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永遠の時の中で  作者: スピオトフォズ
第十章 全ては己の過ち故に
105/110

第105話「悔しさは、生き残る力へ」

 ベネディは歓喜し、突進してきた。

 俺は杖をぐるぐる振り回しながら特攻するベネディの間を上手くすり抜け背後を取る。


「何!?」

「喰らいやがれ!! クロスエッジ!!」

 俺は一番決めやすい技を選ぶ。


 ……正直、蓄積したダメージがでかすぎて、長くは持ちそうにない……。

 さっきのは完璧虚勢だ。

 でも……こんなふざけた野郎に殺されたレンの為にも……、ここで負けるわけにはいかねぇ!!


「おおっと! 惜しいね」

 ベネディは俺の攻撃に反応し、杖で受け止めた。

 が、その瞬間ダガーの闇の魔素が放たれ、予想外の事にベネディはよろけた。


「うっ、これは……」

「喰らえぇぇぇぇ!!」

 今しかない!

 俺は右ダガーを全力で振る。


 ガキン! と金属音が鳴り、俺はベネディに押し返された。


「うッ……」

「おやおや? 力が出て無いんじゃな~い? さてさて、あと何分立っていられるかなぁ?」

 俺がふらつく様子を楽しみながら見るベネディ。

 くそ……虚勢バレバレじゃねーか。


「うるせぇよ。5分で決着付けてやるよ。もちろんてめーの負けでなッ!!」

「キャハハハハハ!! やってみろっつーのぉぉ!!」

 ベネディは詠唱を始めた。


「深淵なる闇の力よ! 生命を蝕む毒針と化し炸裂せよ! ポイズン――」

 おっとこれってさっきの技じゃね!?

 もう一回くらったらさすがにヤバいしみんなの身がもたねぇ!!


「やらせねぇよ!!」

 俺は部屋の中心で集結する魔力にダガーを投げた!


「あらら、分解されちゃったぁ~」

 ベネディはイタズラが失敗して困ったような表情をする。

 くそ……余裕かよ……。

「今度はこっちの番だ!そろそろ死んどけ!!」

 俺はダガーを拾い、ベネディに突っ込む!

 あいつ……今わざとダガーを拾わせたな……?

 後悔させてやる!


「いいねいいねその揺るぎない気迫! キミ、ホント久々のいい遊び相手だよ!」

 俺はダガーを大きく振りかぶり、今できる最大限の打撃を与える!


「うおおおぉぉッ!」

 だが杖でガードされる。

 俺はガードされた右ダガーを軸に一回転し、女の背後を取り左ダガーで突く!


「な――ぐッ!!」

 当たった!!

 ダガーはベネディの背中に突き刺さり、血をボタボタと垂れ流した。


 ベネディはダガーを振り払い、すかさず杖を乱暴に振る。

 その乱暴さで返って軌道が読めず、左顔面に打撃を加えられた。

 頭に衝撃が走り、視界が揺らぐ、その隙を突かれ、腹に強烈なスイングを喰らう。


「か……はッ!」

 腹の空気が一気に抜けた。

 俺は力が入らず、その場にそのまま倒れた。

 ……意識が……飛ぶかと思った……。


「いてて……、キャハハ、久々に喰らっちゃったわ。キミやっぱ、強いね。でもさぁ、紅蓮の覇王の"戦長"最強のこのあたしに、一瞬でも勝てるとか思っちゃった訳ぇ?」

「ぐッ!!」

 ベネディの杖が俺の脇腹に突き刺さり、みしみしと減り込んでいく。


「キャハハハハ! 愉快愉快!! 苦労して倒した相手をこうやってゴミムシのように眺めるのは最高ねぇ!!」

 くそ……、悔しい……。


「安心しなよ。あんたもその仲間のガキ共も、さっき殺した奴とおんなじ所に送ってやるからさぁ」

 こんなクソ野郎にレンが殺された事が、悔しい……。


「ま、その手負いにしては十分過ぎるぐらいあたしを楽しませてくれたほうさ、誇って良いよ? 地獄でね」

 こんなクソ野郎に勝てない自分が、悔しい……。


「さて、そろそろ逝かせてあげる。バイバイ坊や! キャハハハハ――」

 こんなクソみてぇな運命に抗えない自分が、悔しい……!


 ここで、ここで死ねるかぁぁぁーーッ!!


「――ッ!?」

 ガキン、と火花が散る。

 俺は最後の力を振り絞り、向かってくる杖を弾いた。


「へぇぇ? まだ抵抗出来るんだぁ」

 女の顔がニタリと歪む。

 その表情は歓喜だった。

 どこまで狂ってるんだこの女は……。


「お前にだけは…お前にだけは、死んでも殺されねぇッ!!」

 だが、今の衝撃でダガーを遠くに弾かれてしまった。


 もう、後は無い――はずだった。




「フレイムアローッ!!」

 一筋の赤い閃光が、ベネディに直撃し、爆炎を巻き上げる。


「おおおぉぉ!! 剛撃斧ッ!!」

 大柄な男が突進し、巨大な斧を真上から豪快に振り下ろす。

 床が割れる音が辺りに響き渡り、砂煙で視界が一瞬悪くなる。

 だが、この2人の事は分かった。

 ふう……まさかこのタイミングで登場とはな……。


「ガイス、アイリ……マジ助かった……」

 俺は床に倒れ伏せながらそれだけは2人に伝えた。


「馬鹿野郎、相手は紅蓮の覇王の幹隊長並みだよ? 真正面からやりあうなんて……、よく生きてたもんだ」

 アイリは呆れたような顔をして言った。


「ガハハハハ! こっから先は俺達に任せなッ!」

 ガイスはそう大声で言った。

 ったく……すげぇ頼りに見えるよこいつらが……。

 確かに、色々敵う相手じゃ無かったし、うん、後は頼んだぜ……。


「キャハハハハ!! 疾風の翼の副団長コンビじゃねぇか!! 戦うのは楽しみだけどぉ~、こいつを貰ってからだよねぇ?」

 ――え?


「ぐ……お前……っ!」

 俺の背後にいつの間にか女が立ち、俺の首を掴んで締め上げた。


「アーク!!」

「テメェ!! 人質取ろうってのか!?」

 アイリとガイスが威嚇する。


「いやいや? それじゃつまんないじゃん。でも情報盤取らないと団長に怒られちゃうからねぇ。こうするのさッ!!」

 え?

 ベネディは俺をそのまま放り投げ、俺は窓ガラスを突き破り大空へダイブした。


 嘘!?

 うわぁぁぁぁぁぁ!!

 眼下には――紅蓮の覇王の船!?


 俺はルネじゃあるまいし重力に逆らえずそのまま敵船へと一直線に落下してゆくのだった。


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