32話 ある人曰く、「見た目ってのは生き様さぁ、俺は人を見た目で判断する」・・・
「嫌な足音が近づいてくるが、目の前の敵も油断が出来ない」
取り敢えず逃げ一択なのは変わらんとして、どのタイミングで行くか。
それにしても、取り巻き4人の武器がやば過ぎる。
左側の奴から、
冒険の頼れる相棒 ”ロングソード”
漢の憧れ決定版 ”クレイモア”
木も人も一振りで真っ二つ ”グレートアクス”
棘付けようって言った人は誰? ”スパイクメイス”
こんなに”殺意高い系”の武器揃えて、ここの僧侶はどうなってんだ?
話し合いをする余地も、命に対する敬意も全く感じられない。
「だって、邪教徒だからしょうがないよね~」って的なノリなんですか?
「あぁ、そうか。死んでも直ぐに教会で生き返って」って馬鹿。
それはゲームだけの話、異世界でも死んだら終わり。試せないから分からんけど。
仮に生き返れても、目の前の教会にリポップして、また瞬殺だよ。
打開策も考えずに馬鹿な事を考えていたせいで、あれの出番が訪れる。
5人目の加勢、パワー系僧侶のお出ましである。
威流はそのいかつい姿に戦慄する。
まずは、肩口が破られた法衣から伸びる女性の胴回りよりも太い両腕。
法衣の裾から見える、オーガと見紛うばかりの巨大な足。
顔の輪郭と同じ幅の屈強な首と、法衣の胸元の盛り上がりが気になる胸筋。
四角い顔には虚ろな目と四角い鼻、大きな口から石臼の様な歯が剥き出しになっている。髪も無く、眉毛も髭も無いこの男は、一見するとゴーレムではないかと思ってしまう風貌であった。
「法衣がワイルド、ワイルド過ぎる」
威流は、特注であろうカスタム法衣に気を取られてしまったが、
最も注意するべきは手に持っている物だった。
あのゴーレム(決めつけ)が手に持ってるのは鉄板?
あれは武器なのか?
パワー系僧侶の手には、1つの厚みが5センチ程の二枚の鉄板があった。
威流の武器という読みは、半分当たりで半分外れだった。
その二枚の鉄板の片方の端を繋ぐ細い鉄板が付けられ、
上下の鉄板の間には、何十枚もの紙が挟まれている。
威流が遠目で見ても、紙が挟まっているのが分かる程大きな物だった。
「まさか、あれは本なのか!!」
そう、これは信心深いパワー系僧侶の持つ、大事な”聖書”なのであった。
「あっ、分かった!!あれ聖書だ」
きっとそうだ。それにしても、あまりにもカバーがハード過ぎやしませんかね。
本のカバーを ”鋳造”するって、今迄に聞いた事ないんですけど・・・
あと、聖書のカバー傷だらけですよ~。変なへこみと染みも付いてますよ~。
その聖書、読む用じゃなくて殴る用になってます?
「ほわぁぁぁぁ!!あんなので殴られたら、散らばった肉片になってしまう」
パワー系僧侶はAEDの前まで来ると、そこで立ち止まった。
聖書を持った左手を前に出し、右手を後ろに回しAEDを守っている。
「そのまま襲ってくるかと思いきや、AEDを守る為に防御体勢になった!?」
・・・つまり、4人の僧侶が襲ってくるぞ!!
威流の想定通り、AEDの守りが盤石となった今が攻勢の時と言わんばかりに、
4人の僧侶は一斉に階段を駆け下り攻撃に転じる。
だが、威流もこれまでの時間を漫然と過ごしていたわけでは無い。
襲い掛かってくるまでの僅かな隙をずっと待っていた。
左右の手に持った茶色の魔石を同時に起動した威流は、
そのまま両手を地面に着ける。
地面は凄まじい勢いで凍り付き、その範囲を広げて行く。
頼りなかった氷の厚みも、重なり合えばそれなりの強度となった。
勢いよく飛び出した僧侶達は、目の前で起きた現象に怯む事はなかった。
しかし凍った地面は、全ての者の足を絡め取り転倒させた。
「ふははは、氷の上で走れる者などおるまい!!」
威流はその様子を尻目に、その場から逃走する。
「さらばだ!!殺戮坊主ども!!」
どうせ分からないと思い、軽く悪態をつき光の速さで消えていった。
僧侶達は立ち上がろうにも、足が滑ってどうにもならず、
AEDは拳を握り、怒りに震えるのであった。




