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異世界ナポレオン  作者: ブルーバッテン
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第3話“ナポレオンの力”

ナポレオン・ボナパルトが軍事的才能をはじめて発揮したのは、1799年ごろ、彼がまだ10代の頃であった。


 ペルゴーナに案内され、ナポレオンは馬で王都へ向かっている。どうやら、ペルゴーナがナポレオンを召喚した場所は、王都から遠く離れた田舎の町の近くのようだ。


 道中は、田園風景が続く。

「懐かしさを感じる風景だ」

 ナポレオンは、ふと呟く。そこの田園風景は、ナポレオンが過ごしたヨーロッパのどこにでもある田園風景と似ている。コルシカ、マレンゴ、イエナ、ワルシャワ、ボルジノ、スペイン、そしてワーテルロー、どこの風景にも似ていて、みているだけで、今までの人生を思いだし、懐かしさがあふれでてくる。

「………?」

 ペルゴーナは、ナポレオンの発言に意味深さを感じた。だが、この二人は道中、互いに警戒しあい、一言も交わしておらず、ペルゴーナはナポレオンの言動に違和感や疑問を抱こうが、会話をするような雰囲気でもなく、無言のまま互いに警戒し続けていた。


 やがて、小高い丘が見えてきた。

「この小さい丘が見えるでしょう。ここを超えれば王都はすぐです」

 ペルゴーナは、そのように言う。

「そうか……」

 ナポレオンはそのように呟くと、持っていた望遠鏡を覗き込む。

(一体何を見ているのだろうか……。)

 ペルゴーナが、不思議そうに見ていると、ナポレオンが、望遠鏡にペルゴーナに渡してきた。

「あれを見てみろ」

 そう言い、ペルゴーナ自身で見るように、促していた。ペルゴーナはナポレオンから受け取り、双眼鏡でナポレオンの指を指している方向を見た。

「あっあれは……」

 ペルゴーナは絶句した。双眼鏡からは、小高い丘の山陰に、魔物が存在していることがわかる。

「あれが君等の敵である魔王軍なのだな……」

「はい、あれが魔王軍です」

「ほう……あれがか…」

 父の仇であり、長年の宿敵である魔物軍。それに杖を身構えて、緊張感に包まれているペルゴーナに対して、ナポレオンは、魔物軍に怖気づくことなく、興味深そうでなおかつ、敵の存在に意気揚々としている。

「くっ、こうなるのであれば、兵士を少しでも連れていけば………」

 ペルゴーナは、丘の山陰に向けて遠距離を攻撃を試みようとすると、ナポレオンはペルゴーナの前に、遮り、制した。

「闇雲な攻撃では意味もない。私に従え」

 ナポレオンは、そう言うと、再び双眼鏡を覗き込み、敵の動きを探りつつ、周辺の地形を見て対策を考えていた。

「敵は、2,30か……。敵側の方に地形の起伏が激しく、こちらの地形の起伏は平坦。なるほど………」

 ナポレオンは双眼鏡を片付けると、

「あの魔物は、どんなものだ」

 とペルゴーナに質問をする。

「あれは腕力攻撃のものです。魔術を使った攻撃こそないものの、腕力攻撃の威力を魔力で増幅させて、丸腰の人間なら一撃でお陀仏様でしょう」

「移動方法と速度は?」

「あれは歩行型で、スピードは対して遅くありません」

「そうか、分かった。お前は、ここで穴をほって、隠れておれ」

「はい!?」

 ペルゴーナは、突然のナポレオンの言動にびっくりした。

「我輩は、あれを見てくる」

 そう言うと、ぷらりとナポレオンは馬で走り去ろうとする。

「待て、勝手な行動をするな」

「非常時だろ、我の指示に従え!」

 制止させようとしたペルゴーナは、逆にナポレオンからの怒号にあった。

 驚きの連続で、目が丸くなっているペルゴーナを頬っておいて、ナポレオンはひとり敵の方へ向かう。


「いったい、あいつは何を考えているのか………」

 ペルゴーナは愚痴りながらも、ひとまずは洞穴を堀続けていた。

 

 ナポレオンは、急ぐ様子もなく、ゆったりとゆったりと、皇帝らしく、威風堂々と歩く。そのゆったりとした歩きのなかで、ナポレオンはいつも軍事的思考を巡らせていた。

 あまりにも少なすぎる、戦力。相手も我々も少ない。まるで子供の戦いだ。ナポレオンはふと昔を思い出す。


 ナポレオンの父・シャルルは、コルシカの独立を夢見る戦士だった。しかし、フランス王国軍の大軍に占領されると、同志を裏切り、貴族としてフランス王国に取り入った。そんな中、ナポレオンは貴族の息子として、陸軍の士官学校に通わせられた。

 コルシカの田舎者。そんな評価を受けていた彼が、見直され始めたのが、ある雪の日のことだった。その日、皆で雪合戦をすることになる。そこで、指揮官となったナポレオンは、部隊を二つに分けて、ひとつを敵に過剰に接近、敵が反撃を始めたところで、後退し、追撃を行ってきた敵部隊を片方の部隊が待機するポイントにまで引き付けるように後退し、誘い出した敵を徹底的に袋叩きにした。この出来事以降、ナポレオンが“コルシカの田舎者”という扱いこそは変わらなかったが、天才的軍人の卵としての可能性を見いだされ、頭角を現す第一歩となった。


 小高い丘の上に登ったナポレオンの目には、敵の様子が一望できた。そして、同時に数匹の敵からも見える位置にある。敵が束になってナポレオンに接近・襲撃してくる。

 敵を前に立ちはだかるナポレオンは、武者震いしていた。

 

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