23話 ”賢者”は歴史に学ぶと言うのなら、歴史の始まりはみんな”愚者”・・・
威流は魔石をじっくりと吟味し、緑色の魔石を手に取った。
「緑色は風属性だよな、普通は」
風属性の魔法をイメージするが、魔石に反応は無かった。
「うーん、やっぱ違うのか」
次に、土属性の魔法をイメージすると、パキッと小さな音を立て魔石が割れる。
威流の手の周りに、3~4センチ程の小石が十数個集まりだした。
「おっ!!ストーンブラストがいけそう」
青い魔石の時と同様に、手を引き前に放つ。
小石の集まりが勢いよく前方に飛んでいくが、
2メートル先程で失速して落ちていく。
「思ったより飛ばないし、威力が弱そう・・・」
思ってたより派手さも無く、期待通りのイメージではなかった。
威流の中では、戦いでは使い物にならない印象となってしまった。
「緑の魔石は土属性ね。まあ、それが分かればいいか」
とはいえ、二つ目の属性が把握出来て、威流のテンションは上がっていた。
「次、次は黄色の魔石」
すぐざま、黄色の魔石を取りに戻る。
黄色の魔石を拾い上げると、発射場所にて構える。
「黄色の魔石は氷か火か風か、どれかなぁ~?」
威流が魔法のイメージを始めるとすぐに魔石が割れた。
火が手の中に渦を巻いて集まり始め、赤い球状の炎を形作る。
「ファイアーボール!!あぁ、的が無いのが残念だ」
手の平から少し浮いている球状の炎を見て、無邪気に喜ぶ威流。
炎の球体を見つめ、考える。
「これ、投げればいいのか?」
あまり深く考えずに、海に向かってポイッと投げてみる。
ボールの様に握ってる感覚が無いからか、あまり遠くまで飛んでいかずに、
波打ち際より少し先に落ちていく。
火の玉だから水の中に入ったら消えるだろうというのは、実に安直な考えだった。
考えが足りない時に限って、結果が想像と全く違っていたりする。
火球が水に触れた瞬間、球体に触れた水が蒸発し始める。
球体の周辺の水が沸騰し始め、大きな爆発音と共に水飛沫を撒き散らす。
その光景に威流はただ茫然と立ち尽くすしかなかった。
火球が落ちた辺りは、その大きさの数十倍は抉れており、
砂浜には水飛沫の跡と、こんがり焼けた魚が転がっていた。
威流は黙ったままその場へ近寄り、焼けた魚を拾い上げる。
焼けた魚の香ばしい匂いが、威流の鼻腔をくすぐる。
この時の威流は食欲と恐怖、欲望と感情が入り乱れていた。
正常な判断が出来なかった為か、はたまた腹が減っていた事を思い出したからか、
こんがり焼けた魚に齧り付いてしまう。
「美味しい!!」
欲望のままに食べ進め、いつの間にか魚は頭と骨だけになっていた。
食べ物の好き嫌いが激しい威流は、普段知らない食材には手を付けない。
だが、異世界の見知らぬ魚を口にしてしまったのは、昨夜から何も食べておらず、
火球の大爆発で生存本能を刺激されたからかもしれない。
人間、一歩踏み出してしまえば、もう何も怖くは無い。
威流は今後の主食は焼き魚にしようと心に決めるのであった。
そしてもう一つ、恐怖について考えなければいけなかった。
黄色の魔石は火力が高すぎ問題。
「あれ、もうダメ。人に向けて使っちゃダメ。花火と一緒」
強敵が出てきた時の必殺技にして、普段は使わない事にしよう。
そんで暫くは、魚を焼く時専用とする。
フラフラと威流は、目印まで戻る。
手に持っていた魚の残骸を、積んであった石の前に穴を掘り埋める。
そのまま魚の墓標として再利用し、その場で手を合わせた。
次に威流が手に取ったのは、茶色の魔石だった。
「残る属性は、風と氷か」
魔石を握り、魔法をイメージするが、どちらの属性も反応は無い。
「属性が違うのか?紫の魔石も確かめてみるか」
だが、紫の魔石も同様になんの反応も示さなかった。
「紫と茶色の属性は、俺の知らない属性だったりするのか?」
紫の魔石を握ったまま、過去にゲームで見た魔法を色々と思い出してみるが反応が無い。
「もしかしたらあると思ったが、そういうことか?」
何かに気付いた威流は、青い魔石を拾って、発射場所へ向かう。




