25話 分かったつもりになっていると、大体何かを見落としている・・・
的にした木の様子を確認するが何も変化が無い。
「あれ?何も起きてないぞ」
威流は右手を確認するが、空気の流れは感じ取れず、
魔法が放たれた後であるという確証はあった。
「ゲームの魔法みたいに緑色なってるわけじゃないから、
何が起きたか判別出来ないのは困るな」
頭を掻きながら、的にした木に近づく。
的にした木やその周りも見渡してみるが、これといった変化が見つけられないので、なんとなく的にした木を前からコンコンと叩いてみる。
すると、目の前の木が10数センチ左側にずれる。
「なに?」
メキメキと木が音を立て始め、木の枝で休んでいた鳥たちが一斉に飛び立つ。
威流はもう分かっていた、なにかしら危ない事が起きそうだと。
即座に反転し、急いで砂浜まで走る。
振り返り様子を確認するも大惨事であった。
的にした木は左側に倒れ、数本の木がそれに巻き込まれて折れていき、
的の後ろの数本の木も同様に、左側の数本の木を巻き込で倒れた。
整然と木々が並ぶ森の途中に、露骨な環境破壊の痕跡。
威流は、誰かに言い訳をしたい気持ちでいっぱいだった。
「あばばばば、どどどどうしよう」
その場で右往左往するしか出来ない威流であったが、
”この後、スタッフが〇〇として使いました”というテロップを思い出し、
たき火の薪として使う事を決め、無理やり平常心を取り戻す。
倒れた木の切り口を見てみると、丁度手刀を振り下ろした軌道と同じ角度になっており、毛羽立ちの無い滑らかな面が、途轍もない鋭利な刃物で切られたことを物語っていた。
威流は、冷や汗が止まらなかった。
「危ない。これは本当に危ない・・・・」
木の表面をちょっと傷付ける程度だと思っていたが、まさかのまさか。
無色透明無味無臭(食べない)で、貫通性能付きの鋭利な刃物を発射するって、
こんなのどうやって避けるんだ?回避する敵に同情するレベルだよ。
紫の魔石は使用厳禁、持ち歩くのもダメ。
何かを切らなきゃいけない時にのみ、周囲の安全を確保の上、使用を許可する。
現場監督!!紫の魔石を使う時は現場監督が必要だ。
「色によって、火力が極端過ぎる」
戦闘中に焦って魔石の色を間違ったら、いつでも大惨事が起きる。
自爆をキメたのが青い魔石で本当に良かった。
紫の魔石だったかもと思うと、恐ろしくて恐ろしくて、言葉に出来ない。
「よしっ!!安全確保の為、魔石について一旦情報を整理します」
威流は、ただ自分に言い聞かせているだけだった。
まず、低火力無害系の魔石は ”緑” と ”茶色” 。
緑は ”土属性” で、ちっさな小石を2メートルぐらい飛ばすだけ、
正直当たっても「痛っ!!」って言う程度。
茶色は ”氷属性” で、地面に薄い氷を張るだけ、
走ってる人を転ばせるぐらいは出来そう。
飲み物を冷やすには便利。
次に、中火力危険系の魔石は ”青” 。
青は ”雷属性” で、電撃を目の前の空間に放ち、電気を通す物にも影響を及ぼす。
運が良ければ激痛で済むが、運が悪ければ多分天に召される危険物。
使用時は周辺の環境確認が必須。
最後に、高火力禁止系の魔石は ”黄色” と ”紫” 。
黄色は ”火属性” で、火球が出てきてポイ、当たった場所で大爆発。
近距離使用で自爆、天に召される確定演出。まだ、水が無い場所で使ってない。
人に向けて使ってはダメ!!
紫は ”風属性” で、透明な風の刃を前方に飛ばすが、何が起きてるか分からない。
射程距離はそんなに長くないと思われるが、10メートルくらいは飛んでそう。
使用時に現場監督を置いておく必要有り。
なお、現場監督は天に召される危険がある。
使用数制限は1日3個。
夜寝て起きたら、使用数が回復する。
「おかしい・・・無害無意味系か危険自爆系しか種類がない・・・・」
薄々気が付いてはいたのだが、魔石はそんなに便利な道具ではなかった。
いっその事、魔石を使うのを止めればいいのではと悩んでしまう威流であった。




