9/11
七時以降
夫は米飯、私はパン。
夫は和食が健康にいいと力説する。
それはわかっている。
私だって、たまには卵かけごはんをずるずると食べたいなと思うこともある。
でも絶対、朝に和食を食べていると夫に気づかれたくない。
たとえ、みそ汁を作っても、私はパンを食べる。
「ミソ・スープ」と思えばいい。
そして、夫が起きてくる前に、朝食を済ませて、洗い物まで終わらせる。
夫が起きて朝食を取るころには、私は洗濯物を干していて、とても夫の面倒を見る暇はない。
だから、片付けも自分でしてもらう。
お犬様は、夫が食卓に着くと、いそいそとそばに駆け寄る。
忠犬のごとく、胸を張って食卓の夫を見上げている。
夫がうるさくねだるので、お犬様のための野菜のカケラを夫の盆に載せているのだ。
夫はもったいぶって、カケラをさらに極小にちぎり、一つずつ投げてやる。
最後の一つを投げると、夫のお楽しみの餌付けタイムはおしまい。
お犬様は後も見ずにさっさと引き上げる。
夫は、恩知らずだの冷たいだのと恨んでみせる。