六時過ぎまで 3
だいたい、「犬ガチャ」がどうのこうのと言うなら、なにもかもがそうではないか?
家具や電化製品など買い直せる物ならば、まだいい。
親、きょうだい。パートナー。子ども。友だち。先生、上司、同僚、職場、住んでいる地域、隣人。
人間関係や、生計を立てている環境は、簡単にすげ替えることはできない。
よほど我慢できなくなるまでは、がまんしてつき合わねばならない。
それか、心地よい空想に逃げるか。
ああ、そうか。
お犬様にとっては、「飼い主ガチャ」なのだなあ。
お犬様は、なんと思っているのだろう。
たぶん、だがお犬様は、哀れな人間のように、もっともっとと幻想を抱かない。
目の前の現実の事象に、すばやく反応するだけだ。
そうして、この飼い主にしてこの犬あり、となる。
いさぎよすぎる。
運命に従順すぎる。
ごめんね。
こちらがどんなことを考えていようと、お犬様には伝わらない。
脳みそが異なるのだから、当たり前だ。
しもべが黙々とオイルマッサージから一連の手入れを終えて、ほうとため息をついたとしか、お犬様は知覚しない。
もう終わった?
おなかすいたよ、早く、早く!
はいはい、わかりました。