第1話 — 刃の囁き
「これは、決して英雄になりたくなかった戦士と、間違いなく別の持ち主を望んでいた剣の物語です。楽しい読書を——そして、不器用なゴブリンには気をつけて。」
声が聞こえる人もいる。
俺の場合は、剣だ。しかも、こいつは一生しゃべり続ける。
ブルサーの暗き森、そのじめじめと臭い片隅で、
ある「英雄」は、まるで落ちこぼれじゃないかのように目覚めるという難業と戦っていた。
最初に聞こえたのは、いつも通り鋭い――剣の声だった。
「イビキまで情けないなんて、さすがね。」
彼は動こうともしなかった。ただ、目をぐるりと回しただけ。
「今日はキレッキレだな、お前。」
「剣の持ち方は最悪、歩き方もフラフラ、息なんてスライムでも気絶するぞ。」
カエルはゆっくりと腰を上げた。鎧がギシギシと音を立てて共鳴する。
「今日は死ぬかな?そうだといいけど。」
彼はため息をつきながら、焚き火の近くに置きすぎたブーツを引き寄せた。
「焦げた肉の匂いがする。」
「俺のブーツ、もう焼きおにぎりみたいになってる!」
「ふざけるなよ、カエル!」
「ああ、よかった、起きたのか。これで目を開けたまま死ねるな。」
「ゴブリンだ。」
カエルは震え、歯を鳴らした。
「宴か?もう始まってるのか?」
「パーティー?あいつらはそうだろうけど、俺たちにはただの不運な一日さ。」
カエルは足がふらふらで目を細めながら洞窟を出た。手に握られたサロンはイライラと震えていた。
「それが君の戦闘ポーズか?」
サロンは渋い声で呟いた。
「俺を敵の頭蓋骨に誇らしく突き刺すシーンはどこだ?」
カエルは剣を持ち上げた…が、ほとんど落としそうになった。
「お前は俺の剣の扱いが曲がった竹みたいだ、バカ!」
ゴブリンが唸った。
カエルは必死に、もっと大きくうなった。
「お前が逃げなければ、俺が逃げる!」
ゴブリンが突進した。
カエルは叫んだ――勇気じゃなく、反射的に。
「アアアアアアアアアッ!」
出たのはそれだけだった。
腕がふらつき、サロンを空中でくるりと回し、相手の鼻らしき部分に当てた。
「ガチャン!」
ゴブリンは顔から地面に倒れた。
静寂が訪れた。カエルは目を見開いた。
サロンはそっと震えた。まるで静かに嘲笑しているかのように。
「…当たったのか?」
「俺、当てたのか!?」
「運がよかっただけだ。でも当てたな。慣れるなよ。」
茂みの間から二匹のゴブリンが現れた。一匹は涎を垂らしていて、もう一匹は牛の骨を武器のように振り回している。
カエルは青ざめた。
「まだ増えるのか?」
「今や三匹だ。」
「三、三匹?!?」
「そうだ。お前の自尊心もな。」
二匹のゴブリンがお互いをにらみ合い、なぜ争っているのか忘れたかのようだった。
「この武器は俺のだ!」と一匹が唸り声をあげ、骨をまるでトロフィーのように握りしめた。
「違うよ!先に見つけたのは俺だ!」ともう一匹が答え、垂れたよだれを舐めながら言った。
二匹はお互いにつまずき合い、まるでぐちゃぐちゃのダンスの振り付けみたいだった。
カエルは喉をゴクリと鳴らし、剣をぎゅっと握りしめて、どうしたらいいのか分からない様子だった。
「お前たち……仲間同士でケンカしてるのか?」
ゴブリンの一匹がもう一匹にぶつかって、顔から地面に倒れ込み、うめいた。
立っていたゴブリンがカエルの方を向き、唸った。
「次はお前だ!」
サロンは震え、毒を吐くように言った。
「惨劇を期待してたのに、これはただのドタバタ劇かよ。」
カエルは立ちすくみ、意味がわからなかった。
ゴブリンが突進し、叫んだ。
「お前の番だ、人間!」
カエルは反射的にサロンを掲げた。
ゴブリンは根っこに足を取られバランスを崩し…自分で剣に串刺しになった。
「グルブッ!」
カエルは口をぽかんと開けた。
サロンは緑色のぬめりに覆われて震えた。
「…私は古代の遺物だ、焼き串じゃない。」
カエルはまだ地面にうずくまってうめいているもう一体のゴブリンを見つめた。
「ぼ、僕、本当にこれをやるのか?」
「やれよ。まだ息がある。失望だけじゃ死なないみたいだ。」
ため息をついて、カエルは剣を突き刺した。
「ごめん…」
「ごめん?ふん。感謝すべきだよ。注意散漫なゴブリンから世界を救ったんだから。」
カエルはゆっくり歩きながらも、頭の中でゴブリンたちのうめき声がまだ響いていた。
それは恥ずかしさだった。
罪悪感じゃない。
サロンは背中にぶら下がり、数分間静かだった。
まるで慈悲のようだった。
でも、ほんの少しだけ。
— その最後のうなり声が、夢にまで出てくるって知ってた?
カエルは答えなかった。ただ、家を出た理由を思い出そうとしていた。
ああ、そうだ。英雄。予言。しゃべる剣。
全部、最悪なアイデアだった。
丘の向こうに街が現れた。アンセルム。高い城壁と、古びたパンの匂いが漂う街。
カエルは立ち止まり、遠くから門を眺めた。
「こんな負け犬でも入れてくれるかな?」
サロンは、傷口に塩を擦り込むような声で囁いた。
「たぶん。人は災難が好きだからな…昼飯前ならなおさら。」
カエルはため息をつき、鎧より重い肩を落とした。
「俺、あの呪われた石を地面に放置すべきだった。」
サロンは笑った。金属質で、乾いた音だった。
「そして俺は、本来なら英雄の手にあるはずだった。なのに、ほら、このザマだ。」
「第1章—終わり。」
「これは、存在に悩む“英雄”と、彼よりもさらに自信のない剣の壮大な始まりだった。」
「誰が一番負けているのか分からない。傲慢な金属の塊と会話する彼なのか…それとも、この二人が冒険のチュートリアルで早々に失敗するのを見届けたあなたなのか。」
「でも、もしこれが楽しめたなら(あるいは、どこまで屈辱が続くのか気になったなら)、次の章も読んでくれ。」
「次の章で会おう…そこで、もしかしたら彼らは本当に死ぬかもしれない。」