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28話 良い事と悪い事が起きる比率に偏りがあるのは何故なのか・・・

30年という人生の中で、ここまで真剣に走った事があっただろうか?

ここまで死を感じさせられた事があっただろうか?


威流たけるは、ただ無心になって走り続けた。

後ろを振り返る事も無く、迫りくる木々を避け、ひたすらに走る。


今にも張り裂けんばかりの心臓の激しい鼓動が、

自分に限界が近づいている事を教えていた。

そんな中、ふと気が付く、あの恐ろしい足音が聞こえなくなっていることに。


足を止め、肩で息をしながら、後方を確認する。

そこには、巨大カピバラの姿は無かった。


「はぁはぁ、逃げ切ったのか?」

緊張の糸が切れ、その場にへたり込む。


「はぁ~、本当に死ぬかと思った~」

座っていても、足はまだガクガクと震えている。


「ふざけんなっ!!最初のエンカウントでボス出してくんな」


どーなってんだ、この世界は!?

どんな物語でも最初はまずスライムとかゴブリンが定石だろうが。

いきなり、凶暴な原生生物出してくんじゃねえ。


あんなのと、どうやって戦えと言うのか。

そういえば電撃も効いてなかったし、いきなり雷属性無効とか正気か?。


レベル1でDLCからスタートとか意味分かんないから。

まだ、王様に装備とお金貰ってないから。


「ここ数日間、あいつに遭遇しなかったのは、運が良かったってこと?」

あいつ以外にも角の生えた狼もどきも居たし、森の中は安全ではないぞ。

戦う意思が無ければ、あいつらのえさになってしまう。


威流たけるはポケットから紫の魔石を取り出し、眺めながら考える。


この魔石を使えば、狼もどきや巨大カピバラに致命傷を与えられるのは頭では分かっていた。だが、使った後の惨状を考えると、どうしても使う気にはなれない。


アニメのヒロインの様に動物と心を通わすなんて芸当も出来ない。

だから、襲われたら戦うしかないんだよな。ちゃんと覚悟を決めておく必要があるけど、出来る限り戦わず、逃走する方向で今はいいかな。


「はぁ~疲れた。一回、広場に戻るか」

威流たけるは広場を目指してとぼとぼと歩き出した。


広場に戻った威流たけるは、寝床に腰を掛け空を見上げる。


「なぜ、森で襲われたヒロインを救出するイベントじゃなくて、

原生生物と初のご対面イベントにしたのでしょうか神様」


ハーレムイベントをすっ飛ばし、恐怖イベントが起きた事も神様のせいにする、

信仰心ゼロの威流たける


とはいえ、何故あの巨カピが追ってこなかったのかが気になってくる。


「縄張りの外に追っ払ったからとかかな?」


考えたところで分かりはしないんだが、習性を把握しておいた方がいい。

あいつは ”もりぬし”っぽいから周辺を徘徊しているかもしれないし、

迂闊うかつにあの辺りには近づかない方がいいな。


「はぁ~、遠足に行く予定が台無しだよ、まったく」

ポケットから全ての魔石を取り出し、寝床の下に置いておき、

使用した青い魔石も忘れずに追加した。


「念の為、遠足に持ってく魔石を追加しておくか」

今回の件で自衛手段の重要性が高まり、青と黄色の魔石を追加することにした。


森の中には他にも同じ様なパワー系原生生物がいるかもしれないから、

明日は見通しの良い海岸を歩くことにしよう。

それにしても、いきなりの事だったから今日はまだ何も食べてないし、

明日に備えて腹ごしらえでもしておくか。


その後、威流たけるは海へ向かい、焼き魚を食べて戻ってくる。

まだ夕暮れ時ではあったが、死に物狂いで走り続け、既に疲労困憊だった。

今日はもう何かをする元気も無いので、少し早いが休むことにした。


翌朝


目を覚ました威流たけるは顔を洗い、軽いストレッチを行う。

早めに休んだこともあり、昨日の疲れは感じられなかった。

しらがみ様への挨拶を終え、遠足の準備を整える。


「そんじゃ、行きますか!!」

そんなに楽しいイベントというわけでは無いが、

やっと同じ事を繰り返す日々から脱却出来るかもしれない。


いつもの目印から左側にそびえる岩山を目指して意気揚々と歩き始める。


異世界に来て、初めて自分の意思で冒険しようと決めた威流たける

新しい何かとの出会いがあるかもしれないという好奇心と、

見知らぬ環境で予期せぬトラブルに巻き込まれる恐怖心。

その二つの感情の境界線が曖昧になり、威流たけるの胸の鼓動は高鳴っていた。

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