2話 正気と狂気の境界線はどこですか・・・
少しうちの会社の話をしよう。
会社名は電参、大手広告代理店だ。
会社名に”電”が入っているので、会社のロゴに電気をイメージした
黄色のマークが入っている。
もう、それがとてつもなくダサい、たまに電力会社に間違えられる。
社員数は数千人にも及び、毎年の売上高は数兆円規模だ。
割と儲かっていると社長はいつも言っており、
社員にもちゃんと還元してくれるホワイトちっくな企業。
自社ビル内には、雰囲気の良いカフェスペースがあり、
社員食堂のメニューはうどんからフレンチフルコースまで予算次第。
ジムやダンス教室、24時まで使える託児所、マッサージルーム、仮眠室、
アパレルショップや診療所まで完備して、その他もろもろ、至れり尽くせり。
給与も同業種内で圧倒的に高い。
基本給はもちろんのこと、業績に応じたインセンティブも加算され、
残業代も全額支給で見込み残業などは無し。
役職手当や住宅手当、皆勤手当、休日出勤手当、徹夜手当、社内恋愛手当など
各種手当が充実している。
一見すると「めっちゃ、いいじゃーん」となりそうなものだが、
問題はここからだ。
そもそも社長が”金で全てが解決できる”と本気で思っている・・・様な気がする。
入社式で社長は「金は人生よりも重い」とどっかで聞いたことのある様な話をして、新入社員をザワつかせているのも、春の風物詩みたいなものだ。
他にも”稼げぬ者に価値は無し、働かぬ者に居場所無し”と社長の狂気が匂い立つ社訓が、新入社員を恐怖のどん底に突き落とす。
この社訓はHPなどに公開はされておらず、入社したら知ることになる。
また、入社後、何年か勤めていれば社長に
”金に乾いた獣”
とあだ名がつけられている事を知ることになるだろう。
社長が嫌いとのたまう同僚が「あいつは金という毒を撒き散らす獣だ」と言っていたが、目を血走らせ、やつれ切った身体、碌に食事も取らず働き続ける。
自分でも気が付かぬ内にあいつも”金に乾いた獣”に成り果てていた。
この毒は甘い甘い蜜となり、人々を魅了していくのだ。
ただ、金に乾いた獣は言うだけあって本当によく働く。
そして、社員をアホみたいに・・・
いや、アホになるまで働かせる。
更に、寝てる暇あったら稼ぎたいと全社員が思っていると錯覚しており、
早出や残業は当たり前だと思っているし、休みも月1日で十分という認識。
”沢山稼ぎたい社員の希望を叶えている素敵な社長”であると自負している。
この社長に反抗する役員や管理職はおらず、
むしろ憧れている者だけで構成されていると言っても過言ではない。
白長部長もその一派であるのは言うまでもないだろう。
まあ、あまり認めたくはないが、
俺も社長のそこに痺れる憧れる時期があったのも、また事実ではある。
充実した社内施設を作った目的も、ワークライフバランス”の
”ライフ”部分まで会社が干渉していこうという前衛的な姿勢であり、
ワークライフバランスを自社一貫型にしようと考えた結果、
”ワークライクバイアス”と高度成長期を彷彿とさせる洗脳体制が確立された。
”待遇良いからいっぱい働いて稼げよ”という考えの全てを否定は出来ないが、
休みもほとんど無く、人生の大半を会社で過ごすというは、流石にいかがなものかと思ってしまう。
やはり、人間をやめるしかないのであろうか・・・




