放課後のスイートマジック
「つばさー!早く帰ろ!」
授業終了の鐘が鳴り、帰ろうとする者が多い教室に透き通った声が響き渡った。
「おう、いま行く」
そう言って机の横にかけてあったカバンを持ち透き通った声の持ち主、松原 菜乃香の元へ向かった。
「今日はね、駅前のところに新しくできたパンケーキ屋さんのクーポンが手に入ったの。そこに行こ!」
「お前、一昨日もパンケーキ食ってたのにまた今日も食べるのかよ」
呆れた口調で言うと菜乃香は口を尖らせ
「だってパンケーキ食べたいもん!私が甘いものに目がないことはつばさが一番よく知ってるでしょー」
そう。こいつは大の甘いもの好きだ。 俺、関 つばさの放課後は幼馴染の菜乃香に引っ張られて甘い物を食べに行くことだ。ちなみに俺はそんなに甘いものは好きじゃない。
「よくそんな毎日のように甘いもん食べれるよな。俺はお前が食べてるところを見るだけで腹いっぱいだよ」
「甘いものは別腹って言うでしょ!」
そんないつも通りたわいもない会話をしながら学校の門を出て駅前のパンケーキ屋へと歩き出した。
「でもつばさって何だかんだ言いつついつも付き合ってくれるよね。もしかしてほんとーは甘いもの好きなんでしょ!」
「いや、別に」
「じゃあなんで?」
俺が甘いもの好きじゃないのにいつも菜乃香に付き合う理由なんて一つしかない。
「好きだからに決まってんだろ」
菜乃香に聞こえないくらいの声量で俺はそう言った。
「え?なんて言った?」
思った通り菜乃香の耳には届いてなかったらしい。
「さぁー?あ、パンケーキ屋ここじゃね。」
そう言って店の前で立ち止まり話を逸らした俺にむすっとしながら菜乃香は俺の手を引いて店に入った。
俺が菜乃香に告白をするのはもう少し先の話。
いまはこうやって放課後一緒に甘いものを食べに行き美味しそうに食べる菜乃香の顔を見る時間が一番幸せだ。