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The Sword That Hates Me (But Is Better Than Me)  作者: 神谷嶺心
第1章 カエルとタロン──予言か、呪いか?
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第11話 — 任務報告書とその他の拷問手段

「コインを受け取っても、トラウマは癒えない。」



乾いた葉と沈黙を踏みしめながら、彼らは道を戻っていた。 帰り道は、行きよりも長く感じた。 いや、現実の重みを背負ったカエルのせいかもしれない。


レオンは先頭を歩いていた。 まるで道の石がレッドカーペットでもあるかのように、笑顔で踏みしめて。


シルフィーは時折くるりと回り、ドレスを広げる。 地面から花びらが舞い上がるのを期待しているようだった。


エルレンは粘液まみれの袋を誇らしげに振りながら、口笛を吹いていた。 それは不快で、粘っこくて、でも確かに“勝利”だった。


そしてカエルは—— ただ、歩いていた。 虚ろな目で。 存在契約そのものを問いかけるような魂で。


サロンは彼の手の中で揺れ、金属的な笑いを響かせていた。 空気を切り裂くような、冷たい笑いだった。


彼らは獣道を越え、柵を越え、遠くに見える街の音を頼りに進んだ。


やがて建物が現れた。 薪、鉄錆、汗、そして古びたパンの匂い。 それは、日常の匂いだった。


石畳の道を踏みしめ、広場を横切り、酔いつぶれたドワーフが寝ている路地を通った。 ——前にも見た気がする。 この地域のドワーフは全員、同じ趣味と同じ樽を頭にくっつけているのか?


そして、そこにあった。 あの酒場。 傾いた扉。 崩れかけの看板。


中に入ると、すべてが戻ってきた。 匂い。 音。 声。


テーブルの木が、皿の重みで軋んでいた。 脂に輝く狼の肝串。 まるで飢えた獣の棘のように突き刺さっている。


泣き虫玉ねぎ——丸ごと焼かれたそれは、蒸気と悲しみの香りを放ち、噛む者に涙を浴びせてくる。


そして、もちろん……ビール。 濁っていて、苦くて…… 料理人の最近の涙が混ざっているような味。 カエルよりも深刻な存在危機を抱えているらしい。


彼らはそこにいた。 太陽の光。 乾杯し、笑い、祝っていた。


まるで炎に包まれた古代竜を倒したかのように、ジョッキを掲げていた。


レオンは満面の笑みで腕を高く上げて叫ぶ。 「偉大な功績に! 良き仲間に! そして、見事に完了した任務に!」


シルフィーは、いつもの輝きを目に宿しながら、そっとグラスを掲げた。


「我らの力に!そして、我らが背負う光に!」


エルレンはリュートを爪弾きながら、まるで永遠に祭りの中にいるかのような笑顔を浮かべていた。 その旋律は壮大さを目指していた……が、実際には場末の酒場で酔っ払いが奏でるセレナーデのようだった。


「我らの歩みは星のように響く……剣、風、矢……消えぬ希望……」 彼は完全に自分の舞台に酔いしれていた。


サロンはカエルの鞘の中で揺れながら、笑いすぎて震えていた。 「カエル……この空間にいるだけで俺の刃が鈍ってきてる。尊厳がリアルタイムで酸化してる気がする。」


カエルは—— そこにいた。 座っていた。 噛んでいた。 虚ろな目で。 人生のどこでこの脚本に迷い込んだのか、額にしわを寄せて思い出そうとしていた。


「俺……ここで何してんだ……?」 彼はぼそっと呟いた。


玉ねぎは泣き続け、 ビールは流れ続け、 リュートはうめき続け、 そして“太陽の光”は……輝き続けていた。


食事が終わると、彼らはテーブルにコインを置いた。 もちろん、支払いはレオン。 そして、舞台の幕を閉じるように酒場を後にした。 手を振り、笑いながら、まるでこの世界には美しすぎる存在かのように。


彼らは以前と同じ宿に戻った。 同じ部屋。 同じ藁のベッドもどき。 同じネズミたち——名前を付け合ってるようにすら見えた。


部屋で、サロンが震えた。 「つまり……今のお前は剣士ってことか。叫ぶカエルを倒したんだな。カエルが……クワックって叫ぶやつ。」 彼は笑った。 「もし俺がいつか溶かされて再鍛造されることがあったら……この章は忘れてほしいな。」


カエルはベッドに座り込んだ。 「なあ……人生に負けを認めた方が楽なんじゃないかって、時々思うんだよな……」 彼は体を後ろに倒し、天井を見上げた。 そこには、カビか、あるいは今にも襲ってきそうな知的生命体のようなシミが広がっていた。


「俺、悪夢に囚われてるのか?それとも、悪趣味なコメディか……?」


サロンは皮肉たっぷりに、ほぼ喉を鳴らすように言った。 「両方だよ。ようこそ。」

沈黙が部屋を満たした。 そして、どこかの床板が今夜崩れるか、明日まで耐えるかを悩んでいるような軋みが響いた。


こうして、彼らは眠りについた。


朝が来た。 窓の隙間から金色の光が差し込む。 古びたパン、藁、乾いた汗の匂いが、まるでインテリアの一部のように漂っていた。


カエルは最初に部屋を出た。 宿の前に立ち、 腕を組み、 虚ろな目で、 ただ待っていた。


そして……彼らが来た。 歩いて。 進んで。


その瞬間、カエルは—— 一度だけ、まばたきした。


アンセルムの街は、今日もアンセルムだった。 まるで太陽そのものが人間の姿を取り、通りを横切っているかのようだった。


レオンが先頭を歩く。 その鎧は、金属というより魔法でできているような輝きを放っていた。 笑顔?それは芸術作品だった。


そのすぐ後ろにシルフィー。 ドレスは風に舞い、プラチナの髪が光を反射する。 瞳は、まるで空を映す鏡のようだった。


そしてエルレン。 リュートをくるくると回しながら、まるでそれが魂の延長であるかのように踊っていた。 服は星の糸で織られたかのように輝き、ボタン一つ一つが存在を主張していた。


“太陽の光”。 文字通り。 あまりに眩しくて、カエルは目を覆いたくなったほどだった。


サロンが鞘の中で軋んだ。 「来たぞ。光と美と……三人分の浅さが凝縮されたパレードだ。ほら、俺の反射が見える。残念ながら、俺の反射は失望してるみたいだが。」


カエルは深く息を吸った。 剣の柄を握りしめ、ただ思った。


「俺……なんでここにいるんだっけ……?」


帰り道は、どんな道よりも曲がりくねっていた。 足音、石、枝……そして、最悪なのはエルレン。


エルレン。 あのリュート。 あの笑顔。 そして、カエルの存在そのものよりも不協和な声。


「♫ 野を越え、希望を照らしながら〜」 彼は弾き、歌い、回り続ける。 まるで人生そのものが舞台であるかのように。


レオンは、完璧すぎて苛立つほどの輝きを放ちながら行進する。 シルフィーは重力を無視するかのように回り、笑っていた。


カエルは…… ただ、穴が欲しかった。 墓でも、次元の裂け目でもいい。 今すぐ、ここで、彼を飲み込んでくれる何か。


サロンは鞘の中で震えながら、ほぼ祈るように呟いた。 「もし俺に慈悲をくれる上位存在がいるなら……あのリュートの弦を一本、いや全部、切ってくれ。頼む。悲劇を見たいんだ。」


時間が過ぎた。 時間というより、永遠のような数時間。


そして——見えた。


地平線の向こうに、城壁。 アンセルムの街。


空は深い青に染まり、夜が現実の端をかじり始めていた。


彼らは門に到着した。 警備兵は気楽そうで、機嫌も良さげだった。 魔法サーカスの一団のような彼らを見て、笑顔を浮かべた。


手を振りながら言った。 「おかえりなさい、冒険者たち。今日は質問なしで……ただ、幸運を祈るよ。」


レオンは、もちろん、冬の村を温められるほどの笑顔で応えた。 シルフィーは手を振り、ウィンクし、空気にほのかな輝きを残した。 エルレンはリュートを回し、優雅に一礼。


カエルは……ただ通り過ぎた。 うつむいたまま。 足取りは、重すぎるほど重かった。


サロンは鞘の中で震えていた。 苦味の笑いをこらえるのに必死だった。


彼らは通りを抜け、広場を横切り、路地を曲がった。 街の音は、もう違っていた。 夜がすべてを包み込み、囁きのような空気に変えていた。


そして——ギルドの扉。


押し開けて、中へ。 古びた木の匂い、乾いた汗、そして安すぎる冒険の香りが胸を満たした。


彼らは、戻ってきた。


ブーツが木の床を叩く音は、カエルの残された理性を一滴ずつ砕いていくようだった。


レオンは先頭を歩く。 世界が自分を中心に回っていると信じているような笑顔。 胸を張り、マントは風もないのに揺れていた。


シルフィーは、目に入るすべての人に手を振る。 瞳の輝きは、眩しすぎて不安になるほどだった。


エルレンはリュートを回しながら、人生そのものが舞台だと信じているような足取りで進む。


カエルは……ただ通り過ぎた。 うつむいたまま。 足取りは、カルマよりも重かった。


サロンは震えていた。 緊張ではなく、毒のような笑いをこらえる震えだった。


彼らはカウンターに到着した。 そこにいたのは——受付嬢。 歪んだ眼鏡、すべてに飽きて生まれてきたような姿勢。


「任務……完了?」 眼鏡の上から目を上げるその仕草は、もはや存在の問いかけだった。


レオンは胸を張る。 「その通り!叫ぶカエルは無事に討伐されました!」


彼女は眼鏡を直す。 「討伐……それとも一時的に黙らせただけ?」


エルレンが前に出て、笑顔で言う。 「皮を剥ぎ、排除し、完全に消去!」


「消去……それとも苦痛の次元に転送しただけ?」 彼女は乾いた声で返し、視線を記録帳に戻した。


シルフィーは腰に手を当て、首を傾けて笑顔を見せる。 「冗談でしょ?」


「冗談……それとも哲学?」 顔の筋肉ひとつ動かさずに返す。


サロンは鞘の中で震え続けていた。 皮肉の熱で、今にも発火しそうだった。


「このやり取り……最高だな」 彼はカエルにだけ聞こえる声で呟いた。


レオンは、毒気に気づいていないのか、気づいていて無視しているのか—— 任務報告書を差し出した。


「こちらが任務の報告書です。記入済み、完了済み、署名済みです。」


彼女は、汚れた紙切れでも扱うように報告書を受け取った。 「記入済み……それとも、ただ“記入したつもり”?」


カエルは目を細めた。 「頼むから……早く支払ってくれ。」


彼女はページをめくった。 一度。二度。三度。


「興味深い……とても興味深い。」


「何が?」 カエルは言葉を絞り出すように返した。


「新人が……任務を完了し、最後の一撃を決めた?それは……よくあること?それとも……異例?」


彼女は眼鏡を直しながら、じっとカエルを見つめた。


レオンは、まるで爆発するかのようにポーズを決めた。 「異例です!まさに異例!この男こそ——」カエルを指差しながら——「決意、勇気、そして克服の象徴です!」


「勇気……それとも無謀な突撃?」 彼女は乾いた声で返しながら、コインの袋をカウンターに投げた。


その音は、乾いていて、満足感があり……ほぼ、満足だった。


サロンは鞘の中で震えていた。 まるで腹の底から笑っているかのように。


「これは……人形劇より面白くなってきたな。」


レオンは世界平和でも差し出すような笑顔で言った。 「袋を二つに分けてもらえますか?一つは僕に、もう一つは我が友カエル、“影の剣士”に!」


カエルは顔に手を当てた。 「影の……」 それは、誰にも聞かせるつもりのない独り言だった。


彼女は退屈そうな目で見返し、もう一つの袋を取り出して半分をそこに入れた。 「半分……それとも、ちょっと少なめ?」


「完璧に公平です!」 レオンは、まるで歴史的な取引を成立させたかのように答えた。


シルフィーは流れ星のような笑顔で言った。 「あなたたちがいなくなると、寂しくなるわ!」


サロンは鞘の中でほぼ爆発寸前だった。 「これは……これは……これは洗練された精神的拷問だ。」


エルレンは戦利品を差し出した。 カエルの足、よくわからない石、そして……何かが入った瓶。 彼は詩のように歌った。


「見よ、宝、栄光、富……」


受付嬢は一瞥した。 「宝……それとも感傷的なゴミ?」


カエルはもう限界だった。 「俺……もう……出る。」


彼はコインを袋に押し込み、体が許す限りの速さで背を向け、扉へと向かった。

「もう帰るのか?」 レオンは手を上げ、半笑いで言った。 「寂しくなるぞ、相棒!」


「偉大なる戦士よ!」 シルフィーは手を振り、目から輝きの軌跡を残した。


「また来てくれよ!」 エルレンはリュートを回した。


サロンは、扉をくぐった瞬間に吐き出すように言った。 「俺……お前を憎んでるのか……それとも、まだ橋から飛び降りてないことを尊敬すべきなのか……」


カエルは乾いた、空っぽで、疲れきったため息を漏らした。 「俺も……正直、わからない。」

章は終わった。 誰かが勝ったからじゃない。 これ以上続けたら、残ってる理性が崩れるからだ。


カエルは歩き続けた。 サロンは爆発寸前だった。 世界?無関心のまま。


ギルドは臭いまま。 コインは落ちた。 誰かが歌った。 何も変わらない。 いや、少し腐ったかもしれない。


何か学んだ? 学ぶな。 この世界は教えない。 ただ、滲むだけだ。


もう一度読む? やめとけ。 玉ねぎですら、もうトラウマだ。

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