13話 何故”憂い”は備えてない所ばかり狙い撃ちしてくるのか・・・
しらがみ様の力により、異世界へGO。
想定外の願いの叶え方に狼狽えるも、一旦、落ち着いて体育座り中。
異世界に来てしまった現実を受け止め、放心中の威流。
「なにかしらの理由」が何度となく頭の中を過る。
暫くの間、静寂の時が流れ、水面の輝きを呆然と見つめる。
だが、ここで”威流に電流走る”。
「そうか。あるじゃないか、解決の一手が」
これぞ妙案という面持ちで、池のほとりに正座し、白い魚に向かって話し掛ける。
「しらがみ様、しらがみ様、何かしらの理由で休みが欲しいとお願いしましたが、
異世界に来る以外の方法にならないでしょうか?」
威流は額を地面に擦り付け懇願する。
「どうにか、どうにか、元の世界に戻してもらえませんでしょうか?」
土下座状態から、チラっとしらがみ様の様子を確認する。
だが、無情にも白い魚はプイっと反対側を向いて泳いでいってしまう。
「しらがみ様~、聞いてます?聞いてますか~?」
威流が、追いすがる様に手を伸ばす。
ガックリと肩を落としながら恨みごとを漏らす。
「はあ、もう。恨むぜ~蕎麦屋の大将」
だが、次の瞬間。目を見開き、震える両手を見る威流。
「俺は大変な事を見落としていた・・・」
威流は気付いてしまった、とんでもない事実を。
蘇る蕎麦屋での記憶。
「実は、この話は私の父から教えてもらった話でして、
お供え物は白いものでなくてはいけないそうです」
穏やかな声で語る大将の残酷な真実。
「お供え物は白いものでなくてはいけないそうです」
「白いお供え物がねぇーーーーーーー!!!」
両膝をつき、両手で地面を叩く。
数分間、体育座りのまま夜空を見上げて、現実逃避に耽る。
妙案と思っていたさっきまでの自分を誰か殴って正気に戻してくれないか?
と思うには充分過ぎる程の愚策っぷりだった。
いじけていても何も解決しないので、一旦、常識人モードで正気を取り戻す。
仕事終わりにこの仕打ち、流石の威流も疲労困憊。
座るのに適した大きさの切り株を見つけ、腰を掛けながら考える。
「よし、しらがみ様は諦めて、別の方法を探すしかない」
そもそも、あの白い魚がしらがみ様である確証も無い。
もちろん、なにかしらの白い物があったらワンチャン狙うつもりでいこう。
しかし、何かしらの理由でとは言ったけど、異世界に連れてくるってのはねぇ。
まあ、ゲームが好きだった俺にとってはうってつけの場所と言えなくもないが。
明るくなったら、周辺を探検しながら帰る方法をゆっくり探せばいいか。
もう朝早く起きなくてもいいしな、ゆっくり寝坊してやろう。
寝坊出来るって思うだけで、なぜこんなにも清々しい気分になれるのか。
人間は余裕が無いと、IQが下がるって聞いたことがあるけど、
今の俺はIQが2000くらいに上がっていそうだ。
それはそうと、異世界を楽しむ前にやる事をやっておかないとな。
まずは、メールで休みの連絡はしておかないと・・・
すぐに気が付きそうな事に、威流はやっと気が付いた。
PCとスマホが入った鞄が・・・・無い。
確か、家に帰ってきてからダイニングテーブルに置いて・・・
「鞄置いてきやがった。服着たまま転送するなら、鞄も装備品の判定だろうよー」
「おーいおぃ、どうやって仕事休みますって伝えるんだよ」
仮に電話があっても「異世界に来ちゃって、てへ」って誰が信じるんだよ。
冷静になって考えろ、”異世界 = お休み”では無い、”異世界 = 無断欠勤”で、
”無断欠勤 = 懲戒解雇”になるじゃねーか。
悠長ぶっこいてる場合じゃねえ、急いで帰る方法探さないと。
最悪、行方不明で捜索願いが出されてしまう。
IQ2000とか頭の悪いことを言い出す時点で、SAN値がお察しの威流。
知性と状況が色々終わっている中、起死回生の策は見つかるのであろうか・・・




