六時過ぎまで 2
もう、五年も、毎日毎日こんなことを続けている。
冬は症状が軽くなるが、全く無いわけではない。一日さぼると、やはりフケがたまる。
気温と湿度が高い夏は、フケの量が増える。
雨の日は、濡れるとオイルマッサージができないので、散歩に出る前にオイルマッサージを済ませておく。
足先の症状は最後まで残るかもしれない。
わたしも年をとって、更年期のせいか、マッサージする手指がこわばり、痛むこともある。
お犬様の寿命はあと何年なのだろう。
最後まで、このケアを続けなければならないのだろうか。
お犬様の足腰が弱って立つこともままならなくなれば、果たして足のケアはできるだろうか。
毛づやも失せた年寄り犬が横たわり、かゆい足先を力なくなめている様子が頭に浮かぶ。
「親ガチャ」という言葉が以前流行ったが、「犬ガチャ」という言葉が頭をよぎることもある。
とんでもない。私は、自分を恥じる。
この子は、この辛い十年を、一緒に過ごして、慰めてくれた。
積極的に慰めるほどの親切も賢さも持ち合わせていない。あくまで自分が一番のお犬様だ。
だが、そこに温かいふわふわの生き物がいるというだけで、私はずいぶんと救われた。
こんな私を、なんの疑いもなく全面的に信頼してくれる、かよわい生き物。
お犬様は大きな黒目で見つめてくる。
おなかすいた。
散歩に行こうよ。
なんかかゆくてしかたないよ。
たいくつだ。遊んで。撫でて。
さあ、立ち上がれ、散歩に行け、フードを準備しろ。
私は自分を叱咤激励する。
そうして、お犬様のために体を動かしていると、なんとなく生きていけるのだ。