51話 出来る限り頑張ろう。切り札を切ったら、もう後が無くなるぞ・・・
「さあ、いくらでも掛かって来い!!」
ビーフィーは振り被った大斧を前方に振り下ろす。
標的となった骸骨兵は左右二つに分かれ、その場で崩れ去る。
その後方で棘付き棍棒を振り回してたポーキーが大声で叫ぶ。
「兄貴!!そろそろ、ちょっときつくなってきたぞ」
そんな弱音を聞き、ビーフィーは豪快に笑い飛ばす。
「がぁーはっはっはー。弟よ、面白い冗談だ!!
つまりここからが本番という事だ。家名に相応しい戦をしようぞ」
弟に檄を飛ばしたビーフィーの疲れも、段々と誤魔化しが効かなくなっていた。
後方に控えていたマティオンにはまだ余力はあったが、
今だ増え続ける骸骨兵に不安を感じずにはいれなかった。
櫓から敵の状況を伺っていた見張りも、
このまま耐え凌いでも、どうにかなるとは思えなかった。
増え続ける骸骨兵に僧侶達は徐々に包囲されていく。
ただ唯一の救いは、骸骨兵は連携して同時に襲い掛かるなどの、
統制の取れた行動が出来る程の知能が無かった事だ。
だが、なんの思想も無くただ闇雲に襲い掛かってくるだけの敵というのは、
その数が多ければ多い程、戦う相手に心理的な重圧が圧し掛かる。
訓練を受けた者であれば、どうとでもなるのかも知れないが、
矢面に立っていないといっても、戦いに不慣れな村人には耐えがたい。
押し寄せる不安に耐えられなくなった見張りはアーク司教に救いを求める。
村の入り口に顔を向け、「助けてくれ」と叫ぼうとした。
その時、アーク司教が一歩前に足を踏み出した。
ドンという重量感のある音と吹き抜ける一陣の風。
見張りは吹き付ける風の勢いに押され一瞬顔を背けると、
そこに居たはずの司教が忽然と姿を消す。
そして、司教が居たはずだった場所には、
恐ろしく強い力で踏み込まれた足跡がくっきりと残されていた。
法衣を靡かせながら、アーク司教は跳ぶ様に駆ける。
骸骨兵の集団を体当たりで弾き飛ばし、マティオンの前に立つ。
「マティオンよ、下がって構わんぞ」
「申し訳御座いません。この場はお任せ致します」
マティオンは頭を下げ、村の入り口へ向かう。
「さて、次はポーキーの所か」
移動先を定めるアーク司教の周りに骸骨兵が集まってくる。
知能の低い骸骨兵であっても、この男が一番の脅威であると認識出来る程、
この男の纏う雰囲気は、僧侶とは思えぬ ”強烈な暴力” に溢れていた。
アーク司教はまた足を一歩前に出し踏み込み、腰を据えた拳を突き出した。
突き出された拳から放たれる風圧が数十体の骸骨兵を粉砕し吹き飛ばす。
そしてまたアーク司教は駆け始め、ポーキーの元へ向かう。
ポーキーを囲む骸骨兵には渾身の蹴りをお見舞いし、
その殆どを”飛散する骨の欠片”へと姿を変えさせた。
「すんません司教。兄貴を頼みます」
「心得ておる。よく頑張ったなポーキー」
笑顔で答えるアーク司教に安心し、ポーキーはその場から離れる。
ビーフィーの場所を確認し、すぐさまアーク司教は駆け出した。
「少し急がねばならんな」
ビーフィーはもう限界であると察したアーク司教は、
少々乱暴ではあるが、効率的な移動手段を取る事にした。
軽く飛び上がり、骸骨兵の頭を踏み台にして駆ける。
目標地点に近づいたところで高く跳躍する。
落下する時の勢いでビーフィーを取り囲んでいた骸骨兵を全て吹き飛ばす。
膝を突いていたビーフィーにアーク司教は手を差し出し立ち上がらせる。
「待たせてしまったか?」
「ハァハァ。いいえ、随分と・・早い・・ご到着でしたね」
滝の様に流れる汗を拭いながら、ビーフィーは強がってみせた。
「それだけ元気なら、一人で問題無いな?」
ビーフィーはなんとか絞り出した笑顔で大きく頷く。
大斧を握り直し、村の入り口に向かって走り出した。
「よし、それでは掃除を始めるとしよう」
そこからは、アーク司教の独擅場だった。
拳を繰り出せば敵は吹き飛び、蹴りを浴びせれば粉々に砕けていく。
どれだけ敵の数が居ようとお構いなしで暴れ回り、
相手に攻撃をさせる隙など微塵も与えなかった。
村の入り口に戻った僧侶達は、司教の獅子奮迅の活躍に舌を巻く。
己の肉体を武器として敵を打ち砕くアーク司教のその姿に感動すら覚えた。
「まさにあれは厚い信仰心の成せる御業よ」
マティオンは自分の事のように得意げに言う。
「そこなのか?やっぱり、親父の代の猛者だからだろ」
ポーキーはマティオンの言葉に茶々を入れるが、
アーク司教の戦いに振りに見蕩れて、その言葉は耳に入っていなかった。
「お前達、気を抜いて良い場面ではないぞ」
ティキンは二人の無駄口を諫めるが、
必然の逆転劇を前に少々気が抜けていた。
そんな中、戦況を見守っていた見張りが見付けたのは、
森から這い出てくる巨大な影だった。
「あれは一体何だ?・・・」




