第13話 猫を押し倒した神鼠の 高過ぎる実戦能力
押し倒された私が、はしたなくも悦びに戦慄いた次の瞬間、
シリウスの背中をかすめて、何かが地面に幾つも突き刺さった。
弓矢だ。
シリウスは、私と共に地面に伏したまま、その弓矢を片手で引き抜き、周囲を探っている。
「喋るな。ここにいろ。」
聞き取れるかどうかという低い声で私に言うと、今度は大声を出した。
「何の用だ?」
すると、いかにも人相が悪い5、6人の男が木や岩の陰から出てくる。
リーダー格と見られる男が、
「こんなところで大王様が女と乳繰り合ってるなんざ」
ヒュッ ヒュッ
「ガァッ」
「ゲッ」
リーダー格とその後ろの男の片目に、先ほどの弓矢が刺さっている。
それを見た他の男たちが、ほんの一瞬ひるんだときに、
シリウスは身を低くして一気に走り出し、
狙っていたらしい砂利を両手いっぱいに掴んで、猛然と彼らの顔に投げつける。
「あ゛!!!」
ここで倒れた二人には見向きもせず、残る男たち総出の攻撃を軽々とかわすと、
腰に引っ掛けていた残る弓矢を、的確に彼らの片目に突き刺していく。
最後に、砂利で倒れた男たちが立ち上がろうとしたところを、
シリウスは、強烈な回し蹴りとかかと落としで沈没させた。
…瞬く間の出来事だった。
****************
「おい、君」
シリウスは、回し蹴りで沈没した男の髪を、片手で引き掴んで持ち上げる。
「クロエの殺害に関係しているのか?」
「ハッ…誰がイキッたお坊ちゃんに…」
シリウスは、その片頬にドスッと弓矢を刺した。
「すまない。今は事情があって神通力が使えない。
だから、スマートに質問できないんだ。
悪いが、次は股間だ。」
「クロエ…クロエ様は、俺たちの女王様だ!殺すわけ…あるか!
あんただろう!クロエ様を殺したのは…」
「…笑えるな。君たちと僕、お互いでクロエの敵討ちか?」
シリウスは静かに立ち上がった。
「調査に協力するなら、これ以上罪は問うまい。
傷を癒したら、君たちはもう、君たちのために生きるんだ。
クロエの死は僕が引き取る。
それが大王としての、友人としての、僕の責任だ。」
男たちは完全に戦意喪失した。
*************
この時を見計らっていたようなタイミングで、
遠くから、コルデール衛兵の一隊が、私たちの方向へ駆け向かって来るのが見えた。




