表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
永遠の時の中で  作者: スピオトフォズ
第2章 疾風の翼
15/110

第15話「盗賊殺しのチート女」


前回のあらすじ……


担当:アーク・シュナイザー

20人の盗賊団を撃破し、俺らは先へ進むんだがなんだか船内が妙に静かだったことに気づく。

なんでだろう……少なくともアホルネの隠密行動説はないな。

よく分らんのでとりあえず進んでみると、リードが死体の山を発見。

オイオイこれはマズイだろ、主に年齢制限的な意味で。

じゃなくて!!

いくら盗賊やってるからって無残に殺しすぎだろ。

どんだけ恨みあったんだよ。

いや、恨みがあったからってひどすぎるって。

殺した奴マジありえねぇ、見つけたらブン殴ってやる!

……と1人で勝手に熱くなっていたがリードの言葉で眼が覚める。

目的はエルの発見だったな。

危ない目にあってなきゃいいが……って思ってるうちに、

向こうからエルの悲鳴!?

早速かよ!?



――――



「エルッ!!」

 声のした方へ辿り着くと、そこにはエルの他に、2人の人間が立っていた。


 1人は、黒いコートに身を包んだ赤髪の男。

 全身をネックレスやピアスなどギンギラアクセサリーで構成し、カツアゲとか普通にやりそうな不良青年だった。

 その上、手には黒光りする二丁の拳銃を握っていて、見た目で言えば危険度MAXな人物じゃね?


 ただ、追い詰める"敵"からエルを庇うように立ち、左手を水平に伸ばし、右手の銃口で"敵"をしっかりと狙っていた。


 そしてその"敵"とは、綺麗な長い銀髪をたなびかせ、右手に彫刻のようなレイピアを握る赤眼の女だ。

 その"ヤバ度"は軽く拳銃を構えた不良を上回る。


 なぜなら全身からおぞましい程の殺気を放ち、その殺気をレイピアにのせ赤髪不良とエルに向けていたからだ。


 そして肝心のエルはというと、左足を今斬られたようで、ふくらはぎからどくどくと血を流していた。

 他にも追われる途中で負った傷が数ヶ所あるようだが、倒れながらも銀髪には力強い抵抗の眼差しを見せていた。


 だが俺達に気づくと、驚いて、

「アーク! リード! なんでここに!?」

 と叫んだ。


「なんだ貴様らは……その格好……盗賊団ではないな?」

 女は、凍りつくような殺気の籠った目で言った。


 間違いようがなく、コイツが殺気の正体で、ルネの言っていた『盗賊殺し』だろう。

 俺は確認する意味で口を開く。


「お前が……お前があの『盗賊殺し』か」

 女はふん、と鼻で笑い答える。


「だからどうした。私の敵は盗賊だけだ。私に刃を向ける必要はあるまい、少年」

「そうも行かねー。そこの2人は俺の仲間なんだ。そいつらは盗賊じゃねーよ。お前、一体何やってんだよ」

 俺はリードに目で合図を送った。

 俺が会話で引きつけて、その隙にリードとルネであいつら2人を逃がすという完璧な作戦!


「愚問だな。盗賊団を潰しに来た。それだけだ。邪魔する者は皆排除する。それは貴様やそこにいる貴様の仲間とて例外ではないぞ?」

 とりあえず話は通じる奴らしいが、どうも相互理解して和解という平和エンドは期待できそうにない。


 それに盗賊に何の恨みがあるのか知らないが、あんな殺し方は絶対許されねぇ。

 許されていいはずがねぇよ。


「……そうかよ。お前が盗賊にどんな恨み抱えてんのか知らんねーけどさ、だからってあんな無残に殺す必要はないだろッ! 人の命なんだと思ってやがる!」

 ……なんでこんなに自分が怒っているのかは分からない。

 そりゃ、エルを傷つけられたのもあるんだろうけど、見知らぬ盗賊相手に何故か俺は怒っていた。


 なんか、納得いかねーんだよ。

 ただ盗賊やってるってだけで殺された人達をみたから。

 そいつらがどんな人かは知らない。


 もしかしたらどうしようも無いほど腐った奴かもしれない。

 でも、殺すことは無いんじゃないか?


 俺がそいつらを庇う理由なんてない。

 でも理屈でどうのじゃなくて、本能的に、許せない部分が確かにあった。

 そして、不思議と自分が間違っているとは微塵も思わなかった。


「殺す必要はないだと? 何も知らない貴様らに何が分かるッ!!」

 そういった銀髪の目は、殺気と共に強い憎しみの感情も入っているように見えた。

 いや俺そんな人見る目ないし知らんけど。


「奴らは悪だ。排除しなければいけない。そしてそれを邪魔する貴様らも――」

 その瞬間、女が消えた。

 いや違う、移動した!


 狙いは……エルにこっそり近寄ったリードだッ!


「――悪だッ!!」

「な!? ――うわぁぁッ!!」

 リードはあまりの素早さに対処しきれず、レイピアで左腕を斬られた。


「リードッ!」

 エルが叫ぶ。

 くそッ!


 リードに追い打ちを掛けようとする銀髪の後ろ姿が見える。

 俺はその後姿にダガーで攻撃しようとするが、間に合わない!


 ガキン、と。

 リードと銀髪の間で金属同士がぶつかり合う音が鳴り響く。

 間一髪、剣でレイピアを受け止めたようだ。


「ほう、いい反応だ」

「うるさいッ! エルに手を出すなッ!」 

 銀髪は戦いを楽しむように微笑をリードに向ける。

 リードはレイピアとつばずり合いをしたまま睨み付けつつ、目で俺に合図を送る。


 今しかない!

「行けルネッ!」

「あいさー!」

 俺はルネに合図すると同時に銀髪に攻撃を掛ける!


「うらぁぁッ!」

 逆手持ちしたダガーの左手を振る。

 背後から襲ったのに、恐ろしい反応速度で振り向く。

 リードの剣を軽く弾き返した後、レイピアで斬撃を受け止められた。


 やっぱ叫んだのは失敗だったか!?

 その隣をルネが超高速で駆け抜けた。


 傷ついたエルと赤髪不良を助けに行く作戦はなんとか成功だな。

 いや、作戦と呼べたほど計画的じゃなかったけど。


「なかなか頭のいい作戦だが、それでこの私を倒せるとでも?」

「さーてなッ!」

 俺は左ダガーを滑らすようにして離した後、銀髪の背後に回ろうと横に移動するが、

 キィン! と、見えない程速い斬撃が俺を襲った!


 俺はほぼ反射神経で右ダガーをかざしていた為偶然にも攻撃は防げた。

 ただその衝撃が尋常じゃなかった為、俺は思わず仰け反ってしまう。


 そこに必殺の突きが!

 ――かわせ、るかッ!?

 頭が考えるより早く俺は体を動かし、気がつくと左前方に飛び、奇跡的にも攻撃をかわしていた。

 そこにさらなる追撃が!


 ちょ、さすがに死――

「燃えやがれェ! ファイアバレットッ!!」

 ――ななかったようだ……。


 俺の目の前にに4発の炎の弾丸が走り、それは銀髪に向かった。

 多分赤髪不良の攻撃だと思う。


 銀髪は爆発する炎に巻かれたが、その炎の中から出てきた銀髪が無傷なのを見ると、あの一瞬で攻撃を防いだらしい。


 なんという化け物。

 反則級の戦闘力に思わず身震いする。


 俺も目の前の爆発でちょっと火傷したが、命には代えられん。

 俺はとりあえずバックステップで距離をとる。


「さてアーク。こうなってしまった以上仕方ないね……始めるよ」

 リードは剣を構えて俺の隣に来て言った。

 どうやらこの女を倒さないと話が先に進まなそうだ。


「久々に全力出せよ? 加減して倒せるようなヤツじゃねーしな」

 俺は横目でチラリとリードを見て言った。

 妙な高揚感に体が包まれ顔が綻ぶ。


「悪ィが俺も混ぜてもらうぜェ。あのクソ野郎にゃでっけェ借りを作っちまったからなァ」

 そう言って、二丁拳銃を持った赤髪不良も隣に並んだ。


 エルとルネは、恐らくどこかへ逃げているだろう。

 ちなみに負傷していたリードと赤髪不良は、エルの魔法で治癒してもらったようだ。


「フン、小賢しい……。貴様らでは私を倒すことなど……不可能だ!」

 こうして、なんでか俺&リード&赤髪不良VS謎の銀髪女の戦闘が幕を開けるのであった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ