表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/11

六時過ぎまで 2

 もう、五年も、毎日毎日こんなことを続けている。


 冬は症状が軽くなるが、全く無いわけではない。一日さぼると、やはりフケがたまる。

 気温と湿度が高い夏は、フケの量が増える。


 雨の日は、濡れるとオイルマッサージができないので、散歩に出る前にオイルマッサージを済ませておく。



 足先の症状は最後まで残るかもしれない。



 わたしも年をとって、更年期のせいか、マッサージする手指がこわばり、痛むこともある。




 お犬様の寿命はあと何年なのだろう。

 最後まで、このケアを続けなければならないのだろうか。


 お犬様の足腰が弱って立つこともままならなくなれば、果たして足のケアはできるだろうか。


 毛づやも失せた年寄り犬が横たわり、かゆい足先を力なくなめている様子が頭に浮かぶ。




 「親ガチャ」という言葉が以前流行ったが、「犬ガチャ」という言葉が頭をよぎることもある。



 とんでもない。私は、自分を恥じる。


 この子は、この辛い十年を、一緒に過ごして、慰めてくれた。


 積極的に慰めるほどの親切も賢さも持ち合わせていない。あくまで自分が一番のお犬様だ。


 だが、そこに温かいふわふわの生き物がいるというだけで、私はずいぶんと救われた。


 こんな私を、なんの疑いもなく全面的に信頼してくれる、かよわい生き物。




 お犬様は大きな黒目で見つめてくる。


 おなかすいた。

 散歩に行こうよ。

 なんかかゆくてしかたないよ。

 たいくつだ。遊んで。撫でて。



 さあ、立ち上がれ、散歩に行け、フードを準備しろ。

 私は自分を叱咤激励する。

 そうして、お犬様のために体を動かしていると、なんとなく生きていけるのだ。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ