六時過ぎまで 4
お犬様に「待て」をさせてから、フードをお犬様用の食器に入れる。
「待て」をしている時のお犬様は、この上なくイノセントでキュートだ。
「どんなごちそうも捧げられて当然の高貴な犬」感をかもしだしている。
しかし、「よし」と聞くやいなや、意地汚くがっつく。
のどにつっかえないかとハラハラする。
あわてなくても、だれも横取りしやしませんよ。
しもべもお腹はペコペコですが、まだ人間としての理性があります。
あっという間に食べ終わったお犬様に声をかけると、お犬様はしぶしぶと近寄ってきて、背中を向けてお座りする。
しもべは犬用の小さい歯ブラシに歯磨きジェルをたらす。
お犬様のぶるぶるな黒い唇(?)を、爪を立てないように指でまくり上げると、小さくも尖った牙がにやっと現れる。
まさに「犬歯」だ。
歯ブラシをそっと当てて、さっとみがく。
あまり時間をかけたり強く磨いたりするといやがられるので、手際の良さが求められる。
はあ、これで一段落。
散歩もご飯も終わったお犬様は、クッションにねそべり、くつろぐ。
しかし、しもべにはまだ仕事が残っている。
お犬様の歯ブラシやタオルを洗わねばならない。
さすがに人間のものと一緒に洗濯機に入れる気にはなれないので、お犬様の分は手洗いする。
それから、掃除機をかける。
お犬様の毛や夫の毛が落ちているところでは、ごろごろくつろげない。
ここまでにかなり体力を消耗しているので、ハンディ掃除機でささっと掃除する。