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アンドロイドは異世界の夢を見るか  作者: 獅東 諒
第一章 めぐり逢い編

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第2話 探索者

※本文中の単語、またルビにつきまして、少々特異な使い方をしております。

(単語、ルビの振り間違いではなく、一応法則性があります)

 土壁で囲まれた薄暗い迷宮(ダンジョン)の中。

 僕、リーヴ・スラシルはいま、前後を探索者に挟まれて歩いている。

 前方には、ツバの広いとんがり帽子を被り、赤髪を背中まで伸ばしている魔法使いのノルンさん。

 彼女は、手にしたヴォル()の上部、瘤のようになっている部分に光を灯して辺りを照らしている。

 ノルンさんの隣には彼女を守るようにして、旅団(クラン)ヤールン・スコール(鉄靴)』の統率者(リーダー)であり、守護者(シールダー)ヴィーザルさんが並んでいた。

 重装ヨロイを着込んでいるけれどいまは冑の面頬(めんぼう)を上げていてサラサラの金髪が、ワンドからの光を受けてきらめいて見える。

 彼は顔立ちのすっきりとしたハンサムだけど、体格が良くリーダーらしい風格を持っている。


 そんな二人の少し前を、斥候(スカウト)のカリスさんが進んでいた。

 背が低く細身の彼は、注意深く周囲に気を配っていて、その様子がどこか齧歯類めいている。

 彼らの後ろを戦士(ウォリアー)のバルザックさんが続いている。いかにも戦士といった感じのガッシリとした風貌だ。

 僕は背嚢(ザック)を担いで、彼の後ろを歩いていた。

 ザックはここまでダンジョンを攻略する過程で倒したモンスターが遺(からドロップ)した物品(アイテム)が一杯だ。

 歩くたびに肩帯(ベルト)が擦れて肩が痛い。


「オラオラ! とっとと進めよこのグズがよ!」


 肩の痛みに気をとられて、足元の出っ張りに引っかかってよろめいたら、ドッっ! と、しんがりを務めている猟兵(レンジャー)のガルドさんに尻を蹴り上げられた。


「ウワァッ!」


「ウォッ!? 気を付けろ小僧!」


「グフッ……」


 蹴られた勢いでバルザックさんに寄りかかってしまい、今度は彼からみぞおちに肘打ちを入れられた。

 息が詰まってしまって地面に膝をついた僕は、ゴホゴホと咳き込む。


「まったく……使えない荷物持ち(ポーター)だね。何の能力(スキル)も持ってない君をわざわざ使ってやってるんだから、荷物を運ぶくらいはまともに働いてくれないか」


 ヴィーザルさんが、視線だけをボクに向けて冷たく言い放った。

 ノルンさんはヴィーザルさんの視線に誘導されたようにボクを一瞥したが、感情の色は見えない。

 髪色からの印象で活発な印象を受けるけど、彼女は口数の少ない物静かな人なので何を思っているのかは分からない。


 僕たちの住む大陸はエクスと呼ばれる。

 エクスという言葉は『裁定』という意味を持っていて、このエクス(裁定の)大陸ではレグラ(秩序)混沌(カオス)。この二つの勢力が争うことで、100年周期でどちらの勢力が、世界を支配する神に優遇されるのかが定められる。

 この大陸に生まれた人間は年齢13歳になると洗礼を受けるのだけれど、そこでスキルが発現した人間は否応なしに探索者にならなければならない。

 しかしスキルが発現しなかった僕のような人間は、探索者のフォローをする人間。すなわち社会活動を維持する側に回ることになる。


 スキルを持たない僕は、このクランに所属はしているけど、探索者とは認められていない。

 あくまでも探索者の支援(フォロー)をする雑用係で、このダンジョン攻略でも、露営(ビバーク)の設営や食事の準備などは僕の仕事になっている。

 僕に出来る限りのことは精一杯しているつもりだけど。それでも彼らにこのような冷たい態度で接っしられると、悔しさよりも哀しい気持ちがわき上がってくる。

 でも、こんな扱いを受けても、僕にはどうしてもこのクランに居たい理由がある。


「皆さん。ユミルくん(ポーター)がいるおかげで、より多くのアイテムを持ち帰れるのですから、邪険にしては可哀想です。それにまだ、彼にはスキルを発現する可能性があるのですから」


 隣を歩いていた聖職者(クレリック)のアメイさんが、蹲って俯いている僕の背中を優しくさすってくれる。腰まである長い金髪が、かがんだことでふわりと広がって僕の頬を優しく撫でた。

 そうなのだ。アメイさんの言葉とおり僅かではあるけれど、成人する年齢15歳までにスキルが発現した例がある。

 そして13歳以降にスキルが発現した人間は皆、ダンジョンに挑戦することを諦めなかった人間なのだ。

 彼女は僕と同じ村の出身で、探索者への道を諦めきれなかった僕が、このクランに入れるように力を貸してくれた恩人でもある。

 ヴァルハラ(探索者ギルド)で、『無能力者(能無し)を、受け入れる物好きなんぞいねえよ!』と様々なクランから入団を断られまくっていた僕は、偶然彼女と再会したことで、この『ヤールン・スコール(鉄靴)』に受け入れてもらえたのだ。


「大丈夫? ユミルくん。多分この階層が迷宮の最下層だから、みんな殺気立っているのよ。ゆるしてあげてね」


「あっ、ありがとうございますアメイさん」


 このクランでただ一人、彼女が僕の味方でいてくれるおかげで、気持ちが底まで沈み込まずにいられる。


「辺村の聖女様はお優しいこった。その若さでツバメでも飼うつもりかよ」


 カリスさんがにやけた顔で吐き捨てる。

 辺村の聖女とはアメイさんのあだ名で、彼女は洗礼を受けたときに、普通は一つのスキルが発現するのでさえ珍しいのに、傷の癒やしと死霊を鎮める二つのスキルを発現しことでそのように呼ばれるようになった。


「そんなんじゃありません! ユミルくんのお姉さんから頼まれているんです。カリスさんだってランティさんからお願いされたら断れないでしょ!」


 ランティさんとは、たしかカリスさんの師匠に当たる人だ。

 そして僕の姉はアメイさんにとって、ある意味姉的な立ち位置だったと思う。


「ウヘ、それを言われちまうと言い返せねえ。オッと、おぅ、ここだ――間違いない。ヴィーザル! ここだぜ、ボス部屋」


 そこはこれまで通ってきた通路よりも広くなっていて、先の方に特徴的な飾りの付いた大きな扉が有った。

 それを目ざとく見付けたカリスさんは、僕たちを手振りで止まるように示して慎重に前進していった。

 彼は周囲に罠が無いか確かめるとこちらに振り向いた。

 

「よし、罠は無い。大丈夫だぜ」


「ここは境界から遙かに遠いダンジョンだぜ。そこまで慎重にならなくても大丈夫だろ」


 僕の後ろにいるガルドさんが掛けた声は少し呆れた感じだ。

 そう、いま攻略しているダンジョンは僕たちが属しているレグラ(秩序)の勢力圏深くにある。

 迷宮は対立している混沌(カオス)の勢力圏に近づくほどに危険なものになるらしい。

 前回の裁定ではレグラ(秩序)が敗北したことで、混沌(カオス)の勢力圏の方が広くなっている。それで今回の裁定は、僕たちの勢力には不利な状況になっているけど。それでもニブルヘイム(第8階位)のクランが攻略できるダンジョンはまだまだ低階級(ランク)なものだ。

 

「ガルド。その油断、命取りになるぜ。ダンジョンに湧くモンスターのレベルは低くとも、罠や毒は致命傷になるんだからな」


 カリスさんはたしなめるように言った。


「そうだ、慎重になって悪いことはない。だがここが低レベルの迷宮である事もまた事実だ。さっさとボスを倒して新たなスキルを頂こうじゃないか」


「ここのスキルが手に入れば、最低でもクランの所持スキルが20になるのか。クランランクが上がるじゃねえか」


 ヴィーザルさんの宣言にたいして、バルザックさんが少し高揚したようすで破顔した。

 彼が何故こんな反応をしているかというと、この世界――いやこの大陸はスキル至上主義だからだ。

 何しろ神による優遇を受ける100年周期の裁定。その結果を左右するのが、裁定の時により多くスキルを持っている陣営が勝者となるから。


「そう! それにこれで新たなヘイム(領域)のダンジョン攻略権が手に入るというわけだ」


 ヴィーザルさんは演説でもしているように、得意顔で皆に笑顔を向けた。

 クランランクは、クラン員の持つスキルの総数によって決まる。スキル所持数が20を超えるとニブルヘイム(第7階位)のダンジョンを攻略できるのだ。


「みなさん。まだボスがどんな魔物かも分かていないのですよ。気を引き締めてくださいな」


「……そう。早くボスを倒して帰りたい……」


 浮かれ気味な男性陣に対して、アメイさんとノルンさんは少し厳しい視線を向けている。


「確かに女性陣の言うとおりだね。……それでは行こうか」


 ヴィーザルさんはアメイさんとノルンさんに向けて笑顔を向けると、その表情を引き締めて扉の正面に立った。

 ボス部屋の扉をギギギィギィィィ……と、カリスさんとバルザックさんが扉を開いてゆく。

 扉が開ききる前に、ヴィーザルさんは思い出したように軽く首を捻って僕を横目で見た。


「ああ、ポーターくんはくれぐれも足手まといにならないようにしてくれたまえ」


 彼の視線には他のクラン員に見せる温かさは無く、地面に転がる価値の無い石粒でも見るような、そんな空虚なものだった。

お読みいただきありがとうございます。


お気に入りいただけましたら、星評価やリアクション、感想などいただけますと、書き手としてモチベーションが上がりますのでよろしくお願いいたします。


Copyright(C)2025 獅東 諒

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