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僕は嬉しいです、貴女と共に大神殿に帰ることが

挿絵(By みてみん)


シリウスは、私を乗せた馬にまたがると、メアリや館に向けて目礼をした。

私はメアリに小さく手を振る。


と、急にシリウスが後ろから私を抱き締める。


シリウスの大胆さに、喜びで胸が高鳴る。

が…


「神通力」


耳元の声にドキリとした。

振り返ろうとするが、額の刻印で印を結ぶシリウスがチラリと見えるだけだ。


「【封殺(ふうさつ)】」


私の身体に一瞬、光のヴェールが舞い降りる。


すぐにシリウスはスッと左手を天に挙げた。


「神路開放!」


空に出現した巨大な光の渦がシリウスの左手に収束していく。


青い光を発するシリウスを背後に、ただ茫然とし、言葉も出ない。


今、彼が何をしているのか?

何が起ころうとしているのか?


シリウスは、額の刻印に右手を置き、薄目を開けたまま、ピクリとも動かない。


怒涛のように入り込む神通力に耐えて、何かに集中している。


ビリッ ビリッ ビリッ ビリビリッ


天からの力が収束し続ける左手をゆっくりと顔の前に下ろすと、

両手で印を結ぶ。


「神通力」


恐ろしいほどの光を放つ、アクアマリンの瞳を見開く。


「【忘却(ぼうきゃく)】」


瞬時に、蜘蛛の糸のような光が辺り一面に張り巡らされた。


それは、ただ広がっているのではなく、人の頭を縫うようにして張り巡らされている。


バッと横を向くと、メアリの頭にも光の糸が貫いている。


「シリウス!!!!!」


この大王は狂気に堕ちたのか!?


しかし、まばたきをする間に、街は元通りの呼吸と賑わいを取り戻した。


エッと思う間もなく、シリウスは私の頭にフードを深々とかぶせながら、

何事もなかったかのように、馬を走らせ始めた。

気付けば、シリウスもフードを目深にかぶっている。


人々は笑い、犬は走り、子供が転ぶ。

町の日常が滞りなく息づいている。


「リヒトさん。」


いつも通りの穏やかなシリウスの声が背後から聞こえる。


「今、僕への憎悪や食欲がありますか?」


「エッ…あ、ううん…今は全然、大丈夫…」


それを聞くと、シリウスはフッという笑いとも安堵ともつかない吐息をついた。


「ああ、うまくいきました。

それに、案外、僕の疲れもそれほどない。」


「シリウス!私にはまったく分からない!!!」


「ごめんなさい…」


在位10年以上の大王が、子犬のようにショボリとした声を出す。


「僕も貴女も、本当は秘密にすべきことを話し過ぎてしまったので…

街の人とハードウィックの人たちに、僕があの館に行った記憶を忘れさせたんです。」


私は息を飲んだ。


「あと、ハードウィックの人たちには、貴女が馬車でコルデール宮に去ったという記憶を植え込みました。」


シリウスを振り返ると、表情一つ変えずに、穏やかに話している。


「リヒトさんには、もともと僕の神通力は効かないから、全然忘れていないでしょう?

でも、この術は、かなり大きな神通力を使うので、貴女の猫族(フェリス)を呼び起こしてしまう。

だから、先に、貴女の周囲だけ神通力が最小化するように仕掛けをしたんです。」


シリウスは、私のフードに顔を寄せているようだ。

私はこの出来事の規模に、言葉も出ない。


急に、スッとシリウスは私から離れた。


「怖いですか?

…平気でこんな術を使う僕が。」


私は、ドンと、思い切りシリウスに寄りかかって、首を横に振った。

彼の不安が消えるように、なるべく大きく。


「この力を使いこなすために…どれほど努力したの?君は…」


私は、逞しいシリウスの膝にそっと片手を置いた。


「君の3年間を、聞きたいな…」


目深にかぶったフードが風を受けてはためく。


シリウスは、片手で私を抱き締め、その頬を私のフードにすり寄せた。


「僕は嬉しいです……貴女と共に大神殿に帰ることが。」


私は、目を閉じ、唇を噛みしめ、彼の逞しい腕を両手で抱えた。


もう…過去も未来も、考えられない。


今は、この力強さと温もりだけを感じていたい。


************

コルデール宮が間近に迫り、手を振る人々が霞んで見えた。


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