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The Sword That Hates Me (But Is Better Than Me)  作者: 神谷嶺心
第1章 カエルとタロン──予言か、呪いか?
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第12話 — 枕にまで裁かれた日

「世界が俺に敵対してるわけじゃない。 ただ、ユーモアのセンスが……かなり特殊なだけだ。」



カエルは、まるで鎖を引きずるように足を運んでいた。 サーロンは鞘の中でギシギシと鳴り、金属よりも怒りの振動が強かった。


「もう二度とだ」 カエルは遠慮なく吐き捨てた。 「パーティー任務なんて、もう二度とやらん」


「はいはい。素晴らしい計画だね。さすがだよ」 サーロンがチリンと鳴った。 「君は伝説の英雄、決断の天才。最初からバカな案だって誰もが分かってたのにね?」


二人は中央広場を避け、裏通りを抜けていく。 まるで借金を踏み倒す逃亡者のように。 ただし、今回の借りは――感情的なものだった。


角を曲がり、さらにもう一つの路地へ。 そして、そこにいた。

まただ。


あのドワーフ。


同じ場所。 同じ樽。 同じ、湿ったリズムのいびきに包まれた惨めな人生。


樽に腕を組み、自分の破滅を抱きしめるような姿。


カエルは一瞥をくれただけだった。 驚きも、哀れみも、判断もない。 ただ、馬鹿げた日常に慣れた者の短いため息だけ。


もちろん、サーロンは黙っていなかった。


「こいつの方が、君より人生うまくいってるって考えると……笑えるよな」 刃が擦れるような声で、サーロンは震えた。


二人は歩き続ける。 街の裏側、汚れた壁の間に足音が響く。


小さな花壇を通り抜ける。 ……いや、正直言って、あれはただの雑な浅い墓にしか見えなかった。


かつて何もなかった場所に、今は“何も”が積み重なっていた。


破れた袋。 形を失った箱。 誰も覚えていない時代の、色褪せたラベル付きの割れた瓶。


かつて木だったかもしれない――いや、ただの悲しい“木の概念”だったかもしれない――その近くで、ネズミが時間をかじっていた。 文字通り。


錆びた時計の針の間を嗅ぎ回っていた。


チクタクの音が、何よりも恋しかった。


そして、上空には二つの目。


黄色い目。 じっとした目。


フクロウだけが、罪に問われずに持てるような視線。


鋭く、静かで、街の腐敗を見守る観察者。


街は、息をしていた。 息苦しく、死にかけながらも、死ぬことを拒むように。


その中で、カエルとサーロンは、すべてを憎む老人のように言い争っていた。 自分自身さえも含めて。


「言っただろ」 サーロンが切り込む。 「言ったのに。なのに君は“太陽の光”を信じた。光合成の王子様を信じたんだ」


「もういい。議論する気力もない」 カエルは顔をこすった。


地面がきしみ、壁がひび割れ、街は埃を咳き込んだ。


さらに一つ、また一つ通りを越えて―― 行き止まりの路地が現れた。


匂いは変わっていなかった。 湿気も、相変わらず。


そして、そこにあった。 《蛇の目》酒場の外観。


安堵なのか、ただ疲れすぎて何も感じられないのか―― 二人にはもう分からなかった。


扉を押し開ける。


黄色い光。 油と埃と古い葉巻の匂い。


カエルは希望よりも歪んだベンチに身を投げた。 サーロンは鞘の中で揺れ、ギシギシと鳴る。


「ビール……」 カエルは深く息を吸った。 「あと、なんか食えるもの」


タルガは葉巻を口の端に寄せ、目を細め、煙を吐きながら乾いた咳をした。


「食べ物ぉ?」 エプロンを直し、舌打ち。 「コホッ……ここが宴会場だと思ってんのか、坊や?」


眼鏡を直しながら、鼻から滑り落ちそうになるのを防ぐ。


「古いビールしかないよ。昨晩、裏の詐欺師からもらったやつ……」 もう一口吸って、咳。 「土の色してて、味は砂の粉。飲む? それとも泣く?」


カエルは息を吐いた。 断ろうかと思ったが、やめた。


「……持ってきて」


タルガは踵を返し、床に尾を引きずりながら、忍耐を捨てた音を響かせて歩いていった。


サーロンはギシギシと鳴り、いつも以上に震えた。


「そうだよな。溶けたセメントを飲むのが君の人生っぽいしな、坊や」


タルガが戻ってきた。 ジョッキをカウンターに叩きつけるように置いた。 まるで借金を机に投げつけるように。


液体は……悲しい茶色だった。


存在しないはずの井戸の底から削り取られたような色。


カエルは見つめた。 ため息。 そして、飲んだ。


喉を裂くように流れ落ちる。 内側から紙やすりで削られるような感覚。


タルガは葉巻を整え、口の端から煙を漏らした。


「で……コホッコホッ……今度は何やらかしたの? どんな地雷踏んだの?」


上から見下ろすような視線。 道徳を石化させるゴルゴンの目。


「さっき、あの……コホッ……歩く照明器具みたいな連中と入ってくるの見たよ」


カエルは頭を腕に乗せ、額をカウンターに沈めた。


「《太陽の光》だよ」 くぐもった声で答えた。 「そう名乗ってる」


サーロンが震え、チリンと鳴る。


「ぴったりな名前だな……恥ずかしさで目が潰れる」


タルガは葉巻を吸い、咳をしながら口に戻す。


「チッ……」 頭を振る。 「で、行ったんだ。行ったんだよな。 坊や、君はもう柔らかくなってる。 金だけじゃない、理性まで失ってる」


サーロンは黙っていなかった。


「理性? この店の本日のおすすめが“泣きながら焼かれる玉ねぎ付きの狼のレバー”って時点で、理性なんて存在しないだろ」


タルガは煙を剣の顔に向かって吹きかけた。


「で、あんた……コホッコホッ……まだ喋ってんの? ただの喋る鉄くずのくせに、黙るって選択肢はないの?」


「黙るのは無理だな。腕ないし。 でも、切ることはできる。どう?」


サーロンがチリンと鳴り、鞘から飛び出しそうな勢いで震えた。


「はいはい……切るなら、自分の舌でも切っとけ。 それなら感謝するよ」


葉巻を整えながら、タルガはそう言った。


そして、その時――


「ビール追加だ、クソッタレ!」 酒場の奥から、荒くて酒臭い叫び声が響いた。


視線を奥へ。


オークだった。 腕が一本ない。 腹が出ていて、禿げていて、顔には大きな傷。 血よりも酒が多く流れているような男。


オークの拳がテーブルに叩きつけられ、ジョッキが跳ね、木が震えた。 口を開き、また何か叫ぼうとしたその瞬間――


パシッ!


焦げた肉の匂いが一瞬で広がった。


タルガは葉巻を……オークの手で消した。


「ぐっ……」 巨体が目を見開き、よろけながら立ち上がり、半分罵声、半分泡を吐き出す――


バシッ!


拳が飛んだ。 顎に。 乾いた音。 正確な一撃。


オークは顔から倒れ、鼻先がテーブルにめり込んだ。


酒場全体が、気まずい沈黙に包まれた。


ただ、葉巻の火が再び灯る音だけが響く。 タルガは煙を吸い、尾を整えながら、何事もなかったかのようにカウンターへ戻った。


まるで、ゴミの位置を確認しに行っただけのように。


「で……コホッコホッ……どこまで話したっけ?」 もう一口吸って、煙を上に吹いた。


サーロンは鞘の中で震え、笑いすぎて崩れそうだった。


「これだよ。これ。これだけで今日一日分の価値がある」


カエルはジョッキを見つめた。 茶色の液体。 その濁った泡に映る、自分の敗北した顔。


「たぶん……」 息を吐く。 「たぶん、俺は“どん底”の定義を見直す必要があるな」


「チッ」 タルガはもう一口吸った。 「見直しすぎるなよ……コホッコホッ……底の下に落とし穴があることもあるからな」


カエルはジョッキをカウンターに置き、前に押し出した。 まるで一日中背負っていた石を手放すように。


「……空いてる部屋、ある?」


タルガは葉巻を口の端に整え、深く吸い込み、煙を吐きながら咳をした。


「コホッ……あるよ」 髪の蛇たちは退屈そうに動いた。 「前に使った部屋の前……コホッ……まだ扉は開くと思うけどね」


カエルはバッグに手を突っ込み、何枚かのコインを取り出して、カウンターに落とした。 乾いた金属音。 会話を終わらせたい者の音。


「……はい」 ほとんど目も合わせずに押し出した。


タルガはコインを拾い、木の上で数え、引き出しに蹴り込んだ。


「チッ……コホッコホッ……今回は何も壊さないでね」 サーロンを横目で見ながら。 「壁に傷つけない。テーブルを噛まない。いい?」


サーロンは鞘の中でチリンと鳴り、鋭く返す。


「テーブル? 勘弁してくれ。 俺が噛むのは、少なくともそれより知能のあるものだけだ」


タルガは葉巻を吸い、目を細め、煙を吐きながら言った。


「コホッコホッコホッ……昔はもっと愛嬌のある剣も溶かしたことあるんだけどね」


カエルは聞いていなかった。 あるいは、聞こえないふりをしただけかもしれない。


背を向け、重く、疲れた足取りで階段を上がる。


階段は、まるで自分の存在に抗議するようにきしんだ。


一段ごとに、 「やめろ……やめろ……やめろ……」 と叫んでいるようだった。


短い廊下。 低い天井。 歪んだ扉。 傷だらけで、ひび割れはまるで忘れられた地図のよう。


押す。 扉は軋みながら開いた。


部屋は……まあ、“部屋”と呼べるものだった。


四つの壁。 罠のようなベッド。 ちゃんと閉まらない窓。 そして、匂い。 一度も“新品”だったことがないような匂い。


カエルはバッグを床に置き、ブーツをほどき、ベルトを外した。


サーロンがチリンと鳴り、震えながら言った。


「なあ……」 その声は、いつにも増して鋭かった。 「俺はまだ、あの婆さんが俺を愛してると思ってる。 ただ、表現の仕方が分からないだけだ」


カエルはサーロンの鞘ごと壁に投げた。


「頼む……」 年齢にしては擦り切れた声。 「ただ……寝かせてくれ」


沈黙。


聞こえるのは、ちゃんと閉まらない窓に風が当たる音だけ。


カエルはベッドに身を投げた。


藁が潰れる音。 残ったわずかな尊厳も一緒に潰れた。


天井を見上げる。


そして、天井も見返してきた。 ひび割れ、歪み、そして――裁き。


「もう……いい……」 カエルはささやいた。


世界は、暗転した。


カエルは、いつもより少しだけ元気に目を覚ました。 眠気がゆっくりと溶けていくのを感じながら、伸びをしようとしたその時――


鋭い声が、部屋の静寂を切り裂いた。


「コホッコホッ……お前のいびき、城壁も崩せるぞ、カエル。 どれだけうるさいか分かってるか? お前のせいで七つの路地からネズミが逃げ出したぞ」


カエルは目を閉じ、ため息をついた。 鋼の相棒サーロンの毒舌には、もう慣れていた。


ゆっくりと起き上がり、剣と目を合わせる。 その剣は、いつも通り皮肉を忘れない。


階段を降りながら、カエルはタルガの不在に気づいた。 カウンターは静かで、葉巻の強い匂いも、あの乾いた咳もなかった。


「運が良かったな、どうやら」 サーロンが笑いながら言った。 その声は、いつも通りの皮肉混じりのしゃがれ声。


「今朝は、あの婆さんの辛辣な言葉を飲み込まずに済んだな」


カエルは答えず、ただ扉を押して外へ出た。 太陽はすでに強く、熱く輝いていた。 影と命に満ちた通りを照らしていた。


歩きながら、カエルは今日何をするか考えていた。


「で、どうする? 叫ぶカエルと《太陽の光》の後だぞ。 また任務でも探すか?」


その声には、迷いが滲んでいた。


サーロンは乾いた笑いを漏らした。


「マジかよ……俺は、またあの星屑集団に会えることを願ってるぜ。 お前がもう一度ボコられるのを見たい。 笑いすぎて疲れるまでな」


カエルは目を回した。


「もういいよ。 今日は静かに歩いて、日差しでも浴びて過ごす」


サーロンは皮肉な笑みを浮かべて答えた。


「お前の不運が爆発しますように、カエル。 あいつらが現れて、真夜中の太陽よりも眩しく輝きますように」


カエルは黙ったまま、広場を横切った。


路地の角を曲がったその時―― 古びた荷車がギシギシと音を立てて、彼らの横に止まった。


中から飛び出してきたのは、ボロボロのゴブリン。 素早い足取り。 ずる賢い目。 まるで、二人の声を聞き分けていたかのような動き。


「おやおや、俺の古い友人たちじゃないか」 ゴブリンは歪んだ笑みと鋭い目で言った。 「今回は、こんなものを持ってきたぜ!」


カエルとサーロンは疑いの目を交わしながらも、ゴブリンの横に並んだ。


ゴブリンは続けた。


「強力なクリスタルだ。 誰かを蘇らせることができるって話だ。 この石を飲ませれば……いや、クリスタルだな」 そう言って、クリスタルを叩いた。


「宝石の鉱山で掘り出されたものだ。 キラキラしたものがいっぱいあったらしい。 それを掘ったドワーフは、未来を見たって言ってた。 で……えーと……その後、寝た。 うん、寝たんだよ」


サーロンは耐えきれず、大声で笑った。 その声は、まるで刃が滑るように響いた。


「くだらねぇ。 王様の約束よりも嘘くさい。 お前、そんなのに騙されるのか?」


カエルはクリスタルを手に取り、太陽にかざした。 その石は、まるで魔法のように、魅惑的な輝きを放っていた。


「もしかして……遺物かもな」 カエルは興味深そうに呟いた。


歩きながら、ゴブリンは二人の反応を期待するような目で見ていた。 もっと驚いてほしい、そんな顔。


突然、ゴブリンが消えた。 音もなく、叫びもなく、つまずきもなく。


ただ、道の真ん中に雑に置かれた板の下―― 下水のメンテナンス用の穴に、すとんと落ちた。


カエルとサーロンは、クリスタルの話に夢中で、まったく気づかなかった。


「もし本当に効果があるなら、役に立つかもな」 カエルは手の中の石を見つめながら言った。


「それか、ただの騙しアイテムだな。 冒険者を釣るための、よくあるやつだ」 サーロンは皮肉たっぷりに返した。


やがてギルドに到着。 古びた木の匂いと、安っぽい冒険の空気がまた二人を迎えた。


カエルとサーロンは、クリスタルについて話し続けていた。 背後に残した謎には、まったく気づかずに。


カエルは、乾いた動きでクリスタルをポケットに突っ込んだ。 その仕草は、どこか乱暴だった。


もちろん、サーロンは黙っていなかった。


「おお、素晴らしい……またガラクタコレクションが増えたな。 世界を救うつもりか? その石ころで?」


カエルは短く、苦笑した。


「ガラクタ? お前もその一つだろ、サーロン。 でも、俺は少なくとも役に立ってる」


剣は、挑発するようにチリンと鳴った。 まるで一緒に笑っているかのように。


ギルドは、彼らに何も期待していなかった。 そして、彼らもギルドに何も期待していなかった。


だが―― 何かが、起ころうとしていた。

ここまで読んでくれたあなたへ。 お疲れさまです。枕にまで裁かれる一日を乗り越えましたね。


カエルは潰れかけ、サーロンは毒舌全開、タルガは葉巻でオークを沈め、ゴブリンは下水に消えました。 世界は敵じゃない。ただ、笑いのセンスが独特すぎるだけ。


クリスタルはポケットに。 希望はどこかに。 そしてギルドは、今日も期待していません。


次回もお楽しみに。 カエルがまたベッドに負けなければ、ですが。

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