第24話 — 首都の門を叩く
「影に酔い、誇りに溺れ、
笑い声は路地に響く。」
カタツムリは、穴だらけの道でも揺るがず進んでいた。
「わざとその穴に入っただろ、コボロ!」クロカゼが叫び、荷物を盾のように抱えた。「もう十日もこの荷車に揺られてるのに、十年経った気分だ!」
ハイクモは静かに横へ滑り、穏やかに詠んだ。
「永遠の穴/忍者は尽きず/道は罰する」
ルミは髪を整えながら微笑んだ。
「でも穏やかな旅でしたね…カタツムリは優しいし、太陽も私たちを導いてくれました。」
コボロは片方の口角を上げて笑った。
「お前を殺すなら、穴なんていらねぇ。薪を切らせれば十分だ。」
道の景色が変わり始めた。遠くに旗が揺れ、隊商が行き交い、衛兵たちが規律正しく巡回していた。
「ほら見ろ、道にまでルールができやがった。」クロカゼはぼやいた。「そのうち忍者が息するだけで罰金だな。」
ハイクモは低く呟いた。
「首都目覚め/秩序は混沌を呑み/歩み揃う」
ルミは目を輝かせて言った。
「人々の声が…なんだか温かいですね。」
首都の門は威厳を放ち、旗が翻り、衛兵たちは舞のように整列していた。ひとりの衛兵がコボロを見つけ、眉をひそめて近づいてきた。手には帳簿。
「おや、商人コボロじゃないか。税は持ってきたか?」
コボロはフードを整え、落ち着いた声で答えた。
「もちろん。ここにある。」
衛兵は袋を受け取り、重さを確かめてから荷車へ視線を移した。
「で、中身は?」
コボロは即答した。
「薪、荷物…そして三つの厄介者だ。」
衛兵の視線はルミへ移り、彼女は柔らかく微笑んだ。
「混沌の中の光のようだな。ようこそ。」
次にハイクモへ目をやる。荷車の隅でぬるりと動く姿に首を傾げた。
「そいつは…お前のペットか?」
ルミは嬉しそうに答えた。
「彼は私の友達です。」
ハイクモは静かに詠んだ。
「門は威厳/衛兵はペットと呼ぶ/誇りは滑る」
衛兵は笑ったが、クロカゼを見ると眉を吊り上げた。
「で、そっちは何だ?冒険者というより、騒がしい獣にしか見えんが。」
コボロはすかさず言った。
「こいつは俺の“文句カラス”だ。鳴き止むことはない。」
クロカゼは真っ赤になって爆発した。
「カラスだと!?俺をカラス呼ばわりか、この野郎!」
衛兵は眉をひそめ、騒ぎに困惑した。
「…カラスでも忍者でも、どっちでもいい。ただ首都の中で問題を起こすな。」
クロカゼは地面を蹴りながらぶつぶつ言った。
「問題を見せてやるよ!このカタツムリが広場で爆発したらな!」
ハイクモは門を祝福するかのように滑り出し、静かに詠んだ。
「門は開き/忍者はカラスに/混沌渡る」
荷車は首都の広い通りを軋ませながら進み、カタツムリは穏やかに前へ進んでいた。コボロはフードを直し、仲間を見ずに言った。
「まず商人ギルドに寄る。その後は宿を案内してやる…騒がしい奴には厩舎を見せてやる。」
クロカゼは飛び上がり、憤慨した。
「厩舎だと!?俺は馬でも荷物運びでもねぇ!敬え、この野郎!」
ハイクモはいつものように静かに滑り寄り、詠んだ。
「絶えぬ騒ぎ/荷車は静かに進み/行き先は穴」
ルミは微笑み、なだめるように言った。
「でも厩舎は広いですし…柔らかい干し草もあります。きっと快適ですよ。」
「快適だと!?反芻する牛の隣で寝ろってか!拷問だろ!」
その瞬間、荷車は深い穴に差しかかった。カタツムリが「ぷふっ」と大きく揺れ、立ったまま身振りをしていたクロカゼはバランスを失った。
「うわああああ!」と叫び、荷車から転げ落ちて通りを転がった。
コボロは振り返りもせずに言った。
「ほらな。もう地面で寝る練習してるじゃねぇか。」
ハイクモは別れのように静かに呟いた。
「突然の落下/通りは硬き寝床/混沌続く」
荷車はそのまま進んでいったが、物語はクロカゼに残された。彼は道に倒れ、埃まみれになりながら世界を呪い、穴と荷車と運命に復讐を誓った。
クロカゼは嗚咽混じりの声を漏らしつつも、苛立ちを隠さず地面に寝転んでいた。通りかかった荷車は彼を軽蔑するように避け、乗客たちは怒鳴った。
「道からどけ、酔っ払い!真ん中で寝るなんて恥さらしだ!」
クロカゼは目を見開き、怒りに震えた。地面から石を拾い、力いっぱい投げつけた。石は荷車の車輪に当たり、跳ね返って隣の果物屋台にいたイノシシ商人の頭に直撃した。
「アアアアア!」イノシシは絶叫し、リンゴや洋梨を地面にぶちまけた。
荷車はその瞬間に止まり、御者が横からクロカゼを睨みつけた。イノシシも立ち上がり、鼻息を荒くした。
クロカゼは二人を交互に見つめ、まるで追い詰められた獣のようだった。怒りが膨れ上がり、彼は必死に路地へと駆け出した。
息を切らしながら狭い路地にたどり着き、壁に背を預けて呻いた。
「くそっ…みんな俺の敵だ!御者も、イノシシも、石まで俺を裏切る!」
深く息を吸い、次第に声の調子が変わった。周囲の影を見渡し、誇らしげに呟いた。
「そうだ…ここが俺の居場所だ。陽の下じゃない、馬鹿どもで溢れる通りでもない。影の中こそ、俺が支配者だ。」
姿勢を正し、舞台に立つかのように歩き出す。
「俺は倒れてなんかいない。隠れただけだ。逃げたんじゃない。選んだんだ。俺は影でできている。俺は沈黙、俺は闇だ。」
世界を無視し、さらに昂ぶって笑みを浮かべた。
「昼の光なんて知るか!誰にも見えない場所を歩く。俺は路地を徘徊する恐怖だ。俺は…俺は奴らには決して理解されない存在だ!」
彼は誇りに満ちて路地を進み、頭の中だけで勝ち取った戦いに酔いしれていた。
クロカゼは自分を伝説のように呟きながら歩き続けた。
「俺は影、俺は沈黙、俺は――」
突然、足がもつれた。文句を爆発させようとしたが、地面に横たわるものを見て言葉を失った。そこには樽を抱えたまま眠るドワーフがいた。世界など存在しないかのように、重い寝息を立てていた。
クロカゼはしばし沈黙した。
「通りで眠ってるだけなのに…俺よりずっと誇り高く見える。」と呟き、膨れ上がった自尊心を飲み込んだ。
路地を抜けようとしたその時、笑い声が響いた。貴族が現れ、二人のエルフを抱き寄せながら、まるで舞台の主役のように歩いてきた。彼は大声で笑い、指輪と金歯を誇示していた。
「見たか?あの愚か者、通りで寝てやがる!」貴族は言った。「捕まえれば俺の奴隷にしてやるのに。」
クロカゼはフードを深くかぶり、両手で顔を覆いながら怯えたように呟いた。
「見るな…俺を見るな…」
貴族は立ち止まり、鼻を鳴らして軽蔑の声を上げた。
「この臭いは何だ?下層の匂いか…平民か?俺の道を塞ぐとは何様だ!」
クロカゼは憤り、深く息を吸って呟いた。
「…もうどうでもいい。」
彼はフードを直し、クナイを抜いて構えを取った。貴族は驚いて後退した。
「衛兵!こいつを捕らえろ!」
影から四人の姿が現れた。前に二人、後ろに二人。忍者たちが音もなくクロカゼを囲んだ。
クロカゼは目を見開き、貴族以上に怯えた。
「うわああああ!」
絶望的な衝動で彼は隠密を発動した。体は透明になり、両手で口を塞ぎ、獣のように四つん這いで忍者たちの間を這い進んだ。
忍者たちは周囲を見回し、困惑していた。貴族は怒鳴り、エルフたちは芝居がかった悲鳴を上げた。だがクロカゼはすでに離れていた。見えぬ姿で、名誉もなく路地を這いずり回る――影のようでありながら、ただ惨めな影だった。
クロカゼは路地を抜け、まだ息を荒げ、心臓の鼓動が足音よりも大きく響いていた。ようやく影から出ると、フードを整え、息を整えながら自分に呟いた。
「くそったれな貴族…くそったれな路地…くそったれな世界全部だ。」




