第10話「ちょっとは事前通告して欲しい」
前回のあらすじ……
担当:ジャミル・ハワード
って、なンで俺があらすじなンだァ!?
まァ、いいや……。
俺ァ不覚にも、疾風の翼の船に捕まっちまったァ。
ンで、牢屋っぽいトコで開放されンのをまってたら、妙に天然っぽい女が入って来やがった。
ウゼェ。
死ぬほどウゼェ女だった。
そして、看守が俺らに昼食を持ってきた。
俺ァもうここで何回か食ったから分かるンだが、結構旨かったりする。
ンなどォでもいい事考えてたら、突然看守が殺された。
俺ァ魔狩ギルドの特性上魔物の死体には見慣れていたが、目の前の人間が突然死んで、もう声すら上げられなかった。
そして、その後ろに女が1人。
コイツがやりやがったのかァ……。
俺ァまずいと思ったが、エルって女、さっきたァ別人のようにキレてやがる。
まるで騎士様みてェだな。
とはいえ、俺らは丸腰。
どうすンだよ!
――モルゼスの森――
「駄目よねぇ、最近の盗賊共は、武器兵器とか色気ないものばっかり。もっとこう、金銀財宝とか持ってる盗賊いないのかしらねぇ!」
持っているクナイを人差し指でうまくバランスを取りながら、ぶつぶつと疾風の翼に対しグチを言うルネ。
「あのなぁ……それただの窃盗だろ!!」
俺は思った事を口にして見る。
「違うわよ! ひっどい言い草ねまったく!」
ふん、と俺と逆方向を向き、両腕を組む。
「いやだって! トレジャーハンターではないよな間違いなく! つーかお前ただのコソドロだろ!」
俺は、だんだん怪しくなってきたな~と思いつつこの女の素性を明かすために抗議する。
「いいじゃない! トレジャーをハントしてるんだからトレジャーハンターよっ! なんか文句ある!?」
ルネは一気に振り向いて、身振り手振りを加えて大げさに自己の無実を証明する。
強引だ!
「おいリード、騎士団権限でこいつしょっ引いてくれよ」
こういうときはリードしかいない。
この勘違い犯罪予備軍を何とかしてくれ!!
「まあ……考えとくよ」
リードの野郎は一回はぁ、と頭を抱えて溜息を付いた後、
「それより、君、確か盗賊団の船に侵入したんだよね?」
真面目な顔になってルネにたずねた。
「ええそうよ! どう!? この華麗な侵入テクニッ――」
「だったら、その船まで案内してくれないかい?」
うは、遮った!
ルネの台詞遮って言ったよ!!
案外こいつも強引なとこあるな……。
つーか急がないと船離陸しちまうんじゃないか?
「よし! あたしにまっかせなさぁい!!」
と胸を張るルネの背後には、今まさに浮上した空駆船があった。
「「あぁぁぁーーっ!!」」
俺らは声をそろえてびっくり仰天。
り、離陸したああぁぁぁぁーー!!
悪い予感は当たるって言うけどホントだったんだな……。
「ちょっと、なにこの世の終わりみたいな顔してんのよ」
俺らの顔を見てルネはあきれたような口調で言う。
「いや、後ろ向いてみろ! お前のせいで船が行っちまったんだよ!」
「ん?」
ルネは振り向き、現状を認識した。
「あぁ、大丈夫大丈夫、捕まって!」
なんか余裕そうな表情で両手を俺とリードに伸ばしてくる。
?マークを頭に浮かべながら、俺たちはルネの手をつかむ。
「さぁ、行っくわよ~!!」
ルネがそう叫ぶのと同時に、俺らの体が浮き上がって――。
地面があっという間に遠ざかった!
詳しく説明すると、ルネが勢いよく大地を蹴って、一瞬で飛行中の空駆船と同じ高さまで飛び上がった。
「おいいぃぃぃぃぃぃ!! 飛ぶなら飛ぶって言えよおおぉぉぉぉ!! 心臓止まるかとおもったじゃねぇかぁぁ!!」
やばい、高っ! 恐っ! そして気付いた。
「止まらなかったんだからいいじゃない! 気に食わない事言うと叩き落とすわよ!」
「すんまぇぇぇせん!」
俺らの命は、今の瞬間は手を握ってるルネにかかっているのだと言う事を。
「それで! これからどうするんだい!?」
こんな状況でも冷静さを保てるリードには敬服するぜまったく。
「もちろん……こうするのよっ!!」
ルネはさらに空中で空間を蹴るようにして高度を上げると、そこから斜め下に見える空駆船の側面めがけて一気に急降下した!
「ぎゃああぁぁぁぁーーーーー!!」
「うわああぁぁぁぁーーーーー!!」
俺涙目ぇぇ!
っていうか目の前壁、壁ぇぇぇっ!!!
「たぁぁぁ! 突撃脚ッ!!」
木の砕ける破壊的な効果音と共に、俺達は船内に侵入成功。
そう! そのまま壁を突き破って船内に入ったのだ!
ルネはようやく俺とリードの手を放す。
俺とリードは半ば放心状態で寝転がり、とりあえず異常な鼓動を抑えようとする。
「はい、到着~」
「ばっきゃろぉぉぉい!! 殺す気かてめぇ!!」
俺はガバッと起き上がりながら激しく訴える!
もう、心臓がなんかおかしい!
心拍数ハンパない!
それもこれのこのコソドロ女のせいだ!!
「何よ! 無事侵入出来たんだからいいじゃない!!」
「これのどこが“無事”なんだー! マジで死にかけたぞ!?」
「死ななかったんだからいいじゃない!」
「よくねぇ! それからやる時はやるって言えよ!!」
「2人とも静かに」
リードは静かに怒鳴った。
うお、コイツ平静取り戻すのはえーよ。
そして俺らはようやく状況を理解した。
「随分なごあいさつじゃねぇか兄ちゃん共ォ!」
すみません、囲まれてます。
ひーふーみー、ざっと、20人?
手には、剣、斧、ナイフ、小型の拳銃を持ってる者までいる。
オイオイ飛び道具は反則だろ。
そしてみなさん、壁を壊されたのが大層お怒りだったのか、そうとう殺る気だ……。
「……やるしか、ないね」
リードの声を合図に、俺達は覚悟を決めた。
ずいぶんとドタバタな三人組ですね……いや書いてるの俺ですけど。
さて次回は久々の戦闘!