六時過ぎまで
帰って来てウンチ袋の始末を終えると、しもべはお犬様を抱いて洗面所に入る。
さあ、オイルマッサージのお時間でございます。
純度百パーセントのスクワランオイルをぜいたくに四つの足先に垂らし、しもべはせっせとマッサージを始める。
やがてしもべの指の間に、なんだか細かい砂のようなものが入り込んでくる。
脂漏症、というらしい。
初めは、体を舐めるのは犬の習性だろうくらいに思っていたが、やけにあちこちをしつこく舐めているので気にはなっていた。
そのうち、かかりつけのトリマーさんから、脂漏症ではないかと言われた。
驚いて獣医に行ったり、自分であれこれ調べたりした。
シャンプーを変えたり、アレルギー検査をしてフードを変えたり、いろいろと試した挙句、今の方法に落ち着いた。
つまり、肌が乾いた状態の時にオイルマッサージをして、細かい砂のようなフケをできるだけ落とす。
そのあとぬるま湯でオイルを洗い落とし、部分シャンプーをしてから、タオルで拭きあげて、念入りに乾かす。
ちなみに、ドライヤーは人間用では風力が弱く、時間がかかって仕方が無いので、小型掃除機のような犬用のドライヤーを愛用している。これは重たいが、風力と温度を無段階で調節できるのがありがたい。
その後、セラミド入りの化粧水をスプレーして、被毛を梳かす。
フードは、馬肉を使った、特別なものだ。
初めは顔や首筋や胸の辺り、脚全体まで広がっていたフケが、この方法で、今では足先だけになったので、うちのお犬様にはこれで良いのだろう。
お犬様は、決してこの時間が好きではない。
マッサージが長引くと逃げ出そうともがくし、迷惑そうな顔を隠そうともしない。