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永遠の時の中で  作者: スピオトフォズ
第2章 疾風の翼
16/110

第16話「重要なのは相手の予想を超える事」


前回のあらすじ……


担当:アーク・シュナイザー

悲鳴の元に駆けつけるとそこにはエル、赤髪不良と銀髪女(共に名前不明)がいた!

俺は銀髪女の実力にかなわないと判断し、戦闘を回避しつつエル救出に取り組もうとするが失敗。

ルネにエルの安全を頼み、男3人は銀髪女と対峙することになってしまった!

3対1でも勝てるか分からんが……ええい! やるしかねぇ!!



――――



「吹っ飛びやがれッ! ファイアバレットッ!!」

 先陣を切ったのは赤髪不良だった。

 サイドステップをしながら、4発の真っ赤な弾丸を放つ!


「――凍てつく壁よ! 我が盾となれ! アイスウォール!」

 銀髪女は魔法を詠唱し、目の前に氷の壁を作って弾丸を防いだ。

 弾丸は氷の壁に当たると爆発して壁を破壊したが、銀髪女には当たってないようだ。


 だが隙は出来た!

 俺とリードが左右から挟むように突撃!


「はあッ!!」

 リードが縦に1撃するがひらりとかわされる。

 同時に俺はリードの反対側から左ダガーで胴体を狙う!


「遅い」

 だが衝撃とともに俺の左手は弾き返された。

 おい攻撃速過ぎだろ!

 レイピアが見えなかったぞ!?


 その隙に銀髪女の強烈な突きが俺の頭部を狙う。

 俺は殆ど反射で右ステップし、その攻撃をかわす事に成功。


 すぐに動かないとやべぇと俺の本能が警鐘を鳴らしていたが、逃げに転じれば恐らくずっと銀髪女のターンになりかねないので思い切って攻めに転じる。


「うぉぉぉッ! リードッ!!」

 俺は特に意味もなくリードの名を呼んだ。

 そのお陰で女の注意が一瞬リードに向く。


 その一瞬の隙に俺は銀髪女の懐に攻め込むッ!


「させん! ――凍土よ、標的を突き刺せ! レイディフローズン!」

 が、攻め込む前に銀髪女はバックステップからの魔法を放った。

 なにこの素早さ。

 と思う前に俺の足元に水色の魔方陣が!?


「ちょ、やば!」

 俺はとっさに後ろに下がるとその瞬間、魔方陣からハリネズミのように氷の棘がワッと出てきた。


「痛ぇ!!」

 俺は左腕をブッ刺された。

 やばい強いコイツ。


 つーか割とマジで殺しにかかってるよね。

 これ俺ら勝てんのか?

 無理じゃね? 人生詰んだかも知れん。


「はぁぁぁッ! ショックブレード!!」

 俺が一瞬アホな事考てる間に、リードが銀髪女に斬撃を仕掛ける!

 剣を下から上に薙ぎ、“風の魔素”の衝撃を与える剣技だ。


「痺れろッ、サンダーバレット!!」 

 同時に赤髪不良も援護射撃。

 “雷の魔素”の弾丸を撃つ!


「ちっ!」

 赤髪不良の攻撃はかわされたが、リードの攻撃はヒット!

 よっしゃチャンス到来!!

 この好機逃すべからず!!


「どらぁぁぁぁッ!!」

 俺は変な叫び声をあげながら突進!!


「甘いッ!!」

 銀髪女はレイピアで俺の頭に豪速突き(勝手に命名)を繰り出す!


「よっと!」

 がそんなのお見通し!


 俺は豪速突きを仕掛けて来るだろうと思い始めからかわす準備をしていたのだ!!

 突き回避と同時に、ちょっと痛むが地面に左手を当て前転。

 直後に前転の勢いを利用し右ダガーで胴体を狙う!!


「っだらぁッ!!」

「くッ!!」

 当たった。

 当たったよオイ!!


 俺のダガーが右肩を負傷させることに成功!

「いいぜェテメェッ!!」

 銀髪女はすぐにレイピアを構えてきたが、脇から突然赤髪不良が突撃、飛び蹴りを繰り出した。


「なにッ!?」

 銀髪女は驚き、とっさに左手で受け止めるがよろける。

 そりゃそうだ、俺もびっくりしたもん。

 赤髪不良は受け止められた反動を利用し空中へジャンプ。


「持ってけェ! バーストォ、バレットォォ!!」

 そのまま空中で攻撃を放つ!


 右手に持つ銃に魔素を溜めてから撃った。

 弾丸はまるでレーザーのように飛び、銀髪女のいる地面をえぐった。


「……破壊力は認めよう。だが、精度はイマイチだ!」

 砂煙の中から声がした。

 なんと女はあの予想外の連続だった攻撃をかわしたらしい。

 コイツもう人間じゃねーよ。


「それはどうだろうね……閃光斬ッ!!」

 いつの間にか後ろに回っていたリードが素早く二撃!!

 “光の魔素”を使った技だ。

 余りの速さに残像が見える。

 だが、あれですら二撃目は防いでいた。


「なっ……!」

「いい技だ。だが経験が足りん、なッ!!」

 防がれた事に驚愕するリードの剣を「な」の部分で勢いよく弾く。


「うッ!!」

 態勢を崩し、躓くリード。

 ちょ、危ねぇ!


「――破裂する凍牙よ! アイスデッド!」

 銀髪女は横にレイピアを薙ぐ。

 するとレイピアの軌道上で氷の塊が広範囲に破裂し、尖った氷の破片がリードと赤髪不良を襲った!!


「うわぁぁぁッ!!」

「ぐゥゥゥッ」

 2人は衝撃で驚くほど遠くまで吹っ飛ばされた。

 おいやべぇ、大丈夫かよ!


 っていうか今度は俺の番じゃね?

 やばい死ぬ!


「さて、次は貴様だ。何か言い残す事はあるか?」

 銀髪女は俺に剣先を向ける。

 剣じゃないけど。


 ああもう……こうなったらもうあの手を使うしかねぇ……!!

 俺はこれで剣術指南に来たロウ教官って騎士を倒したんだ!

 ならいけるはずだ!


「あ~あ、もう終ったわ。……煮るなり焼くなり好きにしろよ」

 俺は全てを諦めたような顔をして、ダガーを2つとも空中に放り投げた。


「――!?」

 目を丸くして驚愕する女。

 視線が一瞬上を向く。


 今だッ!!

 その瞬間俺は出せる力全てを振り絞り女にタックルするような勢いで突撃!!

 同時に靴に仕込んだ予備ダガー1本を抜く!


「でぇぇいッ!」

「そんな攻撃ッ――!!」

 攻撃、これは女に防がれる。


 が予備のダガーがレイピアに触れる瞬間、俺はダガーを離す。

「なっ!?」

 まるで攻撃をスカったように身を崩す銀髪。


 そりゃそうだ、思い切り弾いたのはただの空中にあるダガーなんだから。


 そして先ほど、俺はダガーを銀髪女の真上に落ちるように投げていた。

 ちょうどこのタイミングでキャッチできるようにな!!

 俺はダガーを2つともキャッチし、キメ技を放つ!!


「喰らいやがれッ! クロスエッジ!!」

 十字に銀髪を切り裂く!!

 左手が怪我して痛かったが、全力で放ったつもりだ。



 そのはずなのに……。



 ……そこまでしても防がれてしまう悲しき現実がここにある。

 ちょ、これはマジで予想外だぜオイ。

 だが女にも余裕はなかったらしく、ギリギリで鍔擦り合いになった。


「フン……少しはやるようだな……! 久々に驚かされたぞ」

 銀髪女は楽しそうにニヤリと笑った。


「こっちも驚いたっつーの。お前本当に人間?」

 俺は力を弱めず均衡を維持した。

 腕が笑ってるぜ!

 オイだれかヘルプミー!


「……さてな」

「ちょ、そこ曖昧な答えなのかよ!? そこはハッキリしとこうぜ!」


 ……こいつが人間かどうかマジで疑わしくなってきた。

 つーかそんなのはどうでもいいから誰かこの状況を助けて!


「貴様……何をヘラヘラしている……私を舐めているのか?」

 あれ……?

 なんかお怒りのようですが……。

 ちょ、睨むな普通に怖い。


「いや待て待て! 舐めてない舐めてない! これが俺のスタンダードであってだな、別にお前がどうって訳じゃなくて――」

「よくもやりやがったなァ! ファイアバレットッ!!」

 絶妙なタイミングで赤髪不良が復活!!

 炎の弾丸が銀髪女を襲う!

 っていうか俺も危ねぇ!!


「ちッ!! 小癪なッ!!」

 女は鍔擦り合いをやめ、レイピアを思い切り振り俺を弾き飛ばす。

 俺は余りの急な力に対処できずぶっ飛んだ!

 まだこんな力残ってたのか!?


「ぐッ!!」

 壁に背中を強く打ち付けた。


「う……くっそ……」

 なんて衝撃だよ……!

 立ち上がろうとするも、手足に思うように力が入らない!

 女は地面にレイピアを突き刺して水色の複雑な魔方陣を一瞬で組み上げると、


「絶対零度の世界、身を切り裂くような雨――」


 目を閉じて詠唱を始めた!

 なんかヤバそうなんだが!


「この魔法……まさかアレか!? ふざけやがってェェッ! バーストォ――」

 赤髪不良はぎりりと苦い顔で歯ぎしりをする。

 そして、右の拳銃を詠唱中の銀髪に向け、銃口に魔素を溜めていく。


「――バレットォォッ!!」

 瞬間、拳銃から一筋の閃光とでも云うべき速度で弾丸が射出された。

 閃光は、寸分の狂い無く銀髪に命中した――と思った。


 だが赤髪不良の必殺の一撃は、魔方陣からでる水色のオーラに阻まれてしまう。

 俺の学校に行ってた頃の知識によると、今の状況はちょっとシャレにならない思う。


 魔方陣とは、魔法の術式を図柄的に示す設計図のような物で、

 詠唱とは、その設計図と体内の魔素を繋ぐ言葉だったはず。


 つまり、魔方陣が複雑な形であればあるほど、詠唱が複雑なら複雑なほど、その魔法は強力なのだと俺は学校で教わった……多分。

 そこから導きだされる結論はつまりあれだ、マジでヤバいって事だ!!


 俺は復活していたリードに叫ぶ。

「リードッ! なんとか詠唱を止め――」

「無理だッ! 早くこの場から離れるんだッ!」

 俺が言い終わる前に、リードは俺の腕を掴んで走る。


「オイッ! なンで攻撃が効かねェンだァ!」

 赤髪不良が追いつく。


「詠唱中に魔陣壁を展開してる! あの魔力じゃいくら攻撃しても僕達じゃ破れない!」

 リードが走る。


「魔陣壁!? って、何だ!?」

 俺は掴まれた腕を離す。


「術者が詠唱中に自身を守る壁だよッ! 学校の基礎座学で習っただろ!!」

 後ろを振り返る。


「あ、俺その授業寝てたわ」

「俺ァ学校行ってねェし」

「ったく君たちはもォォォォ!!」

 リードは俺と赤髪不良にキレ気味になりながらも俺達は魔法のどこかも分からない有効範囲外まで逃げようとする。


「ふふふ、足掻いても無駄だッ! 我が武器となりて、眼前を埋め――ッ!」


 その時、女の後ろから衝撃波が襲った!

 発動間近というところで詠唱は寸断された。

 俺じゃない!


 リードでもジャミルの攻撃でもない……。

 誰だ……?


「よ~やく見つけたぜ。発見した部下の連絡が次々に途絶えるものだから、探すのに苦労したぜ~」

 緊張感のかけらも無い声を出したそいつは、真っ白なスーツにシルクハットという、相当に場違いな格好をしていた。

 手には両刃の薙刀を構えている。



 って……この声は……――


(なんだいなんだい、こんな廃屋で物音があったと思ったら。面白そうな事やってんじゃねーか。俺も混ぜろよ)第7話参照


 ――あの時俺を助けてくれた男じゃねぇかぁぁぁぁ!!

 なんでここに!?


「貴様……何者だッ!」

 銀髪は氷のような目で睨みつけながら、攻撃してきた男を睨み付ける。

 普通なら攻撃するチャンス! な訳だがここは空気読んどく。

 なんかカウンターされそうだし。


「おぉ怖い怖い、睨まれただけで魂持ってかれそうだ。ま、お前さんが一番嫌いな盗賊の頭ってとこか? 疾風の翼団長、ハリス・ローレンスだ。名乗ったからにはお前さんの名前も聞かせてもらうぜ?」

 団長……?

 こいつ、団長だったのか!


 意外すぎるわ!

 しかもそう言えば、銀髪女の名は知らなかったな。


「ふん……『盗賊殺し』、エイリアス・ラクシリアだ。分かったら消えてもらおうッ! 貴様を消せば、残るのは烏合の衆に等しいッ!!」

 女の名前はエイリアスと言うらしい。


 っていう場合じゃねぇ!

 エイリアスはレイピアを構え、高速でハリスに迫った!


 あの豪速突きか!?

「――消える? 冗談よせよ。俺の部下散々殺しやがって……消えるのは――お前さんだ」

 その瞬間、ハリスの雰囲気が変わった。


 ハリスとエイリアスは交差し、思わず目を閉じるような閃光が散った。

 ど、どうなったんだ!?

 見えねぇよあんなの!!


「ば……かな……ッ!?」

 エイリアスは膝をついた。

 腹からどろっと血が流れ出ている。


 勝っ……た、のか?

 だがエイリアスの顔は、笑っていた。


「貴様……強い、強いな……だが、これで勝ったと、思うな、よ……」

 ドサリ、という音がして、エイリアスと名乗る『盗賊殺し』はその場に倒れた。

 え……死んだ、のか?


「ふ~っ、終わったか……。ま、『疾風の翼』の名に懸けて命まではとらねぇよ。せいぜい島流し程度で勘弁してやるって」

 疾風の翼団長ハリスは、倒れたエイリアスの前に来てそういった。

 ……そういや、疾風の翼は命を奪わない事を決めてるんだっけな。


「そういやお前さん達だっけ? 船の壁突き破って侵入したの。だいぶ消耗してたぜ、この野郎は。お疲れさん、助かったぜ」

 そう言ってハリスは俺の左肩の上に手をポン、と乗せた。



 その衝撃は刺されて血が出てる傷口に響いた。



「いってぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


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