19話 分かったフリをする奴は、分かってないのがバレてるのを分かってない・・・
さあ、どうする?
魔石で攻撃をしてみるか?
でも、あの鎧の魔法防御力は、どう見ても高い様に思えてならない。
もし、失敗でもしようものなら、背中の大剣で胴が真っ二つにされてしまう。
RPGでも、たまに ”現時点では手をだしてはいけない敵” が居たりするが、
あいつがそうなんじゃないかと思う。
したがって、ここでヘビーアーマーエルフと戦おうなんて、
「ピヨってる奴いる?いねえよなぁ!!?」
そうだー、その通りだぁー俺ぇー。
決めた!!ここは漢らしく、不戦敗を認め、徹底”降参”の構えでいく。
これは、慎重さと安全性を重視した結果だ。
心を決めた威流は背筋を伸ばし、両手は太腿の上、
そして胸を張り、エルフを見据える。
美しいほどの”降参”の正座。
言葉が通じていなくても分かる、”反省”の心意気。
その姿にエルフも一瞬たじろぐが、その真剣さに何かを感じ取ったのか、
深く頷いた。そして、池を指差し、威流に目で訴えかける。
威流は、その目に応える様に深く頷く。
だがこの時、エルフが一体何を言いたいのか、威流は全く理解していなかった。
すると、ここでエルフが初めて笑顔を見せる。
その笑顔をにつられて、威流もにっこり。
やったー、なんだか分からんが許してもらえたぞ。
この後は勿論、エルフの隠れ里とかに連れっててもらえるのかも。
食料問題も寝床の心配も解決出来る。バンザーイ!!バンザー・・いっ!!!
威流は見てしまった、笑顔のエルフの手にいつの間にか握られている物を。
金属製の持ち手の先に鎖が繋がり、鎖の先には棘のついた鉄球が付けられている、何かを殺傷する目的で作成されたアレ。
「それ知ってます、モーニングのスターのやつですよね」
にっこりエルフは、手首を回し始める。
「ちょちょちょ、ちょっと待って!!」
威流は、手を前に出したり、手を重ねてバツを作ったり、意思表示をしてみる。
にっこりエルフはお構いなしに、手首を回しながら近づいてくる。
鉄球はどんどん加速し、ヒュンヒュンと風を切る音が聞こえ始める。
「だめっ、それだめっ!!そんなんで殴ったら、天に召されて星になっちゃう」
再度、ダメダメサインを出してみるが、止まる気配は一向に無し。
この窮地の中、威流は襲ってきた理由を考える。
何故、やつはモーニングスターを持ち出してきた。
エルフの言いたい事を理解したフリをしたのがまずかったのか?
もしくは、人を殴ってうっぷんを晴らしたいだけなんじゃないか?
威流は、きっと後者であると偏見で判断。
また、どっちにせよ結果が変わらない事も、ちゃんと理解していた。
たけるは にげだした!
ドンっという音と共に威流の頭上を飛び越え、
逃げ出した威流の前に立ちはだかるエルフ。
しかし まわりこまれてしまった!
「ほわーー、ただのしかばねにされてしまう」
威流は踵を返し、再度逃走を図る。
まさか、あの重量であの跳躍力があるとは思わなかった。
だが、飛ぶという事は走れるわけではなさそうだ、走りながら撒いてやる。
また、ドンっという音と共にエルフは威流の横を通り過ぎていき、
威流の前に立ちはだかる。
まさか”縮地”まで使うのか、あのエルフ。
だったら、あいつはなんでゆっくり歩いて近づいてくるんだ。
どうする?あいつの横をすり抜けるか?
前傾姿勢になりつつ、前に立つエルフの左右のスペースを確認する。
右手側には池があって、動ける範囲が確保出来ない。
モーニングスターの攻撃範囲はそこまでに広くはないと考え、
左手側から距離を取って、大回りに抜けていけると考えた威流。
すぐさま走りだそうとしたところで気付く。
エルフの左手には、何も握られてはいない。
まさかっ!?
振り返ろうとした瞬間に威流の後頭部に強い衝撃が伝わる。
そうか、”縮地”の前に投げておいてから、俺を止めたのか・・・
その場に倒れ、威流は意識を失った。




