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33話 時に欲望や憎悪が力になる事がある、それが人間ってものだ・・・

戦わず敵前逃亡が板についてきた威流たける

強敵から逃走し、池の広場へ向かっていた。


その頃、赤い教会前では不穏な空気が流れていた。

氷に足を取られていた4人の僧侶は這って氷の外に出て、

迂回して追跡を試みようとしていた所をAEDに止められる。


「もう追わなくてよい」

AEDは怒りを抑えながら、4人の僧侶に静かに伝える。


「司教、取り逃がしてしまい、申し訳御座いません」

長剣を携えた僧侶がAEDの前にひざまずき、頭を下げ詫びる。


「あの様な魔法を使ってくるのは、想定外であったわ」


「司教、あの者はまさか、襲撃の首謀者では」


「そうであろう・・・。まさか、この私に”呪いあれ”と挑発してくるとはな」


「なんと無礼な。次にまみえた時には、奴めの首を取って御覧に入れます」


「いや、殺さず捕らえるのだ。この襲撃の目的を知る必要がある」


「御意。しかし、簡単に口を割るのでしょうか?」


「見ていたであろう。投降を呼びかけても応じずに、薄ら笑いをしておったわ」


「しかし、投降を呼びかけるなど、あの者に慈悲は不要だったのではと」


「道を踏み外した者でもゆるし導いていく、それも我らの務めと心得よ」


「寛容の精神でございますね。このマティオンの胸にしかと刻んでおきます」


「うむ。それでは、お主は教会内に居るご婦人とお嬢さんを家まで送り届けよ」


「御意」

そう言って僧侶は立ち上がり、一礼をして教会内へ入っていく。


「他の者は村を巡回しろ。痴れ者がまだ近くに居るかもしれない」

3人の僧侶はAEDに一礼をしてから村の中へ散っていく。


「お主は少し休んでおけ。また襲ってくるやもしれぬ」

パワー系僧侶は、AEDに一礼をし教会内に戻っていった。


教会の入り口に立ったまま、AEDは不審者について考えていた。


あの男、隠れていた割には気配を消すつもりが全く無かった。

挑発をしに来ただけかもしれぬが、どうにも意図が読めない。


骸骨兵がいこつへい死人兵しびとへいを伴ってもおらず、直接的な攻撃を一切してこなかったのは、

余裕を見せているつもりなのか?


「あの者がこの村の襲撃に関係しているかは、五分五分といったところか」


身なりは薄汚れてはいたが、かなり良質の布を使った装い、

そして、私でも知らぬ異国の言葉を話していた・・・

だが、どこかで聞いた記憶のある言葉にも思える。


「どこぞの国の王族や貴族が落ち延びて来たという可能性もあるか・・・」


襲撃の首謀者にせよ、他国の者にせよ、捕らえて聞き出せばよい。

だがこれ以上、村人の犠牲を出さぬ為にも必要とあらば殺すしかない。


「ふふふ、あの男は魔法も使える・・・これは手強そうだ」


この時のAEDは、薄ら笑いとも取れる不敵な笑みが自然とこぼれ、

目の中には静かに燃える炎が灯っていた。


この表情を誰かに見られてはいけないと無意識に感じ取っているのか、

AEDは両手で顔を覆っていた。


「司教、アーク司教!!」

僧侶がAEDの後方から声を掛けると、顔を覆っていた手を戻し振り向き、

いつもの優しい笑顔を僧侶に向ける。


「どうした?」


「アーク司教、これよりお二人をお送りして参ります」


司教は老婆と少女の方へ向き直す。


「この者が護衛いたします。道中お気をつけてお帰り下さい」

この言葉に老婆は礼を述べ、少女は手を振りながら「またね」と別れを告げた。


老婆を家まで送り届け、少女の家へ向かう護衛の僧侶。


「また、悪い人が来たの?」

少女からの突然の質問に、護衛の僧侶は言葉に詰まった。


奥歯を噛みしめ、こぶしを強く握る。

己の感情が少女に伝わらぬ様に、少女の前にしゃがみ込んで穏やかに話し掛けた。


「そうだね、だけど心配はいらないよ、リリー。

 必ずアーク様が守ってくれるから」


その言葉を聞いて、リリーは悲しそうに僧侶の目を見る。


「うん、分かった。マティオンおじちゃんはいなくなったりしない?」


「いなくなったりはしない!!この剣で村のみんなを守ってみせる!!」

そう言ってマティオンは、腰に下げた長剣をリリーに見せる。


「ありがとう、マティオンおじちゃん」

少女の寂しげなその笑顔は、僧侶の胸を強く締め付けた。


「さあ、お母さんが待っているから、早くお家に帰ろう」


僧侶は少女と手を繋ぎ、帰り道を急いだ。

少女の家に着いた僧侶は、母親に少女を引き渡し教会に戻る。


その道中でマティオンは立ち止まり、長剣のつかに手を掛ける。

勢い任せに一気に抜き放った長剣の斬撃は、鋭い風切り音を鳴らし空を斬る。

「あの邪教徒め!!然るべき報いをくらわせてやる」


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