34話 些細な事かどうかは、やられた相手が決める事・・・
一方、池の広場に戻った威流。
初めて異世界の人間に会ったのに、この有様だった。
「くそー、やっと人に会えたのに対応を間違えた~」
やっぱり普通のピースがまずかったんだよな。
あぁ~、ギャルピースをやっておけば良かった。
いくら頭を抱えたところで、時間は戻りはしない。
後悔は常に先には立たない事を実感する威流であった。
「それにしても、マナーをミスっただけであんなに怒るもんかな?」
まあ、海外旅行でマナー違反をして罰金なんて話もあるし、
余程の事をやらかしたのかもしれないから、ちょっと気を付けよう。
ただ、マナー違反程度の相手に、いちいち増援呼ぶ必要があったのか?
しかも、あんなに殺意高い系の僧侶が4人も出て来たし・・・
「本当にあの殺戮坊主どもは何を考えてるんだ!?」
こっちは丸腰で、殺意どころか戦う意思すら見せてはいないのに、
「そっちの事情は知らないんで、取り敢えず殺しま~す」みたいな対応ってある?
櫓があったのも、何かからあそこの集落を守る必要が・・・
「もしかして、村を襲撃している奴の仲間だと思われてるのか?」
それはとんでも無い誤解だ、俺は一見さんですよ。
襲撃の常連客に混ぜないで下さい。
いや、もしやあの普通のピースが常連客ムーブだったのかもしれない。
そうだとしても、碌に確認もしないで、取り敢えず ”怪しい奴は殴ればいい”
の精神は教会に属する者のとしてどうなんでしょうか?
「とはいえ、魔法使って逃走しちゃった・・・」
これはマズイ、非常にマズイ。誤解を解かねば、行く度に攻撃さかれかねん。
元の世界への帰還方法を探すのに、お尋ね者ってのも頂けない。
身の安全と情報収集の為に、あそこの人とは仲良くしないと。
「よし、襲撃犯がどんな奴なのか見に行こう」
そんで、あわよくば襲撃犯と戦う姿を見せて誤解を解く。
ただ相手が、トゲトゲ肩パットの世紀末的でヒャハーッな感じだったら、
種もみと水を渡してとっとと逃げよう、そうしよう。
「襲撃犯でもAEDでも、見つかると面倒だから、隠れながら様子を伺おう」
夜に行くと見つかり難いけど、逃走時に足元が見えないと危ないから、
地形把握が出来るまでは、行くのは陽の出てる時間にしよう。
「砂浜を革靴で歩くのを繰り返すのは、ちょっとしんどいな・・・そうだ!」
威流は、そこいらに生えている植物のツタを大量に集め、
丈夫そうなツタを数本使い、器用に編み込み始めた。
「小さい頃にじいさんとよく作ったな。じいさんほど上手くは作れなかったけど」
編み込みを進めながら、時々編み込んだ物を足の裏に当てて大きさを計る。
数時間、黙々と作業を進め、ようやくお目当ての物が完成する。
「ふふふ、お手製の草鞋が出来上がったぞ」
久しぶりに作ったから若干不恰好ではあるが、これの方が歩きやすい。
材料はいくらでも調達出来るから予備を作ったり、肩掛け鞄も必要だな。
「そういえば、今日はまだ何も食べていなかったな」
威流は、黄色の魔石を1つ持って海岸へ向かい、
波打ち際を吹き飛ばしてから広場へ戻ってきた。
「今後使う機会が増えそうだから、魔石の補充でもしておくか」
威流は、草鞋のまま池の中に入り、魔石を集め始めた。
魔石を拾っては、水を払い、ポケットに詰めていく。
ポケットに入りきらなかった分は、手持ちにした。
手の中にある魔石を見ながら、威流は今日の出来事を思い出す。
「動物相手でも無理なのに、人に向けてこれを使えるのか?」
仮に使わなければいけない時が来たとしても、納得のいく理由が必要だ。
こんな時、じいさんだったら、どう考えるのだろうか?
「まあ、AED相手だったら使って良いとか言いそう。電撃耐性高そうだしな」
勝手に付けたあだ名で、勝手に属性耐性まで決める威流。
するとその時、パキっと音が鳴り、威流の右手に電気が纏わり付く。
「えっ!?なんで?」
突然の魔石発動に一瞬狼狽えたが、急ぎ池の縁まで歩き出す。
池の縁までもうすぐといった所で、手に持っていた魔石を1つ落としてしまう。
つい、条件反射で拾おうと手を伸ばしてしまった。
すると、手から放たれた電撃は水面を伝い威流に直撃する。
「今日・・・3個・・・使ってた・・・のに・・・」
威流は、地面に倒れ込み、そのまま意識を失った。




