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第6話 再会の第一声は「馬鹿シリウス」

挿絵(By みてみん)



私は、ビクリとして、耳だけその方向に向けた。

すぐには嗚咽を止められず、何とか目だけを後ろに向ける。


私の目が後ろの人物を捉える前に、その声が近付いてきた。


「大丈夫ですか…?」


私はバッと大きく振り向いた。


そこには、黒いマントを目深にかぶった長身の男性が立っていた。

帽子の陰で顔はほとんど見えないが、口元に大きな傷跡が見える。


私は、残った嗚咽をすすりながら、茫然とした。


「やっぱり、リヒトさんだ…」


男性は、グッとマントの帽子を下ろした。


***********

それは、「見たことのない」青年だった。


背が高く、肩幅は広く、

彫像のように神々しい顔立ち、

薄闇の中でも光り輝く銀色の髪、

思慮深く煌めくアクアマリンの瞳…


声を出そうとして、喉が詰まる。


「リヒトさん…僕のこと、分かりますか…」


青年は、少し悲しそうに尋ねながら、私にゆっくり近づいてくる。

私は、何とか、その名を呼ぼうとしたが…


瞬間に、青年の足がピタリと止まった。顔が青ざめている。

同時に、私も、足のつま先から、彼への憎しみと食欲が黒い粒子のように沸き上がるのを感じた。

彼の血肉の味と匂いが、私の中で充満する。


なぜか青年は「しまった!」と言うなり


「神通力 封殺!」


と詠唱した。


私は、青年に背中を向けて、力の限り走り出した。


「待って!リヒトさん!!」

青年が後を追ってくる。


私は叫んだ。


「ば、馬鹿シリウス!!!!!!

ついてくるな!!!」


理性を失う前に、一秒でも早く、一ミリでも遠くへ、遠くへ…!!!


しかし、私は走りながら、体から憎しみと食欲が消えていることに気付いた。

あっけなく消えていることに驚いて立ち止まると、

息を切らしながら振り返った。


……しかし、青年は追って来ていなかった。


それでも、私は未練がましく立っていたが、いつまで待っても、

再びあの青年は現れなかった。


**************


「ば、馬鹿シリウス!!!!!!

ついてくるな!!!」


シリウスは、「違うんだ!僕は…」と言って追いかけようとしたが、

背後から「大王様!」「こちらでしたか!」という声と共に、

多くの従者と馬が現れた。


シリウスは唇を噛んで、リヒトが去った方向を見やった。


「さあ、お急ぎください。晩餐会がもうすぐ始まります。」


シリウスは一瞬目を閉じ、拳を握りしめたが、くるりと従者たちに向き直り、


「手数を掛けたな。行こう。」


と歩き出し、馬にまたがると、神羊(しんよう)の宮殿に向かって風のように走り出した。



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