「……とりあえず、私もやる事がある。サクマ」

 ハリスは、その辺にいた一人の盗賊を呼ぶ。


「はい」

「この少年達を休憩室へ案内してくれ」

 そう言うと、ハリスはエイリアスの元へ歩き出した。


「分かりました」

 サクマという男は、盗賊の中では若い方に見えた。


 年は、20代半ばぐらいか。

 緑色の髪に黄緑のバンダナを巻いている。

 盗賊らしいラフな格好で、手に握られている長銃はオーブが付いている様子から体外装備兵器サードレイズだろう。


 俺はエイリアスの元へ向かうハリスを目で追う。


「カルト、ロンド。お前らは俺と一緒にエイリアスを手当てして牢へ運ぶぞ。その他は……仲間の死体を片づけてくれ」

 そう言ってハリスは2人の盗賊に指示を出す。


「おぅ。分かりましたぜ。ですが、まさか牢を使う日がマジで来るたぁなぁ」

 ロンドという髭面のおっちゃんは牢に対してそう呟いたが、


「それより、キャシーを殺したコイツの手当てをしなきゃならないなんて……」

 カルトと言われた青髪の兄ちゃんは、ひどく悔しそうな顔をしていた。

 そりゃそうだ……何人もの仲間が殺されたんだから。


「“殺されたから殺す”じゃ、悲しみの連鎖はいつまでも終わらないのさ。……エイリアスの処遇についてはその後だ」

 そう言っているハリスも、俺の目には悔しそうに歯を食いしばる姿にしか見えなかった。



――別の部屋――



「ハリスさん……悔しそうだったね……」

 部屋に案内されて、テーブルの前のイスに座る時、エルがそうつぶやいた。


「仲間を何人も殺されたんだ。無理もないよ」

 リードも表面は冷静にしているが、正義を目指して騎士団に入っただけに、色々と思うところはあるだろう。


「疾風の翼ってのはあそこまでやられても、結局殺しはしねェんだな。ご苦労なこったァ」

 赤髪不良は、頬杖を付きながらめんどくさそうに言う。

 その言葉にルネが反応する。


「何言ってんのよ。紅蓮の覇王みたいに残虐な盗賊団が増える今の時代に、いい盗賊団じゃないの!」

 ちょうど向かい合うルネは赤髪不良を睨む。


「違ェ。あそこまでされて団長はおろか部下まで“無殺生”の決まりを守るって事ァ、それを誓うだけのよっぽどの事があったンじゃねェかってなァ。まァ、その結束とやらが疾風の翼の武器なンだろうがよォ。ンだがその誓い故に死ぬほど怨む相手を手当てしなきゃなンねェ。そりゃァ皮肉なもンだぜェ」


 確かに……赤髪不良の言う通りだ。

 あそこまでされた相手の手当てをするなんて、どう考えても普通できない。

 俺だって……親父を殺した相手が目の前にいたら、傷を負っていたとしても、手当てなんて出来る筈がない。


 (“殺されたから殺す”じゃ、悲しみの連鎖はいつまでも終わらないのさ)


 ハリスの声が頭によみがえる。

 俺は、親父の仇を討ちたい、と思っていたけど、それは新たな悲しみを生むだけなんだろうか……。


 あああああああ、駄目だ、やめよう!

 そんな事ばっか考えていると気が滅入る!!


「……しっかし、この空駆船、意外と広いんだなー」

 俺は話題を変える為に、見た目以上の広さに感動しながら言った。

 今俺らがいる部屋は、殺風景だが、空調も効いていてなかなかいい感じの部屋だった。

 広さも十分だ。


「盗賊団だからなァ、金はあンじゃねェんのか?」

 ジャミルは腕を頭の後ろで組みながら言った。


「駄目よ駄目駄目! お宝を金にしちゃったら意味ないじゃない!」

「は? なんでだよ」

 まさか眺めて楽しむ訳でもないし……と俺は思ってルネに言った。


「あたしが盗れなくなっちゃうでしょっ!」

「泥棒か! なんでお前は人の物横取りするしか考えないんだよ!」

「失礼な! お宝だってあんなむさっ苦しい連中より若くて綺麗なこのあたしに盗まれた方がいいに決まってるじゃない!」

「知るかっ! お前トンでもない自己中だな! この偽トレハン」

「トレハンって……略すな~っ!!」

「……2人とも静かに」

 すっごい呆れたような顔をしてリードが言った。


「わかったオーケー、俺はもうこのコソドロに惑わされたりしないぞ」

「ふん、コソドロを舐めると痛い目にあうよ?」

 いやそこ否定しないんかい!

 なんだかコイツといると精神年齢が5歳程後退する気がする……。


「そういやさ、お前名前まだ聞いてなかったよな」

 俺は隣りに座る赤髪不良に言った。


「あァ、ジャミル・ハワードってンだァ。帝都の隣の『ブルーム村』ってトコに住んでらァ」

 ジャミルはめんどくさそうに自己紹介を始めた。

 その割には住んでる所まで教えてくれたが。


「でもジャミルさん、それ体外装備兵器(サードレイズ)だよねー? やっぱ違法所持なのー?」

「大変だ。だとしたら騎士団の名に掛けて拘束しないといけないんだけど……」

 リードとエルは当然のごとく違法所持と決めつけて話を進めるが、


「だァァー! 誰が違法所持だ誰がァ! コイツァれっきとした合法だっつーのォ! これでも一応魔物討伐ギルド『紅の剣』のメンバーだこの野郎ォ」

 と、ジャミルは思わぬ反論をした。

 ポカーーン。


「な、なンだテメェらそのリアクションはァァ!」

 ジャミルは固まった俺達に怒鳴った。


「いやだってさ~」

「ただの不良にしか……」

「見えなかったんだもーん」

 ルネ、俺、エルの順に口を開く。


「はぁ……君がそんな格好してるのが悪いんだよ……」

 リードはまたまた呆れ気味に口を開く。


「俺か!? 俺が悪いのかッ!!」

 腑に落ちない結末に納得行かないジャミル。


「そういや、ジャミルってどうして捕まったんだ?」

 俺はなんとなく話題を変えた。


「あァ……モルゼスの森のはずれで、アーバントが人を襲ってるって噂があってなァ」

 アーバントとは、ゴリラのような魔物だ。

 バルードと同じ雑魔級の魔物で、バルードよりは少し手ごわい。


「ああ、その話なら騎士団の方でも聞いたよ。確か……『蒼き刃』が依頼を受けたって聞いたけど?」

 リードが話に混ざる。


「それなンだが、蒼き刃の連中、返り討ちに会いやがったそうなンだ」

「返り討ち? アーバントにかい?」

 リードは驚いていた。

 一般人なら露知らず。

 こと戦闘に関しては手慣れてるはずの戦闘ギルドが返り討ちにあうとは珍しい。


 どうなってんだ?

「らしいぜ。連中の話によると恐ろしく強かったらしいぜ? ンで代わりに俺達が様子を見に行こうって事で偵察に行ったンだが、そこで『疾風の翼』の船を発見しちまってなァ……、クソ団長の命令で俺だけ偵察に行かされて捕まったってワケだァ」

「それで結局、アーバントの件はどうなったんだい?」

「さァな……、捕まってたンだから知る訳ねェだろ」

 アーバントが、『蒼き刃』を、ねぇ。


 そのギルドは俺は知らないしそんなに巨大な組織でもないんだろうが、雑魔級ごときにやられるはずはないと思うんだけどな……。

 ……まあ、気にする事でもないだろ。

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