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最終話(附属) 神虎ファリスのため息―シリウス THE GREAT―

レンのイラストに差し替えたver.

挿絵(By みてみん)



「ファリス!ファリス!!早く来い!!!」


大声を上げて走り寄ってきたアダムが、馬鹿力で俺を引っ張る。


「レン、ちょうどいい!お前も来い!」

「おい、もうすぐ閉会の儀だぜ!?」

「また事件ですか!?」

「事件だよ、大事件!!」


俺の言葉はまったく聞かずに、途中で鉢合わせたレンも引っ掴んで、

アダムは一つの部屋に走り込む。


中では、既にロベルト様、オスカーが、ガラス張りのテーブルに軽く腰掛けているシリウス様を囲んでいる。


「また何の事件ですか!?」


生真面目に慌てるレンに、


『朝帰りだ』


ロベルト様、アダム、オスカーの声が重なる。

俺はガッツポーズをした。


「やったか!!!!!」


ヒューヒュー言いながら、俺を含む大の大人4人がハイタッチを繰り返す。


「お前たち、何を騒いでいるんだ?」


シリウス様が呆れたように言う。


「朝帰り…とは、僕が朝までリヒトさんの部屋にいたことか?」

「もちろん…」


と言いかけて、アダムは、ギクリとした様子で問いかける。


「まさか、シリウス様、お嬢さんに手を出してないとか言わ…ない…でしょ?」


「手…?

ああ…出された…リヒトさんに…」


「お嬢さんから!?」


「なんと、積極的…」


「あんな清楚な子から…って」


「エロスですね…」


「エロス…?あれが…?」


シリウス様は(いぶか)しそうに我々を見る。

耐え切れなくなったレンが参入する。


「あれ、というのは…」


シリウス様がそっぽを向いて、


「『馬鹿シリウス』って、頬っぺたを思いきり引っぱたかれた。」


と言うと、


「え?シリウス様、そっちなの?その顔面と肉体で?」


「アダム、顔面と肉体は関係ない。嗜好だ。」


シリウス様の肩を掴むアダムを、ロベルト様がなだめる。


「なあ、細けえことはいいじゃねえか。

ともかく、お嬢さんとシリウス様が、アソコも想いも通じ合ってだな…」


俺が感無量で頷いていると、


「アソコも…想いも…?」


絶世の美青年が、卑猥な言葉を、真面目に、美声で聞き返してくれる。


「ああ、そうか、朝帰りは夜這いと同じ意味なのか…

同じ意味……

…ハアアアアア――――…」


と深いため息をつくなり、閉会の儀のために整えられた美しい銀髪に手を突っ込んで頭を抱え込んだ。


手の隙間から、アクアマリンの瞳を切なそうに煌めかせて。


「通じ合っていない。

アソコも想いも…

結婚の申込みもしていない。

さらに、リヒトさんの気持ちも聞いていない。」


『0点じゃねぇか!!!!!!!!』


大人5人が総出でシリウス様を押し倒して、あらゆる体技をかけまくる。


「お、おい…やめるんだ…僕に手を出していいのは、リヒトさんだけだ!」


「台詞が臭ぇぇぇ―――――!!!」


「このォ奥手鼠がァァァ――――!!!」


「なーにが『大好きです』のサインだァァァ!!!」


「男の紋章ついてねぇのかァァ――?おいィ――!」


「えっ?ついてないんですか?本当に?えっ?」


閉会の儀を前に大乱闘になっている。


「レン、シリウス様にはついてねぇよ!」


「お嬢さんに申し訳も如意棒も立たねぇ!」


「えっ?でも、ありそうですよ!?ココ!!」


「仕方ない、パパが見てあげよう。」


「ついていても木偶の()かもしれませんよ?」


シリウス様は呆れたように声を上げる。


「落ち着け、お前たち。

なんだそんなことで…

見せてやるから、落ち着くんだ。」


ようやく、大の大人5人から抜け出したシリウス様は、

スラリと立ち上がると、手際よく礼服のズボンを脱ぎ始める。


「あ、ちょ…」


「シリウス様…」


「いや…」


「ほんの冗談…」


「えっ…ホントに…」


オロオロとする大人5人を意に介さず、あっさりと全開する。


「どうした?…ほら、脱いだぞ。」


思わず大人5人は、そろって顔を隠す。


「見なくていいのか?」


シリウス様は穏やかに問いかける…これが…天然王子の器!!!


興味には勝てず、5人同時に顔から手を離す。


『!!!!!!!!!!!!!!!』


予想を遥かに上回る逸品に、大の大人5人は言葉を失う。


が、ようやくアダムが呟く。


Sirius(シリウス) the GREAT…」


なぜか真っ赤になったレンが、アダムの頭を引っぱたく。


「なんだ、お前たちは…あんなに騒いでおきながら…」


と呆れ返ったシリウス様は、ズボンを履いて、着衣を整える。


一つ一つの仕草が流れるように早くて、美しい。

襟を正し、勲章の位置を整え…

うっかり大の大人5人が見惚れていると、カフスボタンを留めながら、


「ちゃんと、ついてただろう?」


チラリと流し目で我々を見やる。

我々は、大きく頷く。

話の内容はともかく、仕草はそこら中の女性が気絶するほど様になっている。


オイルを手に回し、銀髪をオールバックに整えているシリウス様に、レンが質問をする。


「どうして…引っぱたかれたんですか…?」


「…命に代えてもリヒトさんと国を守るって言ったら

…馬鹿シリウスって引っぱたかれたんだ。」


「それで、シリウス様はどうしたんです?」


「リヒトさんの手を掴んで…」


『うんうん、いいね』


「リヒトさんは、僕が死ななきゃ守れない国なんか滅べばいい

…って泣いて…」


『お嬢さん…貴女って人は…』


「……おしまいなんだけど…」


『もうイヤァァァァァ――――――――――――!!!!!!!!!!』


大の大人5人は、叫ぶと同時に、我先に扉に向かう。


「ど、どうした?急に…」


「行くんだよ、お嬢さんのとこに!!」


「甘露の涙を吸い尽くしてやりたいね。」


「二人だけの世界に行ってくるよ。」 


「このオスカー、全力で落としに参りましょう。」


「何を、傷を癒し合えることは強みですよ」


「待て待て待て待て…!待て…!」


コンコン!

部屋の外から、閉会の儀が始まることが告げられる。


シリウス様と大の大人5人は、渋々閉会の儀に向かう。


コツ、コツ、コツ…

先頭に立つ大王は、楽器のように美しい足音で歩く。

先ほどの騒ぎが嘘のようだ。


と、歩きながら、シリウス様は我々を少し振り向いた。


「本当に僕は『馬鹿シリウス』なんだな…」


しかし、またすぐに前を向く。


「今夜も燭台で合図するから、ここにいてと言った…

そんな糸じゃ、繋ぎ止められないかもしれないのに…」


閉会の儀が行われるホールの扉に着いた。


シリウス様は胸元から小さな箱を取り出し、額の刻印につけ、小さな声で呟いた。


「僕が穢れていることなんて…」


微かな、微かな声だったが、我々には突き刺さるように耳に入った。


ホールの扉が大きく開いた。


華やかなファンファーレを聞きながら、


「今夜の合図は8回にするか。」と目を細めるシリウス様。


「『い・ま・す・ぐ・あ・い・た・い』ですか?」と俺。


「いや…」


シリウス様は光輝くような微笑みで振り返った。


「今日は、秘密だ!」


そのまま前を向いて歩きだす。


壮麗な儀式と、

大王と、

過去と、

おそらくは素朴な青年の願い。

お嬢さんの涙。


俺には、レッドカーペットを歩くシリウス様が、

血の海を引き回されているように見えた。




(第Ⅱ章「禁忌の竜」 完結)

十二支と神鼠は猫に「こい」(ねここい)第Ⅱ章:禁忌の竜


⇒本話で完結


⇒第Ⅲ章に続く


第Ⅰ章(人生の 最後のページで 見えるもの)⇒ https://ncode.syosetu.com/n5418ls/

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