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永遠の時の中で  作者: スピオトフォズ
第十章 全ては己の過ち故に
103/110

第103話「身を滅ぼすは、噴怒と憎悪」


前回のあらすじ……。


担当:ハリス・ローレンス

俺は紅蓮の覇王の戦長、アストと対峙した。

奴さんの武器はどうやらガトリング砲型の身体変形兵器フォースレイズらしい。


さすが紅蓮の覇王の戦長を務めているだけあってなかなかに手強い。

だが、こいつはオツムは弱いらしく、多少頭を使えば簡単に倒せた。

とはいえ、俺も久々の手傷を負ったが。


そんななか予想外の登場を見せたのは第弐艦隊、幹隊長であるクリスフォード。

こいつはヤバいな……、しかも狙いはアークだ。

まずいぜ……、恐らくアークの元にも戦長クラスの敵が向かったハズだ……。


クリスフォード相手では俺も危うい……この危機、どう乗り切るか……。



――――



「ウガァァァァ!! やっぱ俺も下行って来る!!」

「駄目だってばぁぁ!! あたし達情報盤持ってるんだから、こっちから勝手に火の中に飛び込んでどうすんの!!」

「知るかッ!! 俺だけ行けばいいだろォがァァ!!」 

 はぁ……このやり取りを何度繰り返しただろうか……。


 俺達は現在、ハリスの提案に乗り艦橋で待機中だった。

 艦橋には三人の団員が船を制御する為に残っていた。

 

 だが、さっきから"仲間"が戦っているのを黙って見ているのは性に遭わず、ジャミルはこうして暴走気味だ。

 そして俺も……。


「よし分かった! じゃあ情報盤はリナに預けるから、俺とジャミルで援護しに行く!」

「却下、アタシ達だけだと万が一敵が来た時不安」

「そうだよ!! か弱い乙女2人置いていくとかあんたらどんだけ無慈悲で残酷で人でなしなのよ~!」

 ……とこの通り、見事に男性陣と女性陣で意見が分かている。


 くっそ……俺もジャミルと同意見だ。

 正直、下でこの情報盤の為の戦いが繰り広げられてて、俺らはタダ何もせず待ってるだけって納得できねぇ!!


「オイ、アーク、俺が銃乱射して女2人の注意をそらすから、テメェはその隙に甲板へ……」

「いややんねぇよ!? 殆ど仲間割れじゃねぇか! ここで新たな戦い繰り広げてどうする気なんだよ!」


「チッ……いやァ、タダの冗談だってェ! さすがの俺でもそりゃねェぜ」

「いや今舌打ちしたよな!! やる気満々だったよねお前!!」

 くそう……こんな漫才みてぇな事しかできないなんて……ホント、なんだか情けないような気分になって来る……。

 だいたいなんだよ紅蓮の覇王っつーのは、こんな薄っぺらい円盤めがけてこんなに大挙してきますか。


 ったく、これがあの遺跡から出てきたっつーことも知らねー癖に……。

 いや……もしかしてそこまで知ってたり?

 ……と言うかこの噂自体、出元がどこだかわからんし考えても仕方ないな。


「とにかく、今はここで4人で固まってる事が一番。下手に離れるとここに敵が来た時厄介」

 リナはジャミルとの口論の末結局そう纏めた。


「アークさん。そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。我ら疾風の翼は、これしきの事で崩れたりはしませんから」

 操縦席に座っていた団員の1人が、こちらを向いてさわやかな笑顔で言った。

 疾風の翼のメンバーにしては比較的若い感じの男だった。


 ……なんか気弱そうというか優しそうというか、とても盗賊団には見えない。

 俺と同い年……とはさすがに行かないが、それでも1コか2コ上っぽい。


「まあそうだろうけどさ……なんか悪いじゃん、俺達の為に迷惑掛けてるみたいでさ……」

 さっきから、心に中に気持ち悪い罪悪感が巣食っていてどうにも落ち着かない。


「それは、我等も同じですよ」

「え?」

 困ったような笑顔で、気優しい団員は言った。


「あなた達には、今まで何度も助けてもらいましたからね……団長やみんなも、あなたに感謝していますよ」

「そう……かな。まああれはなんていうか、成り行き上ってのもあってだな……」

 別に疾風の翼を助けようと思った訳じゃ無いんだが……。


「ハハハ、テレないでください」

「うるせえ、つーかさ、年も近そうだし普通に敬語じゃなくていいぞ?」

 年上に敬語使われると……なんかむず痒くて気になっていた。

 あのスコードとか言う奴もだ。


「確かにね。分かったよ」

「ちなみに俺……の名前は知ってると思うから、お前は?」

 いつの間にか有名になっていたみたいでこっちがビックリだよ全く。


「僕は、レン。レン・ハミルトンって言うんだ」

「そっか。レンか……女みたいな名前だな」

 と俺は笑いながら冗談半分で言ってみた。


「……それ、よく言われるよ。僕は気に入ってるけどね」

 よく言われるんかい。

 親のネーミングセンスを一瞬疑ったが、それはさすがに失礼だし、本人が気に入ってるならいい名前なんだろう。


「ハハ、じゃあいいじゃねぇか。じゃあとりあえずよろしくな」

「よろしくね、アーク」

 挨拶と言えば握手!という事で握手をした。

 うん、コイツとは仲良くなれそうだ。


「つーかお前盗賊団って顔じゃねぇよな~……性格も気弱そうだし」

「まあね。だから普段はこうして艦橋で働いてるんだ」


「いや盗賊団は仕事じゃないだろ……お前まさか船舶ギルドと間違えて入ったとかじゃ……」

「さっきから色々と失礼だねアークは……」


「怒ったらな悪い。性分なんだよ。それに、遠慮してたら仲良くはなれないだろ?」

「極論すぎる気がしないでもないけどね」

 なんかこの口調……リードに似たようなものを感じるな。

 俺は案外こういうタイプの人間と相性がいいのか?


「疾風の翼に入団したのはね……誓いを、守る為なんだ」

 レンは上を向きながら、入団について話し始めた。


「誓い?」

「そう。僕は昔、大切な過ちを犯したんだ。それから、長い間自分の犯した罪を反省して、それで行きついた先が……この場所だったんだ」


「そう……なのか」

 抽象的すぎて何がどうなったのか全く理解できないが、その間に大いなる矛盾があると俺は思った。

 だって自分の犯した罪を反省して、ここでまた盗賊という犯罪をやってんだからなぁ。

 

「でもね、このやり方でしか、守れない物もあると思うんだよ」

 その表情は、まるで熟練の剣士が昔を懐かしんだ時のような、そんな顔だった。


 コイツ……年の割にもしかして凄い苦労をしてきたんじゃないだろうか?

 そんな気さえした。

 本当の所は分からんが。


「ふ~ん……そんなもんかね」

「アークには、護りたいもの、ちゃんとある?」

 護りたいもの……?


 情報盤……いやコイツが聞いてるのはそんなものじゃない。

 なんだろう……俺はただ、親父の仇を討ちたい……それと後は流れでここまで来たようなもんだからな……。


 護るどころか……下手したら奪う為に剣振るってるようなもんなんじゃないか?


「いや……今はまだ、分かんねぇや……」

 それだけしか、答えられなかった。

 ……なんか、俺って未だにふらふらしてんのかな。

 確固たる決心が無いというか……。


 親父を失って8年間。

 そして今も、俺はずっと前には進めていないのかもしれない……。


「なあレン、俺は――」

 言った直後だった。



 急に、妙な感覚が襲った。

 一瞬の吐き気というか、鳥肌というか、ぞくっとする、そんな感覚だ。

 俺達は思わず違和感の中心部である艦橋中央から2歩下がった。


 その瞬間だった。

 突然、部屋の中央に真っ黒い塊が出現したと思ったら、その塊から無数のとげが出現し、俺達ごと部屋中を切り裂いた。


「――ッ!!」

 俺は咄嗟に皆をかばう様にしてダガーをその正体不明の物にかざしていた。

 ダガーに棘が当たった瞬間、ダガーに当たった棘は分解された。


 だが、無数に舞った棘を消す事は出来ず、何本かは俺達の体を深く切り裂いた。

 違和感を感じてからわずか1秒足らず、俺達は傷だらけになっていた。


「う……、く、おい、みんな無事か……」

 俺は左足、腹、左腕を棘にやられた。


「なン……とかな」

「おやまあ、生き残りがいるじゃないか! ここに居る奴は全員殺そうと思ってたのに、一体ど~んな魔法を使ったんだ~い?」

 そこに突然姿を現したのは、正体不明の女。

 全身を毒々しい紫色のドレスでつつみ、右手に輪がジャラジャラついてる杖を持っている。


「まあそんな事はどうでもいいさ。さ~て、誰が情報盤持ってるのカナ~?」

 気色の悪い笑みを浮かべながら女はゆっくり迫って来る。

 く……おかしい、なんか体が怪我以上に上手く動かない……どうなってんだ!


「アンタ……、何したの?」

 リナが苦し紛れに立ちながらそう言った。


「いい質問ねぇ~! さっきの魔法は『ポイズンクラッシュ』。当たれば激痛とともにあなたたちの体力を奪っていくわ~! ふふふ、まあ生き残ったのはあなた達だけみたいだけどねぇ~」

 女はやけに楽しそうに説明する。

 ……俺達、だけ――?


「おい……嘘だろ……?」

 俺の目の先には、先ほどまで元気に話していた疾風に翼の団員、レンと二人の団員が血まみれで倒れていた。


「レン、レンッ! 返事をしろよッ!!」

 棘で腹部を貫かれていた。

 目は開いたまま、口からも血を流してぐったりしていた。

 腹部は……直視出来ない。


 どう考えても……もう――。


「キャハハハハハ!! そこにいた団員はみんな死んじゃったみたいねぇ~! かわいそうにねぇ~! 誰がやったのかしら~? キャハハハハ!!」

 女は口に手を添えながら下品に笑いだした。


「テメェ……ふざけてんじゃねぇぞ……ッ!!」

 俺はヤツを睨みつけながら、ダガーを抜いて構えた。

 レンが……死んだ。

 さっきまで笑顔で喋っていたレンが……。

 レンがッ!!


「おお? 何何? 刃向うの? 刃向っちゃうの? キャハハハハハ! お前最ッ高にお馬鹿で面白いねぇ!! お名前なんていうのかしら~?」

「……うるせぇよ」

 ダガーを握る手に力が入る。

 こんな……こんなふざけた奴がレン達を殺したのか?

 こんな馬鹿みたいな奴が、人の命を簡単に握りつぶしたのか?


 ふざけるな。

 そんな、馬鹿げた話があってたまるか。

 

「キャハハハハ! ど~でもいいし~! あ、私はねぇ~、紅蓮の覇王の戦長の1人、ベネディ・ラグランジェよ!」

「アーク、アンタは下がってて、情報盤奪われちゃ話にならない」 

 リナが忠告する。

 だが俺は頭に血が上っていてそんな事はどうでもよかった。


「知るか。レンを殺した代償……コイツに払わせてやる」

 知らず、声が低くなる。

 目の前の馬鹿が一言しゃべる度に、虫唾が走るほどの怒りと憎悪がわき出てくる。


「キャハハハハ! 来なよぉぉ!! もだえ苦しむお前をバカ笑いしながら見送った後、お前の血反吐でこの部屋を真っ赤に染めてやるよぉ~!」

 俺は、動かない身体を無理に動かして戦いを挑んだ。



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