表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/18

第5話 一番星の下の、遠い君

挿絵(By みてみん)


「ああ!シリウス様があんなにお美しいなんて!想像もできなかった!」

「左に白馬の大王様、右に黒馬のオスカー様…あんな光景、もう死ぬまで見られないわ…」

「本当に、見られて良かったね!」

「石を投げた奴がいたんだんだけど、

その石、大王様が指を鳴らしたら光の砂になって…もう大喝采だよ。」

「しかし、すごい美男子だったな…眼福眼福!」


皆が興奮しながら帰ってくる。

私は全身を耳にして、ひと言も漏らさないようにしている。


「シーリンも見に行けばよかったのに!」


私はその同僚に言った。


「石を投げられた…って、大王様に反抗的な人達がいるの…?」

「そんなこと聞いたことないよねぇ…」


同僚たちは顔を見合わせて首をかしげる。


「石を投げた奴らを見たけど、この辺りでは見ない顔だったぜ。」


私の胸はキリキリと締め上げられた。


3年前…私がここで働いてからしばらくして知った、クロエ様の死。

詳細は分からないが、あの十二支会議の帰路で、

神猿アダム王と神鶏レン王の目の前で、弓矢で襲われたという。


クロエ様の死が、アダム様に想いを伝えた後だったのか、前だったのかは分からない。

私には、一緒に【覗き】をした、可愛らしい、短い間の友を、

ただ悼むことしかできなかった。


しかし今、その殺意の矛先が、シリウスにも向けられているのか?

クロエ様だって、強力な神通力を持つ神犬だった。

しかも、そばにはアダム様とレン様もいた…それなのに命を失ったのだ。

シリウスなら、大軍を前にしても勝ち抜ける力があるだろう。

それでも…


しかし、こんな風に心配をつのらせても、そばで支えたいと思っても、

猫族(じぶん)の方が余程危険だという事実は、あまりにも虚しかった。


*************

早めに仕事を上がった私は、人気のない丘に足を向けた。


夕暮れの空にオレンジと青の色彩が広がって、一番星が冴え冴え輝いている。


街には色とりどりの光がちらつき、いまだ浮かれている人々が目に浮かぶ。

私は王宮の方を見た。

木々に隠れてほんの少ししか見えない。

それでも、あそこには、今、シリウスがいる。


3年前、シリウスが、ツヴェルフェト大学に迎えに来てくれて、

一番星の下で、馬に乗って、私に伝えてくれたのだ。


「僕は嬉しいです。貴女と共に大神殿に帰ることが。」


その言葉を思い出した瞬間、

あの時と同じように、

私の目から、ボロボロと音がしそうなほどの大きな涙がこぼれ出た。


こらえればこらえるほど、口唇の隙間から嗚咽が漏れる。


私はうつむき、銀のロケットを口にあてて、激しくしゃくり上げた。

鼻から伝う涙で、ロケットが塩からい。


とうとう私は膝をつき、背中を丸めて、泣きじゃくった。


「どうか…この涙を少しでも哀れと思うなら…神様…

シリウスを…お守りください…

シリウスを…シリウスを…

どうか…死なせないで…ください…」


***************

そのとき、


「リヒトさん…」


聞き慣れない、

でも懐かしい、

低くて美しい声が、

ヴェールのように私を包み込んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ