4話 そうだと思っていると、だいたい違う・・・
「これです、感想をお願いしますね」
PCの画面に写し出された広告のデザインを見てみるが、なんかもう真っ赤っか。
炎を基調に、文字も赤、会社ロゴも赤、消火器も赤、全体的に”燃える闘魂状態”。
少し呆気に取られていると、久城さんがデザインについての説明をし始めた。
「クライアントの意向で、商品開発への情熱を表現して欲しいと言われてたので、こんな感じになりました。情熱的に燃えているイメージで作ってみたんですが、そう見えますか?」
「うん、そうだね、確かに何かしらの情熱は伝わってくるね」
「それでね、ちょっと僕のアイデアを話してもいいですか?」
話しながら、久城さんの顔をちらっと横目で見て反応を伺う。
「是非、赤音さんのご意見を伺いたいです」
また上目遣いで見てくるが、表情は割と明るい。
機嫌、直ったのかな?
「ありがとう、そうだね、このクライアントさんは消火器とか作ってる会社なんで、燃える情熱って書いてあると、あんまり火を消せないイメージになるからね」
そう伝えながら書いてある文章を手直しする。
「情熱だけは消せないとかにすると、何かを消化するイメージになるかな」
「あとね、背景は消化後の建物とかにして、その前に消化が終わった消防士が居て、手に消火器を持っているような感じだと、ぱっと見で何か消化に関連する企業って分かりそうかな」
誰かが頑張って作った物にダメ出しとか、本当に苦手だ。
仕事だからと自分に言い聞かせたところで、やはりストレスにはなる。
またも、久城さんの顔をちらっと横目で見て反応を伺う。
特に不満げな様子は無く、彼女はモニターに写し出された画像をまじまじと見つめている。
「確かにこのままだと、また燃えだしそうな勢いですよね」
何かが腑に落ちたのか、彼女はうんうんと頷いていたので少しホッとしたのと同時に、見たまんまの感想を言うものだから、不覚にも笑いが込み上げてきた。
「デザインを考え直してみますね、って、なんで笑ってるんですか?」
不思議そうな顔をしながらも、彼女もつられて笑いだした。
「すいません、久城さんが素直な感想を言うもので」
「作った時に何故気が付かなかったんですかね、私は」
口に手を当てて笑う久城の可愛らしさに、少しドキっとした威流であった。
「確かにそうですね、けど、久城さんが丁寧に作ってくれたのは伝わりますよ」
「それは、赤音さんの案件ですから・・・」
「久城さんは、僕のクライアントを大事に思ってくれてるんですね、嬉しいです」
「そ、そ、そ、そうですね、大事なクライアントですもんね」
「案件取れたら、また久城さんにお願いしてもいいですか?」
「赤音さんのだったら、いつでも大丈夫です」
和やかな雰囲気だと思っている赤音威流に反して、
かなり暴走気味の恋心を押さえつけている久城葵。
赤音の元来の鈍感さに加えて、
セクハラへの恐怖が恋のフラグをバキボキにへし折っているのであった。
いったい、この恋の行方はどうなることやら。
それは、だいぶ先のお話。
うーん、かなりだいぶ先になりそうなお話。




