光合成②:夜になっても
――課外訓練・野営実習記録
同行教官:シュロ=ハーン
訓練生参加:第79期生より6名
「焚き火、まだー!?」
「だめだ、薪が湿ってる!」
「飯盒ひっくり返したー!」
「……もう夜なのに、米炊けてない……」
森の中、見習い訓練生たちの悲鳴が響く。
日暮れとともに冷気が落ちてきて、空気はすっかり野営テンションどころではない。
そんな中、
ぽつんと、野草にくるまり、微笑んでいたのがソラ=フォトンだった。
「いやぁ……いい日光だったなあ……」
「お前な……もう太陽沈んどるわ……」
呆れ声を上げたのは同行していた教官、シュロ=ハーン。
「お前、ちゃんと動いとるんか?なんでそんな涼しい顔しとるんや」
「だって、今日の太陽すごい優しかったし……風もちょうどよくて」
「質問の答えになってへんわ。いや、まあそれで“動ける”ならええんやけども」
近くにいた訓練生の一人が、倒れこみながら言った。
「ソラ先輩……おにぎりとか……作らないんですか……?」
「食べたくなったら作るよ~。今のところはまだ、光で満ちてるから」
「……なんすかその理屈……」
一同がぼやく中、ソラは静かに立ち上がった。
「じゃあ、焚き火手伝うよ。火起こしは……苦手だけど、風向き読むのは得意なんだよね」
そのあと、ソラの言葉通り風を読みながら設営位置を調整したところ、
湿った薪にも火がつき、飯盒も無事に炊き上がった。
そしてその夜。
テントの外、草の上で仰向けになったまま、ソラは夜空を眺めていた。
月明かりと星の下、静かに目を閉じる。
「……光じゃなくても、こうして“生きてる”って感じがするんだよなぁ」
野営記録の片隅に、シュロが書き残したコメントがある。
『野営適性:異常に高い。
生活力A判定。“他人の生存ペースに引き込む”才能あり。
なんか、妙に説得力のある子やな……』
【訓練所観察ログ】
訓練名:野営実地訓練
対象:ソラ=フォトン
記録官:シュロ=ハーン
備考:自律行動・無人環境適応・風読みに基づく支援適性あり