第6話 友達
恐怖と寒さのあまり震えが止まらない・・・
冬の寒さもあるだろうか、歯をガチガチさせ、これから先なにが起こるかわかりさえもしない。
いや、わかっている。
しかしこの先のことを考えたくない。
馬車は中から格子があって厳重に閉じられている。
毛布をかぶっている自分と同じ種族と、一人二人他種族もいる。
エラファー族やコーラル族、ヒィーマー族(普通の人間タイプ)とは違いジョカ族の扱いは世界で一番ひどいのだ。
普通の人間の扱いをしてもらえず、奴隷やおもちゃなどに使われ捨てられてたりする。
自分はジョカ族だからきっとひどい扱いをされるだろう。
猫のような耳をして、猫のような尻尾をもっていて全体の肌はうっすらと毛も生やしている。
なんでこんなジョカ族にうまれたんだろ・・・
憎みたい親の顔さえも15年ですっかり忘れてしまった。
馬車がいきなり止まった。
自分はおもわず光が差す格子のかかった窓を見た。
外でなにやら話をしてるように見えた。
馬車の後ろのドアが開き、二人のヒィーマー族の男が立っていた。
二人とも中年だったが一人は自分達を売ろうとしている人だろう。
もうひとりは気が弱そうで緑のニットキャップとマフラーをしていてベストを着ていた。
「すまんねぇ~団員が急に不足になって。相場より高めに買うさ」
ニットキャップの男が苦笑いをしながら札束をもひとりの男に手渡す。
「ほんとは競売で売るのが鉄則だが・・・一人ぐらいなら問題ない。選びな」
気の弱そうな男は一回り商品をみると、一人のジョカ族に目をとめた。
「あの子にするよ。こっちは顔も商売のうちなんでね」
「89番でいいんだな。来い子娘」
89番・・・そう首に番号をふっている札のことだろう。
そして89番は・・・自分のことだった。
冷たい馬車の格子からぬけると、なにか牢獄からぬけたかのような解放感を感じた。
外は雪が降っていた。
私を買った中年の男が問う。
「お前の名前は何だ?」
買われたからには雇い主に絶対服従せねばならない。
そうしなければまた捨てられ、空腹の日々を過ごせねばならない。
そう、幼い時から学んできたのだ。
それと・・・
「私はメグミルトと言います。ご主人様のご命令通りにこきつかってください・・・」
自分以外信じてはいけない・・・
エルファネット・・・
千年戦争で一度滅んだものの、数年の間に急激な発展といままでなかった蒸気機関車も現れ、人の集まり場として大いに活用されている街だ。
おかげで酒場や宿が非常におおく、遊技場も少しづつふえだしてもいる。
「皆さん今日は楽しんでいただけましたか!?」
ある夜の酒場は、一人の女の子の手によって盛り上がっていた。
そこは舞台があって来客するものを芸と酒で酔わす。
その女の子の美しい声と歌で最近人気が上昇し、来る客達が増えてきているという。
「めぐみるとちゃーーーん!!」
メグミルトは興奮する男共にウィンクすると、鼻血をださせながらノックダウンさせる。
歓声が一際大きくなった。
猫耳を可愛らしく動かし、尻尾の矢先を見てみると舞台際にたっている気の弱い団長がにこりとほほえんでいた。
おもわずメグミルトも微笑み返した。
アンコールが波のように舞台に襲ってくる。
その波に乗るかのようにメグミルトは
「じゃあもう一曲うたっちゃいましょうか!」
すると、いきなり舞台の真ん中からあがってくる見知らぬ男が2、3人現れメグミルトの腕を強引に掴んだのだ。
団長も舞台際でおもわぬアクシデントに焦りが走る。
盛り上がっていた舞台も一気にテンションが下がり、凍りきった空気がその場を凍結させる。
筋肉質で全長2mはあるかとおもわせる男達は腰から曲刀をだすと、メグミルトの首筋をなぞるかのようにつきつける。
他の客達は悲鳴の声でだれも助けようとはしない。
「ジョカ族のくせに舞台に立って調子にのるなよ・・・ジョカ族はジョカ族らしく奴隷になってりゃいいんだよ。それとも俺のおもちゃにしてやろうか?」
男達は大きく一笑いすると、メグミルトを強引に持ちながら舞台におりる。
お客もあまりの恐さに道を開けるように男達に道を譲った。
「うちの娘に手をだすな!」
舞台のほうをみると、団長が震えながら慣れないてつきでナイフをもってたっていた。
男は鼻で笑いながら、
「そんなに震えてちゃナイフをなげても客にあたっちまうぜ、ククク」
「ご主人様!!」
メグミルトは涙目になりながら、大声で叫ぶ。
(いやだ・・・やっと安全な暮らしができるとおもったのに・・・こんなのいやだ・・・!?)
するとどこからか、水の入ったコップとシルバートレイが勢いよくとんできて筋肉野郎の男の腕に命中する。
緩んだ手の間からメグミルトは器用に抜け出し、にげだした。
「こら!にげるな!」
続いて男の頭に空中飛び膝蹴りが見事に命中。
男は目を真っ白にしながら泡をふき、倒れこんだ。
男の上にのっかったウェイトレス姿の女の子がひとり・・・
金髪でポニーテール、青色の瞳は大きく人形さんみたいに可愛く身長はそんなに高くない。
あと二人の男は一歩さがると、焦りながら剣をかまえだした。
ウェイトレスの女の子は少しへこんだシルバートレイを右手に掲げながら、二人の男に脳殺ポーズ。
その付近にいた男達はいっせいに目を見開く。
「き、貴様一体何者だ!?」
女の子は堂々とこう一言。
「ここのバイトのウェイトレスじゃ!!」
(そのままやんけ!?)(客一同)
それがメグミルトとティアの初めての出会いだったのだ。
「お疲れ様でしたぁ~」
舞台は一時中断されたがある女の子の手によって事件は解決し、舞台は再開され無事終了した。
「大丈夫だったか?」
舞台裏で裏口を出ようとしたメグミルトを団長が声をかけた。
「はい、おかげさまで。ご迷惑おかけしました」
一息つくと、皺の寄った眉間を緩め首を振った。
「無事ならいいんだ。宿まで気をつけて帰るんだよ」
メグミルトは丁寧にお辞儀すると、裏口をゆっくりと出た。
裏路地をでると、また違う裏口から元気のいい声が聞こえてきた。
「おっつかれさまでしたぁ~~~~!」
筋肉野郎の男を3人素手で倒した少女だった。
そのポニーテールの女の子がふとメグミルトに目を合わした。
「あ、舞台で歌ってた子?怪我なかった?」
初対面というのに、堂々とタメで話してる女の子に動揺する。
メグミルトは猫耳をひっこめながら
「あ、はい。あの時はありがとうございます」
女の子はにっぱり笑うと
「いいのいいの、きにしないきにしない。あ、私ティアっていうの。あなたは?」
おいおい、いきなりきくかよ!?ってつっこみたいが
「えっと、私はメグミルトといいます。今から宿に帰る途中で」
「ん?どこの?ラ・リチェーネかな?」
「私と一緒です」
ティアはにっこり笑うと
「ねね、一緒に帰ろうよ。同じ年ぐらい女の子と会うのすんごい久しぶりだから嬉しいのよ、ね?いいでしょ?てか決定!」
質問しといて勝手に決めてる少女にとまどいながらも、何か少し嬉しい気もしたメグミルトは拒む事なくokをだした。
(でも、警戒しとかなきゃ・・・人なんて信じれない)
日がすでに落ちたエルファネットの商店街は人工の光と人の活気にあふれてた。
おいしそうな食べ物、みたことのない着物や意味不明な物などが限りなく露天で並んでいた。
「へぇ~メグって音楽団のひとなんだ。世界各地まわるの?」
衣装の入った袋を両手いっぱい持っているメグミルトはこくりとうなずいた。
「はい、まだ入ってそんなにはたっていないのでこれからって感じですけどね。ティアさんはここの住人ですか?」
少女は手を顔の前で横に振りながら
「ちがうよ。人を探してるというかおにぃちゃんとおねぇちゃんをさがしてるのかな。途中ではぐれちゃって。エルファネットに来たら合流できるとおもって」
「ここまで一人で?」
「ううん、もう一人いるけど・・・おじさんが一人。人待ちまで社会勉強しとけって言われてね。お互い仕事してるわけだよ」
「私と同じ旅のひとなんですね」
お互い顔を見合うとくすくすと笑い出した。
ティアはなにかを思い出したかのように手のひらを小さくたたく。
「ねぇねぇ、明日エルファネットの広場でバザーがあるんだけど、一緒にいかない?」
尻尾で円を描くように首をかしげる。
「バザーですか・・・?」
「うん、そそ。明日休みなんだ。もし暇あるならいこうよ。女同士でお買い物っておねぇちゃん以外したことないしね」
メグミルトは自分も今までひどい生活をしてきたことでまともに買い物なんてしたことなかったことに気づいた。
突然の誘いに少しとまどったが、ティアの顔をみたらどことなく不思議に首を縦にふってしまったのである。
少女は愛らしくほほえむと
「えへへ。ここに来てお友達ができるとは思わなかったよ。よろしくね」
メグミルトは苦笑いをすると少女のほほえみに応えた。
心の中でこうおもいながら・・・
(友達・・・?初めて聞いた・・・どういう意味なんだろう)
多分その言葉はきっと大いに使われていて、とても心地良い意味をもつのだろうけど・・・
世界で奴隷同然に扱われたジョカ族にとっては縁の無い言葉だっったのだろうか。
悲しいようで、うれしいような・・・人の信じれない自分の中で複雑な気持ちが回りはじめたのであった。
翌朝・・・
宿のバーカウンターで新聞をよみながら朝食のコーヒーを飲んでいた銀色の髪の毛をした中年が階段をかけおりてくる金髪の少女をみて声をかける。
「ん?どこにいくんだティア」
「お友達とお買い物~~~」
ティアは長い髪の毛を結びながらそういった。
「朝はちゃんと食べとかないと」
「おなかすいてないぃ~友達と御昼一緒にたべてくるからぁ」
少女は振り向きもせずに手をふっただけでそのまま宿をでてしまった。
銀髪の中年の男は、一息ためいきをつくとあきれるばかりだ。
カウンターの女将さんがくすくすと笑いながら
「御年頃の女の子だしねぇ、おとうさんも手をやくでしょうに」
「いや・・・まぁそうなんですかね・・・はは」
自分の実子じゃないと言いたかったけど、娘がいるっていうのもなんか悪くない気もした。
エルファネット広場で待ち合わせたティアとメグミルトは今日から催しされる大規模のバザーに顔を出すことになった。
すべてが初体験で、好奇心をくすぐるものばかり。バザーの時期になると、子供も大人も喜ばされるサーカス団の妙技を披露されたり、マジックショー、街一番の力自慢大会、街一周マラソン競技・・・などなど、数年前まで戦争があったことなんて忘れさすかのようなたのしいことばかりだった。
アイスクリームを数段重ねながら食べているティアをみながら、メグミルトは大笑いする。
噴水のベンチに二人は座ると今までどういう冒険をしてきたのかとか、女の子だけの話、たあいのない話で花を咲かせた。
アクセサリー屋に足を止めたメグミルトはあるものに目を止めた。
「おや、青水晶の耳飾りかぃ?やすくしとくよ」
笑顔の似合う店主のおばさんがにこやかに微笑んだ。
「これ、ひとついただけますか?」
両耳で1セットの耳飾りは透き通るような青色をしていた。
「ティア、これプレゼント」
横で見ていたティアは突然のことにはっと驚く。
「え?私?」
メグミルトは頬を赤くしながら手渡した。
「今日誘ってくれたお礼。私なんかと一緒にいてくれて、とても嬉しくて・・・友達って初めてだからどういうのかわからないけど・・・お礼したかったから」
ティアもまた頬を赤くすると、頭をかいた。
二人はお互いしばらく笑いあった。
すでに日は落ち、夜にさしかかった夜空に大きく花が咲いた。
「あ、花火!!あっちいって見ようよ!」
ティアはメグミルトを手をひっぱる。
「うん!」
心からこんなにたのしんだのは初めて・・・この子といるととても素直にいれる気がする・・・これが友達っていうのかな。
しかし、ジョカ族という因縁が突如悲劇を襲ってきたのであった。
舞台のお仕事は夜からだった。
宿で軽く化粧をすると、衣装を持ち出して舞台に向かう。
これが仕事前のメグミルトのすることであった。
バーカウンターの女将さんに軽く頭をさげた。
女将はにくりと微笑みかえす。
「今日の舞台楽しみにしてるよー」
おさけをのんでいる御客さん達から激励をもらう。
メグミルトはいまの仕事にとてもやりがいを感じていたのであった。
宿をでると、一目散に走り出す。
(今日も舞台でウェイトレスのお仕事してるのかな、ティア)
仕事場にいったら最初に声をかけるんだと心の中で思った。
すると、いきなり路地裏から大きな曲刀を持った大男があらわれ、メグミルトの前に阻んだのだった。
その後ろに数人の飢えた男達がぞろぞろと現れる。
武器をもった男どもに道中の人達も逃げ出したり、焦りだしたりする。
「この間はお世話になったな・・・だが、ここだったら誰も邪魔しないよな」
そう、この間の舞台で乱入してきた男だったのだ。
警戒心を一層高めるメグミルトは、尻尾をピンと延ばせる。
男の差し出してくる手が恐怖のあまり大きく見えた。
「きてもらうぜ・・・ククク・・・安心しろ、誰も助けてこないぜ。ジョカ族だからな!」
その襲いかかる手は昔の悲惨な過去を蘇らすかのように見えたのだった。
「え?まだメグが来てない?」
舞台では不穏な空気が漂っていた。
もうすでに、舞台の主役が現れる予定がまだ現れていないのだ。
ウェイトレス姿のティアはシルバートレイを片手に、気の弱そうな団長が話かけてきたのだ。
「メグと仲がいい君なら知っているとおもったんだが・・・」
宿に出る前に声をかけたのが最後、あとで落ち合うといったのだが・・・
ティアの額に冷や汗が流れ落ちる。
「もう30分もたってるんだ・・・宿からはそんなに遠くないはずなんだが・・・あまりにも遅い」
「宿にテルミールした?」
団長はこくりとうなずく。
「うむ・・・もうすでにでてるって・・・」
すると、酒場の入り口に息を荒くした男が現れて、団長の前に膝を屈指する。
半泣きそうな顔をしながらティアと団長の顔を見渡す。
「メグミルトちゃんが・・・連れ去られた・・!」
男は曲刀を持った大男達がメグミルトをさらっていく場所を目撃していたのであった。
団長もティアも目を丸くして驚く。
ティアは冷静に男に質問した。
「どこにいったかわかる?」
団長はティアの肩をたたくと、
「これは団の問題なんだ・・・君にいかせるわけにはいかないのだよ。ジョカ族だからやむえん・・・あきらめるしか」
「そんな・・・見捨てるつもりなの!?」
団長はそれ以上なにも言わなかった。
使われていない蒸気機関車の倉庫は・・・大男達の棲みかになっていた。
男達が吸うタバコが窓の空いていない機関車の中に充満し、捕まっているジョカ族達の鼻を刺激する。
「窓あけたらどうですか・・・?」
一人のジョカ族が口出しをする。
横で見てた同族の女達は「いっちゃだめ!」といわんばかりに首を横にふる。
大男は不機嫌そうに曲刀を一人のジョカ族につきつけると
「てめぇ・・・犯されてぇのか?なぁ、歌姫さんよ」
歌姫・・・そうメグミルトのことだった。
「てめぇらジョカ族がよ・・・人間様の世界でいい思いできるとおもってるのか?」
メグミルトは怒りをこめた顔で大男に反発する。
「私たちはあなたたちと変わりない人間なんですよ!」
大男は曲刀を地面に突き刺すと、その場のジョカ族の女達はびくついた。
「脳なしでくさい、おまけに耳と尻尾も生えてる・・・昔からのジョカ族はクズにすぎんのだよ。人間様から用なしだと言われるとすぐに捨てられ、裏切られる。ここでどうあがいても助けなどこない。観念することだな。心配するな。高く売り付けてやる」
女達は耳をひっこめる。
昔からそう扱われてきた自分達こそがその苦い思いを知っている。
どうあがいても、それが事実なのだから、現実から目を背くことができないのだ。
メグミルトは顔をうずくめながら泣きそうな顔になった。
(結局裏切られる・・・助けなんかこない・・・そういうのは何度もあった。友達ができたとしても結局裏切られるのかな・・・
なんで私ジョカ族なんかうまれたんだろう・・・)
神を恨むことしかできなかった。
なんでこういう不幸ばかりが自分におきるのだと。
前まであんなに楽しかったのに、結局神様は私を見捨ててしまったのだと・・・
泣くことしかできなかった・・・
こうやって泣いたのはもう何度めだろうか。
その時だった。
外がやけに騒がしく、一人の部下が大男のもとにやってきたのだ。
「どうした?」
男は焦りをみせながらこう報告する。
「ウェイトレスが一人のりこんできました!」
メグミルトは目をはっとさせる。
(ティア!!)
襲いかかってくる敵達をなんなくと斬り捨てていく。
その余りにも鮮やかすぎて、早すぎる剣撃は敵達を翻弄させる。
たった一人の少女が大きな剣を構え、立ち阻む障害をのりこえていく。
蒸気機関車の上から弓で攻撃してくる敵も、人並はずれた跳躍で背後をとり斬り倒す。
「メグーーー!!どこーーー!迎えにきたよ!!」
ティアは大声で叫ぶ。
いやらしい男達が次々と現れる。
ラヴィスカリバーをもちながら、半分キレぎみのティア。
「あなたたちのせいで、今日のバイト代パーなんだからね!」
そういう問題?っとつっこみたいところだが、おかまいなしティアの怒りが敵達にぶちあたる。
「ウェイトレスのじょうちゃん、こいつに用かな?」
となりの機関車の上に首に曲刀をつきつけられた状態のメグと大男がいた。
「てぃあー!」
メグミルトが大きく叫ぶ。
ティアはラヴィスを構えると
「待ってて!すぐにケリつけるから」
「なめられたもんだな・・・前回は不意うちでしくじったが今回はそういかないぜ!」
勝負は一瞬でついた。
ゼフィド仕込みの剣技もみせることなく一撃で大男は失神しながら倒れたのだ。
「弱い男は嫌いよ」
ティアはあきれながらため息をつく。
メグミルトの前にティアが手を差し伸べると
「助けにきたよ、メグ」
少女は愛らしく微笑んだ。
メグは泣きそうな顔をしながら、ティアに抱きついた。
「どうしたの?」
いきなり抱きつかれたのにティアは焦りを見せた。
助けられたこともあるけど、ジョカ族みたいなこんな私を助けにきたティアのことが嬉しかった。
ものすごくうれしかった・・・
「助けにこないと思った・・・」
「もうなにないてんのよ、助けにくるの当たり前でしょうが・・・友達なんだから」
ティアはメグミルトの頭をなでながらゆっくりと微笑んだ。
ただ泣くことしかできなかった・・・
今までなかった温かさに触れたことがこんなに嬉しいことだなんて・・・
過去の出来事をすべて洗い流すことはできないとしても、人を信じるということを・・・再び学んだ気がしたのであった。
ファブリアフォール行きの汽車の汽笛が鳴った。
その汽車に乗り遅れまいと客達が改札でキップをきり、急いでいる。
「そっか、いかなきゃいけないのね」
メグミルトは残念そうな顔をしながらティアを見る。
苦笑いをしながらティアも応える。
「一度、ファブリアフォールにいってみようとおもうの。先にいってるかもしれないしね」
ホームの時計をきにする銀髪の男がティアに声をかける。
「ほら、いそげティア」
「うん、もう少し」
メグミルトの横にいた団長が手をさっと出し、
「これから、わしがこの子を守れるようにがんばるよ・・・君にはほんとに感謝する」
ティアに握手をする。
「ご主人様・・・」
メグミルトは思わぬ発言に喜びを隠せない。
「ちゃんとメグまもってあげなきゃだめだぞ」
3人はお互いくすくすと笑い出す。
汽笛が再度鳴る。
「もういかなきゃ・・・」
汽車のドアに乗り出すと、後ろからメグミルトが大声でこう叫んだ。
「またあえるよね!」
ティアは大声でこう叫んだ。
「あったりまえでしょ!友達なんだから!」
第6話終わり
第7話に続く