第9話 仙草を探して〜前半〜
エラファー族がまとめている軍事国家ファブリアフォールから、北西へと約2週間ほど徒歩でかかる場所にパラディーナ山があると言われている。
その途中にファラーニと言われている村がある。エラファー族が主に住んでいるものの、他族も住んでいるが、そこまで大きな村ではなく、何も変哲もない村。
山へ続く村でもあり、旅人の宿場としてや牛や馬の放牧、畑などで村のやりくりをしていると言われている。また、薬草の種類も多く、薬師も出入りが多いようだ。
ティアはゼフィドからそういう村であると聞かされる。
「聞いている限り普通の村っぽい感じ」
「だいぶ昔は聖騎士が試練の山に向かう途中の宿場であったし、薬草とか手に入っていたみたいだから傷の手当て用に立ち寄っていたみたいだけど」
マシュリが補足説明をするかのようにつけ加えた。
「今はもう聖騎士がいなくなったから、何処にもありそうな村になっているとは聞く」
3人の旅は順調であった。
途中で魔物が現れたりもあったが、難なくとこなしていた。
ハルディアと一時的に共にしていたのもあり、ティアの戦い方にぎこちなさがなくなり始めている事にゼフィドは感じ取っていた。
マシュリの攻撃魔法も使う事もなく、ティアとゼフィドへの身体強化魔法だけで済ませているのもあり、魔力の温存があったおかげも思ったより時間を短縮しているように感じ取れた。
「ファラーニで待ってる案内人って誰だろう」
ティアがそう呟くと、
「誰か倒れているぞ」
ゼフィドが20m先程の遠くを見て、道端で倒れている人を見つける。
3人共に駆け足で行くと、中年の男性が胸を押さながらもがいていた。
マシュリが中年の男性に近寄り、険しい顔をしている男性を見ると顔色が悪いように見受けられた。
「これは、、、毒?」
「ねぇ!おじぃさん!大丈夫!?」
ティアは声をかける。
「はぁはぁ、、、ファラーニに近づくな、、、ゲホッ!ゲホッ!、、、あそこはやばい、、、」
中年の男性の顔色が一層悪くなる。
「マシュリ、毒消草を凝縮して作ったボトルあったよな?」
ゼフィドが言うと、マシュリはこくりと頷き布袋から取り出す。
ゼフィドはボトルのキャップを開けると、中年の男性に飲ませる。
しかし、中年の男性の様子は変わらずずっと息苦しそうにしていた。
「毒消草を煎じた薬でも効かないのか、、、」
「ファラーニで何が起こっているんだろう」
ゼフィドは立ち上がると
「近くに宿場もないから、このまま一度ファラーニへ向かおう。何が起きているのか確認しないと。危険な状態ならテルミールがあるはずだから、ファブリアフォールの軍部に報告せねば」
そういうと、ゼフィドは中年の男性を背中に乗せ、ティアとマシュリと共にファラーニへと向かった。
「これは、、、」
ゼフィドが村に近く度に薄い紫色の霧が空中を舞っているのも目視した。
するとティアのラヴィスカリバーが薄く光だす。
「あれ?なんかラヴィスが光ってる」
そのラヴィスの光は、ティア、マシュリ、ゼフィドの3人に薄い光をもたらした。
「まさか、ラヴィスがこの霧から守ってくれていると言うのか?」
ティアはラヴィスカリバーを手にしながら、
「こんな便利な機能あったっけ、、、」
と首を傾げた。
「とりあえずこの人を宿場か病院か教会のベッドに寝かせないと」
村の中に入って宿場を見つけるが、ドアが閉まったままになっていた為、村の奥にあった教会へと向かった。教会の扉は開いていて、ゆっくりと中に入ると、
「どなたかいらっしゃいませんか!」と、ティアは控えめな声で言う。
奥から20代前半あたりのシスターが口に布を巻きながら出てくる。
「すいません、、、旅人さんですか、、、」
シスター自体も顔色が悪いものの、まだ動いている様子を見ると、まだ軽い症状の人もいるような様子だった。
「すまないが、道中で倒れていた男性がいたのでこちらを訪ねてきたのですが、、、村で何があったんでしょうか。失礼、僕はファブリアフォールの独立遊撃隊の赤翼のゼフィドと申します。聖騎士ティアをバラディーノ山に連れていく任務に就いておりますが、こちらの村の現状を教えて頂けないでしょうか」
シスターはこくりとうなずくと
「国の者なのですね、こちらの件をどう申し上げるべきか、、、教会の中にマザーが毒霧の被害者の看病をしておりますので、お話を聞いて頂けないでしょうか。そちらの男性もこちらで診ますので」
教会の中には既に40名近くの毒霧でやられた人々が横たわっていた。ベッドがないものは、地面に布一枚が敷かれた簡易的なもので休ませているように見える。
数人のシスターや、50代の女性の方々が各被害者の看病をしているようだ。
教会の奥の個室でこちらの教会の責任者と言われている60代の女性のシスターが椅子が座っており、ティア、ゼフィド、マシュリにゆっくりと話し出す。
「私達シスターは女神の御加護がある為、毒に対しての耐性はややありますが、完全に防ぎきれません。そして、この村の村長、パラディーノ山の案内役を昔から任せられているラディッシュが今、この毒霧の原因となっている仙草アルニムが探りに行ってます。恐らく仙草は違う意味では劇薬の毒にもなりますのでそれが何か原因なのではとファラーニの東側にある花畑へ行ってしまいました」
ファラーニの東側にある花畑は教会で管轄し、薬の知識を持った方々で育てているようだ。そこにある特に身体の慈養に効くと言われている仙草アルニム。それが原因ではないのかとラディッシュは思ったらしい。
ゼフィドがティアとマシュリを見ながら、
「僕達も現地を確認しに行くべきかと」
「ラディッシュさんが無事じゃないとパラディーノ山に行けないんだよね、、、」
マシュリは首を傾げながら
「ファブリアフォールにはこちらの村の状況が報告がないというのはここ最近で起きた事かしら、、、」
シスターはこくりと頷くと
「はい、この一週間ぐらいでしょうか。確か、、、一週間前に見慣れない旅人が来たのもあったかと思われますが、本当に普通の旅人だったので、その人がという確証もありませんし」
ゼフィドが立ち上がると
「とりあえず現地まで行ってラディッシュさんと合流しないと」
ファラーニの東側にあたる花畑、、、
ティア一行は、約半日をかけて歩くと、広範囲で覆われている花が様々色合いを引き詰めてられている光景が目の前に拡がる。
「めちゃくちゃ綺麗」
ティアは感動のあまり、一時の現実を忘れかけようとしたが
「ラディッシュさん、探さないと」
空は晴天であり、花畑をとても綺麗な風景である中で一体何故ファラーニに毒霧が来ているのかとティアの頭をよぎる。
「旅人の方!その花畑には近づいてはならん!アルニムが暴れ出すぞ!」
60代後半の低くてやや枯れた大声がティア達に向かって放たれてる。
その声を聞いて、3人とも警戒体制に入る。
マシュリが身体強化魔法をかけると共にティアはラビィスカリバーを既に盾の形にしていた。
すると、花畑の地面から大きな蔓がティアに対して大きく振りかぶって襲いかかる。ティアは盾で防ぎきるものの、蔓は反動と共にマシュリへと追撃する。
ティアは盾をマシュリに向かって投げつけると
「お姉ちゃんに手を出すな!!」
ラビィスの盾はマシュリへの攻撃に対して、ブーメランかのように跳ね返す。
マシュリは反撃かのように蔓に向かって
「ファイアトーネード!!」
詠唱を終えると、火炎の渦が蔦を燃やしつくし、絶命した。
「やったのか?!」
ゼフィドが振り返ると、地面から大きな蔓が再び現れて襲いかかってくる。
ゼフィドは素早い剣技で切り落としていくが、また別方向から別の蔦が襲いかかってくる。
「なんだ、これは!キリがない!」
60代の男性が大声で再度放つ。
「駄目じゃ!アルニムの根源たる根を倒さない限り無理じゃ!仙草アルニムが魔物化しておる!!一旦退却せい!!」
「ティア!マシュリ!一旦引くぞ!ラディッシュさんと合流するぞ!」
「やばばばばやん、これ!」
ラヴィスカリバーの盾はティアとマシュリを守りながら、花畑から離れていく。
「どっせい!」
と言いながら、ティアは倒れ込む。
「ごめんね、ティア。お姉ちゃん、迷惑かけた」
「いやいや、やめて!マシュ姉、傷つける奴は全員しばくから!てか、お腹空いた!魔力使いすぎじゃい!」
と、汗まみれのティアは吐き捨てるように言う。
ゼフィドは、老人に深くに礼をする。
「ラディッシュ殿ですね」
「マザーから聞いたのか、旅人よ。手助け感謝する」
「はっ!ファブリアフォールからジータ王の命で、パラディーノ山への聖騎士の試練の案内役としてラディッシュ殿を探しておりました」
「しかと、聖騎士殿は、、、」
ティアは起き上がると
「私が聖騎士です、どうやら最後の1人みたいですけど、、、」
ラディッシュは少女を見ながら
「まさか、ティオ殿の、、、娘か」
「、、、お父さんを知ってるの?」
ラディッシュという老人は、涙を流しながら
「無論じゃ、聖騎士と邪騎士と手を組み魔王を倒した勇者ティオを誰が知らんというか。ジータ王から手紙を頂いていておるからね。それよりかは、、、アルニムの魔物化をおさめないといかん、村が絶滅する、、、」
ティアはVサインをしながら
「私に任せなさい!!どうにかなるっしょ!!なんかどうにかなるんかな!へいき、へっちゃら!!!、、、てかどうしたらいいんだろう、ゼフィ!?」
ティアの満面の笑みをみながら、ゼフィドは深くため息をした。
「仙草アルニムの根源たる生息地はここよりもう少し北側にあるのだが、近づくにつれ蔦が増えて近づけなくなるんじゃ、、、1人ではどうにもならなくて困っておったんじゃ」
花畑の近くの森の中で野営地を作っていたラディッシュは、この数日間は仙草アルニムについて調べていた様子だった。テントは3張程立っており、寝室用と調べ物をする為の資料が乱立していた。しかし、どうやって1人でこの物量を持ってきたかは不明である。
「ゼフィド、私の魔力だけでは最深部までは火炎魔法を使い続けてもどうしようもないわ、尽きてしまっておしまいよ」
マシュリが羊紙に羽ペンで黒墨汁を使いながら説明する。
「ならばどうすれば良いんだ、特攻しながらも魔力耐久が必要になるならば難しい」
ティアが立ち上がって
「なら、バーン!やって、ババーン!やって、ボーン!やって、ズドーン!!で!!」
と自信満々に言い出した。
ゼフィドとラディッシュは険しい顔をしながら
「いや、、、意味がわからない!!」と突っ込んだ。
ティアは逆に首を傾げながら
「だから、ババーン!だって!」
「いや!意味がわからーん!」
とゼフィドが言った後、マシュリを右手を挙げ
「ティア、空中戦からアルニムを狙うって事よね」
というと
「さすが!高い崖から狙う!」
とティアは言った。
ゼフィドはマシュリに尋ねると
「あれ?ティアの事、分かってないの?」
マシュリはゼフィドに微笑んで言った。
思った以上からの崖はなかったとしても、パラディーノ山側からすると崖はいくつもあった。
ティア、ゼフィド、マシュリ花畑から約50m程度ある崖から、花畑を見下ろす。
ラディッシュは花畑の更に奥側にある場所を指差し、
「あそこに仙草アルニムの魔物化した根がおる。一度、奥まで行ったが蔦が多すぎて今でもよく生きて帰ってこれたのが不思議くらいじゃ」
ティアはラヴィスカリバーを両手で掲げると、
「ラヴィス!翼になって!」
するとラヴィスカリバーはティアの両肩に翼のような形に変化する。
ゼフィドは目を丸くすると
「まさかこれで奥まで飛ぶ気か?!」
「へっへーん!ディーと旅してた時に何回か実験してたもんねぇ〜高い崖があれば飛べるんよ、案外。あとはマシュリ姉の身体強化魔法を私にかけて、確か体を若干軽くする魔法あったよね、マシュ姉?なら二人とも一緒に飛べるかもと思って。いきなり奥まで行って根っこごとやっちまいましょう!」
第9話終わり
第10話続く




