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永遠の時の中で  作者: スピオトフォズ
第十章 全ては己の過ち故に
104/110

第104話「劣勢への抗い」


前回のあらすじ……。


担当:アーク・シュナイザー

ハリス達に護ってもらってると考えると、どうにも悪い気がした。

そんな俺に逆に感謝してると言ってきた、盗賊団の1人、レン・ハミルトン。

そいつに護りたいものはあるかと聞かれて、俺は答えに詰まった。

そして、護りたい誓いとは何か、俺がレンに聞こうとしたその時。


闇属性の魔法が炸裂し、レンガ……死んだ。

殺したのは不気味な女。

やたらテンションの高い口調で話しかけてくる。


許さない……俺は女にダガーを向けた。



――――



「く……うおおおおぉぉぉ!!」

 俺は動かない体を気合いで動かし、ベネディへと突撃する。


「暗黒の意志よ! 漆黒の魔弾となりて、我が意のままに射出せよ! ダークスティンガー!!」

 ベネディがジャラジャラした杖を振ると、そこから1つの黒く細長い影が高速で放たれた。


「だぁぁッ!!」

 俺はそれを“魔法を吸収する”特製のあるダガーで切り裂いた。

 切り裂かれた影は、右ダガーに吸収され、ダガーに黒いオーラが纏わりつく。


「ッ……へぇ? なかなか面白い武器持ってんじゃん! ……まあ興味は無いけどね!!」

 ベネディは一瞬こそ驚いたが、まるで気にせず楽しそうに笑い、再び詠唱し今度は4つの黒弾を放つ。


「――ダークスティンガーッ!!」

「このぉぉッ!」

 俺は向かってくる黒弾を斬る。

 1つめは右手で、2つ目は左手で。

 だが、反応が追い付かず、右腕と胸に直撃を喰らった。


「ぐ……はッ……」

 傷は大したもんじゃない……でも、体が――。

 くそ、これじゃ幾ら吸収したって攻撃する暇がない。


「オイオイ、敵はアーク1人じゃないぜェ!? サンダーバレット!!」

「灼熱の炎よ! 我が手に宿り自在に姿を変えよ! トリッキーファイア!!」


 俺が腹を押さえながらかろうじて立っていると、両脇から攻撃が放たれた。

 ジャミルの雷の矢と、リナの炎のムチがベネディを襲う。


「キャハハハハ! 駄目駄目! ――全てを無効化する暗黒の異空間よ! 今ここに姿を現し我が盾となれ!! ブラックホール!!」

 ベネディが手をかざすと、そこには小さな真っ黒い"穴"があらわれ、ジャミルとリナの攻撃はその穴に吸い込まれていった。


「なッ……!」

「オイオイ……そりゃ反則だろうが……」

 2人は唖然としていた。

 2人とも、見るからに体力の限界だ……。


 くそ……俺も体が重い……!

 あの闇属性魔法のせいか!!


「……遠距離組が駄目なら……あたしの攻撃はどうだッ!!突撃脚!!」

 ルネはブーツの力で一気に接近し、飛び蹴りを掛ける。


「ち!」

 ルネの攻撃を左腕でガードしながら、右手に握った杖を振り牽制するベネディ。


「くらええぇぇッ! エクスエッジッ!」

 俺もたたみかける為X字にダガーを同時に振る。

 威力は左右ダガーの黒いオーラで上がっている筈だ!


「ふん! そんなよろよろの攻撃で、あたしが倒れるとでも思っちゃった~?」

 だが、ベネディは俺の攻撃を軽く避け、長い杖で腹に一撃かます。


「うぐッ!」

 くの字に体が折れ曲がり、そのままその場に倒れた。

 ぐ……やべぇ……意識が……。


「アーク! この野郎ォォッ!」

 ジャミルは接近し、至近距離でベネディを炎弾で狙う。


「無駄無駄! そぉら!」

 その攻撃をひょいっと避け、カウンターで一撃入れる。


「ぐあッ……ちくしょう……」

 ばたり、とジャミルが倒れた。


「紅蓮の……炎よ、……フレイムブラスト!!」

 その隙を見て、リナが四つの炎球をまっすぐベネディに放つ。

 毒で体力を失い続け、声がかすれていた。


「キャハハハ、ひょいっと!」

 しかしそれすら、まるで遊ぶかのように笑いつつ宙返りでかわす。

 外した炎球は、艦橋の窓ガラスに当たり爆発を起こして突き破る。


「(アーク!)」

「(分かってる!)」

 俺はルネと無言でうなづき、直後に挟み打ちを掛けた。

 ベネディの左右から一気に攻める!


「旋風脚ッ!」

「エクスエッジッ!」

 同時に攻める!


「無~駄無駄ぁ!!」

 ベネディは、俺の斬撃とルネの回し蹴りを右スライドでかわすと同時に、ルネの背後へ回る。


「うぁッ!」

 背中を長い杖で打撃され、短い悲鳴を上げながら倒れるルネ。

 そしてその打撃が俺に向く。


 縦に振り下ろされる打撃を、俺は辛うじて受け止めた。


「くッ……!」

「おやおやどうしたぁ? キミの力はそんなもんなのか~い? ほぉら!」

 全力で左右ダガーで押えこんでいたが、ベネディはそれをあっさり打ち破って防御を崩してきた。

 駄目だ……、もう正直、体全体に力が入らない。


「フレイムブラストッ……!」

 追い打ちが迫る俺に、リナの援護が入った。


「ちっ、キミちょっとうるさいねぇ。邪悪なる力よ――ダークブラスト!」

 四つの闇の球体がリナに迫った。

 ブラスト系統の下級魔法だが、今のリナに見きれる力は残って居なかった。


「きゃあぁ!!」

 攻撃は四つとも直撃し、リナは力なく地面に投げ出されて、動かなくなった。


「リナ……! くそッ!!」

 駄目だ、俺も体力が持たない。

 まるで貧血のように、クラっときたかと思うと、壁に寄りかかっていた。

 

「はぁ……はぁ……アーク、ヤバくない? このままじゃ……」

 ルネも片膝をついていて、とても激しい戦闘が出来る様子は無い。

 今意識があるのは、俺ともうルネだけだ。


「くそ、分かってる、分かってるけど!」

 俺は腹を押さえながら何とか意識を保つ。

 だが、もう既に敵に刃を向ける体力は、ない。


 もう俺には、どうする事も出来ないのかよ、クソッ!


「キャハハハハ!! 何何? もう終わり? つまんな~い! つまんないから手始めにキミ死んでみて~!! 深淵なる闇の力よ! 生命を蝕む毒針と化し炸裂せよ! ポイズンクラッシュ!!」

 ルネの前で、闇の魔力が集中する!


「う……、か、体が……」

 ルネは倒れないようにするのがやっとで、避けられない!!

 あんな至近距離じゃ……ルネが死ぬ!


「この……、くそぉぉぉッ!! させるかぁぁぁぁッ!!」

 闇の魔力が炸裂し、そこから出る無数の棘がルネを襲う!

 俺はほとんど最後の力を振り絞り、床を踏み抜く勢いで駆けだす。

 

 とたんにめまいが起こり、バランスを崩して倒れそうになるが、それでも前へと進んだ。

 二本のダガーを前面に押し出し、ルネの前へ庇うように立ちふさがる。


 そこに、無数の棘がぶつかった。


「うぁぁッ!!」

「がはぁッ!!」

 棘の直撃は、辛うじてダガーで防いだものの、かすった傷跡に闇属性が浸透し、再び俺達の体力を奪いだす。

 直後、俺達二人は同時に床へ倒れた。


「ルネ……生き……てるか」

 このままじゃ……まずい。

 俺は辛うじて声をひねり出す。


「なん……とか、ね……」

 ルネは救えた。

 だが、これじゃ何も出来ない。

 体が言う事を聞かず、呼吸がだんだん苦しくなって来た。


 酷いめまいと頭痛、吐き気や全身の痛みで気が狂いそうになる。

 それでも、俺はここで負けるわけにはいかなかった。


 くそ……この魔法さえ何とか出来れば……。

 ん? 魔法……?


 ――そうだッ!! まだ手はあるッ!


 俺は、ダガーを強く握ると、倒れたまま右手で自分の左腕を刺した。


「うぅッ!」

 激しい痛みが体を襲った。

 残りの力を振り絞って刺したので、刃渡りの中間以上深く刺さっている。

 血が溢れるように滴り落ち、床に赤い染みを幾つも作った。


「んん? キャハハハハハ!! 何何? 自害? ボコボコにされて遂に狂っちゃった感じぃ?」

 ベネディは俺の様子を楽しそうに笑う。

 だが――。


「誰が狂ったって? 頭狂ってんのはお前の方だろ。人何人も殺しといてヘラヘラと……調子乗ってんじゃねぇぞ」

 俺は、再び立ち上がった。

 体が軽い――とは言えないが、さっきよりは随分マシだ。

 

「――ッ!? はぁぁ!? なんで普通に立ち上がってんのよ!? あんたの体には毒が……」

 形勢逆転。

 女は俺が起き上がった事に動揺を隠せないでいた。


 そこに、さっきまでの余裕は無かった。


「このダガー、“魔法を吸収する”特性がある。それを体に刺せば、どうなるか分かるよな?」

 俺はニヤリと余裕の笑みを見せてみる。


「そうか……ソイツで体内の毒を吸収したってワケかい……キャハハハハハ!!」

 面食らったかと思ったらいきなり笑いだした。


 はっ! こいつもホント、ザイルと同じ戦闘狂だな!

 頭ん中が完全にぶっ飛んでやがる!


「いいねいいね! 面白すぎるよキミ!! さあ!! もっとこのあたしを楽しませろぉぉぉ!!」

「上等だよ! 二度とそうやってヘラヘラ笑えないようにしてやる!!」

 

 俺達は再び、激突した。





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