表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/48

ひとり上手③:一人の強さは誰かのために

――訓練所・記録更新日

記録官:シュロ=ハーン

「おう、ちょっとええか? 最後の確認や」


訓練棟の外、夕方の木陰。

訓練が終わったあと、モノ=ヒトリボッチはシュロに呼び止められた。


「はい……?」


「実習評価は上々や。モノくんの集中力と作業精度は、ギルドでも通用する。

 それだけにや、改めて聞かせてほしい。

 “ひとり上手”──このスキル、君にとってどういうもんや?」


モノは、少しだけ視線を落とした。

一言では言い表せない時間が、彼の中にあった。


「……最初は、“一人でしかできない”って、そう思ってました。

 誰かと一緒にいると、失敗するし、変に思われるし……

 それなら、最初から一人の方が、いいって」


「けど、今は違う?」


モノはうなずいた。


「一人が悪いことじゃないって、わかって。

 でも、“一人でいる”と、“一人にされる”って、ちがうんですね。

 あの作業のとき、手伝ってもらったことが──うれしかったんです」


「ほう……“うれしかった”か」


「はい。……でも、いちばんうれしかったのは──

 “僕の作ったものが、誰かの役に立った”って、思えたことです」


シュロは、ニヤッと笑った。


「ええこと言うやん。

 それやったらもう、“ひとり上手”やのうて、“ひとり前”やな」


モノは思わず小さく笑って、それから照れたように下を向いた。

【訓練所記録 第79期生:モノ=ヒトリボッチ】

スキル名:ひとり上手

分類:集中型スキル → 対話適性付き共同作業対応可


最終評価メモ

内面的変化:自己認識の肯定傾向、他者との協力意欲に改善傾向あり

チーム内ポジション:設計・細工など“任せて安心”な単独パートに適性

将来候補先:ギルド制作部門/少人数職場/個人工房運営候補


教官メモ(シュロ=ハーン)

「“一人が好き”って気持ちは、変えんでもええ。

 ただ、“一人でしかできない”と信じ込むのは、もったいないわな。

 この子はもう、“一人の強さ”を“誰かのため”に使える段階に来とる。

 それができるようになった時点で、立派な“一人前”や」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ