52話 どんなに細かく予測をしても、危機は必ず想像を超えてくる・・・
威流は村の中を走り回っていた。
初めて来た場所で迷いながらもリリーの家を探すが、
表札もなければ目印も無いので分かりようが無かった。
「この状況でどうやって見つければいいんだっ!?」
村人が家に閉じこもっているから誰にも見られないのは助かるが、
けど逆にリリーがどこに居るかも分からない。
闇雲に走り回っても、見つけるのは不可能だ。
だとしたら、どうすればいい。
「待てよ。襲撃犯を撃退すれば、見つける必要は無いんじゃないか!?」
現状だとそれがリリーを助けられる可能性が一番高い。
襲撃犯と戦っている場所はどこだ?
当然、威流にはどこで戦いが起きているかも分からなかった。
「取り敢えず、明るい方へ向かってみるしかない」
空を見上げ、戦いは篝火を焚いている明るい場所だと推測し、そこへ向かう。
この時、リリーも村の中を進んでいた。
父親に会う為、声が聞こえる方へ歩き続ける。
それを邪魔する”悪い人”に見つからないように隠れながら進む。
村の至る所に”子供しか知らない秘密の道”が有り、
そこを通る事で誰にも見つからず進むことが出来た。
リリーを呼ぶ声がどんどん近づいて来る。
父親に会えるという期待がリリーの中で高まっていく。
どんなに疲れていてもリリーはひたすらに歩き続ける、
向かうその先の空が、赤く染まっている意味も知らずに。
家に戻ったデイジーもまた、リリーを探しに家を飛び出る。
娘の名を大声で呼び、不安に圧し潰されそうになりながらも走り回る。
アーク司教は骸骨兵の数を着実に減らし、
この戦いの終着点が見えて来た頃だった。
骸骨兵の数が多かった事と、死人兵がいなくなった事。
この違いについての明確な回答が出せずにいた。
ただ、回答が出せなくとも”今回は何かがある”との、
いわば勘とも経験則とも言える確信があった。
その為、細心の注意を払い戦いに臨んでいたが、
ついにその答えを知る時が来た。
アーク司教は違和感のある音を拾う。
骸骨兵が出す足音は、足の骨が地面を掠った軽い音が出る。
だが、今聞こえる足音は腐った肉が地面にへばり付いてから足を引き上げる
”ドチャッ”とした重い音だ。しかも、それが複数重なりあって聞こえる。
「骸骨兵からの死人兵の波状攻撃か」
新しく聞こえて来た足音の方向に向き直した瞬間、
アーク司教は想定をしていない攻撃を受け身体が宙を舞う。
アーク司教は吹き飛ばされ木に激突する。
だが直ぐに起き上がり、体勢を立て直す。
「馬鹿なっ!!なんだあの魔物は!!」
アーク司教の目に飛び込んできたのは、
今までに見た事の無い異形の化け物であった。
頭部から長く伸びた胴には複数の節が有り、その節ごとに脚が何本も生えている。
一見、巨大ムカデとおぼしき魔物にも見えるのだが、大きく異なる点があった。
それは、生えている脚が人間の手や足であるという事。
そして、長く伸びた胴に節があるのではなく、
死人兵から剝ぎ取った胴だけをいくつも繋ぎ、一本の胴体を形成していた。
その繋いでいる接続部分が節のようになっていたのだ。
頭部だと思っていた部分には上半身だけの死人兵が繋がれていた。
「こんな魔物がこの世に存在するのか・・・」
その醜悪な見た目にアーク司教は恐怖する。
人知を超えた異形の化け物を前にして、
茫然としたアーク司教は敵に隙を見せてしまう。
死人兵ムカデは頭を振って攻撃体勢に入り、
勢いを増した胴体でアーク司教を打ち据える。
反射的に防御態勢を取るも吹き飛ばされ地に転がる。
全長が二階建ての建物を優に超す巨大なムカデから繰り出される攻撃は重く、
アーク司教の防御が全く意味を成さない。
脅威となっていた男が取り除かれたと判断した骸骨兵は、村の入り口へ殺到した。
アーク司教の戦いを見守っていた四人の僧侶は、
突如として防衛戦に徹することになる。
アーク司教は幾度となく立ち上がり、死人兵ムカデを相手に奮戦する。
だが、徐々に死人兵ムカデは骸骨兵と共に村へ近づいていく。
死人兵ムカデの動きを止める為、足を攻撃して機動力を削ぐ作戦に出るが、
あまりにも足の数が多く、目に見える程の効果は得られなかった。
見張りは既に村の中へ逃げており、自宅に閉じこもり祈りを捧げる。
村の入り口付近に辿り着いたの威流は、その惨状を目の当たりにする。




