18話 達人は力量差が分かると言うが、素人でも分かる時がある・・・
威流がエルフの様子を伺っていると、その場で立ち止まり、
両腕を組み仁王立ち、怪訝そうな顔をで睨みを利かせている。
うわぁ、ご機嫌斜め。俺、なんかやっちゃいました?
「ちっ!!」
あっ、舌打ちした。
だがここで、エルフはゆっくりと右足を一歩前に出す。
そして、組んでいた腕を外し、右腕もゆっくりと前に出す。
右手の人差し指を威流に向ける。
威流の額に脂汗が滲む。
もしかして、指からビーム出る?
突如エルフは、凄い剣幕で捲し立てる。
威流は目を丸くして呆然としているが、そんな事はお構いなしにエルフはどんどんヒートアップしていき、途中から身振り手振りも交えて怒りを表現し始める。怒りが収まる気配は微塵も無く、ずっとエルフのターンで時は過ぎていく。
正直、何を言っているか全く分からなかったが、凄く怒っている事を察した威流は、自然と正座になり、大人しく説教を聞く体勢を整える。
怒りで頬が桃色になったエルフを、ちょっと可愛いと微かに思っていた。
たまにエルフが地団駄を踏む度に、正座中の威流が数ミリ浮かび上がる。
段々とエルフの足元へ近づいていく様は、さながらとんとん相撲の力士であった。
エルフの足元はどんどん踏み固められ、地面がかっちかちのコンクリートもどきになっている。地団駄に巻き込まれた草や花がコンクリートもどきに押し込まれ、パワー系押し花の一丁上がり。
これ以上、ヘビーアーマーエルフの暴力アート展を開催されても困るので、
威流は、いつも以上に額を地面に擦り付け、ヘビー土下座で応戦する。
その様子を見たエルフが一旦動きを止める。
「ちっ!!」
あっ、また舌打ちした。
怒っている理由が分からんが、そろそろ許してくれないかな?
頭を上げて愛想笑いする威流を見て、何かを察した様に溜息をつくエルフ。
すると、何故かおもむろに右手の籠手を外し、その場に落とす。
ズシンという鈍い音と共に飛んでくる衝撃波が威流の前髪を揺らした。
漫画でしか見た事がなかった、落とした籠手で地面を割る奇跡。
”男の子はこういうの好きなんでしょ”part2に威流は恐れおののいた。
籠手を外した手は想像とは違い、あまりにも細くか弱い、想像通りのエルフの手だった。エルフはそのまま池の中を進み、その細い右手を池の中に入れる。
池のほとりに戻り、手の平を広げ、威流に青い水晶を見せた。
見たという意思表示をするため、威流は何度も頷く。
すると、エルフは青い水晶を握り、その手を額の前に持ってくる。
目を閉じ、祈っている様にも思える仕草だった。
パキッと水晶が割れる音が聞こえた瞬間、光の線が手に纏わりつく。
傍目で見たからこそ分かる。それがゲームの雷系魔法でよく使われるエフェクトと酷似しているということ。密かに威流の期待が高まっていく。
エルフは右手を少し引いた後、手を開き前へ突き出す。
手から放たれた光の線は、前方に進みながら、不規則に飛散する。
その中の一部が水面に到達した時、水面を伝わり拡散していく。
水面を伝い拡散していった事で、威流の期待は確信へと変わった。
光の線は電気、きっと雷系の魔法なのだと。
そして、ここでやっと真実に辿り着く。
あの全身に走った痛みは、自分で放った電撃が水面を伝って、自分に戻ってきただけという事。敵などはおらず、オウンゴールを決めて、一人で気絶してただけなのだと。俯いた威流の顔は、耳まで真っ赤になっていた。
だけど、知る事が出来た。
あの、青い水晶・・・
いや、あの ”青い魔石” は魔法を使うことが出来る消費アイテムなんだ。
たったの、たったの一つだけど、戦う術を手に入れた。
喜びも束の間、エルフが威流へ向き直す。
池へ飛び込み魔石を持って戦うのか、このまま反省スタイルを貫き通すのか。
ここでの判断は、威流の生死に直結している。




