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赤い魔石は火属性ですよね? いいえ、違います・・・  作者: MMLB
異世界は言葉が通じない 編
50/53

50話 窮地に陥る時には必ず前触れがある、それを見逃すな・・・

リリーは知っていた。


夜になってから鳴る鐘は”悪い人が来る”という意味なのを。



リリーは知っていた。


夜に鐘が鳴ると、次の朝に村の誰かが遠くへ行ってしまう事を。



だが、リリーは知らなかった。


遠くに行った人が帰って来ないという事を。



緊急を知らせる鐘が打ち鳴らされると、

リリーは両手で耳を塞ぎ、目をつぶって、

部屋の隅で鐘のが鳴り終わるのを、ただじっと待っていた。



リリーはこの音が嫌いだった。



家の外に走り寄る足音が聞こえ、誰かが荒々しく家の扉を叩く。


「デイジー、デイジー居るか?」



近所に住む男の声と分かると、デイジーは急いで扉を開けた。


「こんな時にどうしたのっ!?」


「すまないが、近くの年寄りの家を見てきてくれないか。

 戸締りをしていればそれでいい」


「分かった。あなたはどうするの」


「俺は村全体を回ってみる」


「村の入り口付近は危険だから気を付けて」


「ああ、デイジーも気を付けて行くんだぞ」


そう伝えると、その男は村の中を走って行った。



デイジーは一旦扉を閉めて、つっかえ棒で扉を固定する。

リリーの元へ行き、両手を耳から外させた。



「リリー、よく聞いてね」


デイジーは真剣な眼差しでリリーを見つめる。

そして手を取り、落ち着いて話す。


「これからお母さんは近所のお婆さんの所に行ってくるから、

 知らない人が来ても扉を開けてはダメよ。約束出来る?」


頷くリリーの頭を優しく撫で、強く抱きしめる。

リリーを残していく不安を抱えながらも、デイジーは松明を手にして家を出る。



母親に言われた通りにリリーはつっかえ棒を扉に引っ掻け、

部屋の隅に戻って縮こまり、手で耳を塞いだ。



耳を塞いでも聞こえてくる、カーンカーンと響く鐘の音。

胸の奥をモヤモヤさせる音に紛れて、微かに聞こえる誰かの声。


「・・・・リリー・・・・・リリー・・・・」



リリーはハッとする。

何度となく聞いてきた大好きな人の声。


「・・・・お父さん?」



リリーは立ち上がり、もう一度耳を澄ます。


「・・リリー・・・リリー・・・」


聞こえてきたのは、

いつもの様に優しく呼びかける父の声だった。


「お父さん、帰ってきた!!」



居ても立ってもいられなくなったリリーは扉のつっかえ棒を外し、

部屋にあった火の点いた蝋燭ろうそく蝋燭ろうそく立てに刺し、それを持って家を出た。



リリーは父親の声を頼りに村の中を走って行く。

最初は微かだった声が、徐々に明瞭さを増していく。


”きっとお父さんは帰ってきている”、リリーはそう信じて走り続けた。



村の入り口では、アーク司教達による防衛戦が始まっていた。



周辺の森の中から続々と姿を現す骸骨兵。

その一体一体が村の入り口を目指して進んで行く。



村人達は、村の入り口付近に篝火かがりびを設置する。

僧侶達の視界が確保出来る様に、空の色を染め上げる程の数を用意していた。



やぐらに居る見張りが敵の位置を確認し伝達する。

すると、ビーフィーとポーキーの遊撃隊が所狭ところせましと暴れ回る。



マティオンは村の入り口を固め、

ティキンとゴーレム(多分)僧侶は村の内側で緊急時の為に待機をしていた。



アーク司教は状況を判断しながら、全体の指揮を執っていた。


「マティオン、入り口は私が守る。お前はビーフィー達に加勢を」


「御意。このマティオンにお任せ下さい」


そう言い放つと勢い良く駆け出し、骸骨兵の群れに突撃する。

抜き放たれた長剣は骸骨兵の頭を次々と切り裂いていく。


本来、長剣の斬撃では頭蓋骨の丸みで刃が滑り、骨を断つのは難しい。

だが、研鑽を重ねるマティオンの剣術と怪力がそれを可能にする。


この時のマティオンは、

威流たけるとの一件で溜まったうっぷんを吐き出すように豪快に剣を振るった。


僧侶達の見事な連携で危なげ無い展開が続いており、

今回は被害が出ない、上手くいけば”首魁しゅかいを捕えられる”のではと考えていた。



だが今回はいつもとは様相が異なっていた。

その事にいち早く気付いたのはアーク司教だった。



「今日は何かがおかしい。数が、数が多すぎる」


骸骨兵など我らの相手にはならんが、

このまま物量で押されたら、いつかは押し切られる。

しかも、死人兵がいないのにだ。



前回も死人兵はいなかった。

今回もいない、これも何か意味があるのか?



「司教、マティオン達を下げてください。私が行きます」


後方に控えていたティキンがアーク司教に声を掛ける。


大剣を構え、アーク司教の横を通り過ぎようとした時、

手を横に出してティキンを静止する。


「お主はここを守れ」


「御意」


アーク司教の指示に従い、ティキンはその場で大剣を構え直す。


「そろそろ、私の出番のようだ」


そう言うと、おとこは一歩前に足を踏み出した。

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